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全天録  作者: AX-02
第一章 朝
43/261

終わらない耐久

眠いけど出さなきゃ忘れる。メモみたいなのもなるべく使わず。

「あなた、人間?」


 シュアに種族の質問をされる。体臭や外見からすれば人間だろうが、外套の操り方は人外のそれ。人間と直の関わりがなかった場合もある。


「いや〈粘人(ハーフウーズ)〉だ」


 進化前(?)の種族を伝える。進化派生が多すぎるし、魔物扱いされるのはあくまで、混ざってない人間達だけである。と思ったからだ。


「〈水粘体(スライム)〉と違うの、かな?」

「結構、差があるぞ」


 そう言って俺は左手を〈粘性体(ウーズ)〉形態へと変える。びちゃびちゃと音を立てて、腕が垂れる。

 引き気味になるかと思いきや、まじまじと見つめてくる。初めて見るのだろうか興味津々だ。尻尾の動きはそこそこ。頭の耳は止まっている。


 シュアは試しに指につけた。垂れ下がるのをじっと待って、落ちてから。


「〈水粘体〉より、ねばねばだ~」


 そこが一番分かりやすい差、餡とゼリーの違いのようなものだ。動きが速い〈水粘体〉。補食、粘着が強い〈粘性体〉という分け方が出来る。

 

 推測だが〈水粘体〉の後に〈粘性体〉だと俺は思っている。水分と核だけで生命として成り立つ〈水粘体〉がファンタジー世界の最初の生命だとも。


 何か消費する訳でもないみたいだが、回収し人形態に戻る。


「男の人?」


 何とも言えない質問だ。〈夢魔(サキュバス)〉に襲われるから男であり、また元の体にすればククラと言う女性であり、そして無性の〈粘性体〉でもある。とはいえ、格納しているものと見た目と精神から言えば。


「そうだよ」

[便乗]

「ん…? でも無かったしなぁ…変」


 格納に違和感を持ちつつ所謂、女の子座りから体を前に倒し背伸びをする。その姿勢も下半身中央に何かが流れ、無性に背後を取りたい。


[今は取らせないけど、撮ってるぞ]

(何時から!? どんな角度まで?!)

[来てから今まで、彼女のみを撮すようにして角度は3600×3600]


 ほぼ全角度からの撮影済みという………なんという理解者か。

 背伸びが終わったシュアは、部屋を歩き回る。〈夢魔〉時計のままかと思ったが、学校にあるような無機質なものに変わってて安心した。

 雰囲気の為に作った石棚の感触がくせになったようだ。 耳や尻尾を擦りつけている。寒冷地にノミダニがいたのかを思い出そうとするも、Gしか思い浮かばなかった。

 次にベッド。トランポリンのように跳ねるのが面白いのだろう。満面に笑みを浮かべている。


(前世界でもこれだったらなぁ)

[来させるように努力しなかったアホが何を]

(とことん要素が欲しくてね)

[諦めない心。括弧、一番の無駄]


 だからこそ現世界(こっち)なら全力だ。身一つでやれる事が多い。


「一緒に遊ぼ?」


 一緒に跳ねるために手首を掴まれ引かれるが、どこに誘ってるのか分かってないのだろう。箱入り娘の確率が高まるばかりである。

____________________________________________________


「至急、至急! 報告! 重大報告!!」


 ゼノムの部屋にシュアが入り込んだ頃。ゼノムが到着した港街に、急を告げる人間の騎兵が来た。

 かなりの距離を走ったのだろう、馬が倒れた。装備で地域を確信した見張り三人は駆け寄り。


「北東からか…どんな事だ。落ち着いて言ってくれ」


 馬から引き出しつつ、正確な報告を求める。馬から抜け出て、深呼吸をした男は。


「見回りが光るものを発見。物品の彫刻により〈フェリオス王家〉の首飾りと判明」


 そこまで言って過呼吸になり始めた。


「衛生を呼べ! 捜索隊用意も伝えておけ!!」

 

 一人を残して二人は詰所に走る。応急措置をしつつ。


「鉢合わせたら……あいつに……!」


 北へ向かったと思われる外から来た男は、獣人の情報を特に欲していたのだ。何をするのか……分かったものではない。

____________________________________________________


「しばらく〈天の眼〉と〈烈剣〉に戻す。協同も無し。いいな?!」

「………了解」

「仕方ないですね」

「被らないようにするための、連絡はいいからね」


 同じ相手への失敗が続き、他でも続きそうな気がした〈天烈〉はチームの一時解散を決めた。厳密に言えば先のは、別の相手だが。

 協同でクエストにあたる事が多かった為に、組んだので行き場がなくなる訳ではない。


 ギルド内に衝撃が走った。〈天烈〉が一時的とは言え解散すると、考えもしなかったからだ。そして原因は言わずともゼノム……知能を持った魔物の危険度は、測りしれなくなった。


「もう難度Sで良いか」


 少し大きな声がした。誰も声のした方を見ずに下を向く。難度S…Aチーム全てかBチームの大半の参戦で、やっと受注が可能になる難度だ。そしてAの一つは非協同宣言をしたばかり。

 何よりそんな化け物との対戦はお断りだ。冒険を続ける為には死なない様にするべきなのだから。

 それでも国が出せば行くだろう。騎士とは別の手段として。

____________________________________________________


「耳と接触したか……権限外だし討伐の流れが出来ればなぁ……」


 ヴェラドはまたも浮かぶ板を眺めながら、思いやられる先を見ていた。どう考えてもおかしい強さを保持している。

 言ってしまえば歴代の〈ゼノ〉の中で一位だ。素体が強すぎるこれに〈魔王化〉の強化が入る。

 人の誰が手をつけれようか。そして獣人でも総出以外はあり得ない。


 ヴェラドは頭を抱える。強化阻害、弱体化の案を……。


「……あれからの〈戦車団(あれ)〉でやってみるか」

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