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全天録  作者: AX-02
第一章 朝
41/261

到着

ファンタジーが動き出す。

「言い残すことありませんか?」

「……」

「言い残すことありませんか?!」

「…」

「言い! 残すこと! あぁりませんかぁぁ?!」

「」

「駄目だ反応がない……あなたは四部を。あなたは○.I.Sを!」


 調子に乗って水上(低空)を高速移動していたら、彼が白目で気絶していた。〈(エレク)(ギガ)〉を撃ち込み、辺りを静かにしてから停止。呼び掛けてみるも反応なし。


[キゼツシタ シロメノ シンダ ショウネン]

「脈も呼吸も体温もあるだろ」


 《内演算》の勝手な鑑定を封殺し体を見る。心臓がバクバクしている以外に、何もなさそうだ。

 なんて都合がいいのだろう。落ちないように固定すれば、更に速度を出せる。〈選風(エア トランス)〉の負担が減りいいことづくしだ。


 彼をガチガチに固めた後、世界が線になるくらいの速さで大陸を目指していると。


カァン


 とある角にスリングショットした時のような音がし、舟が停止した。

 海の流れにさえ逆らう現象……思い当たる節があり、舟の先端へと移動する。手を伸ばすと先ほどと同じ音がなり、今度は弾かれる。


[未登録生命拒絶結界。しかしこの規模は]


 なんと高度な文明なのだろう。ここまで魔法に明るいとなると、エルフの可能性が高まる。

 エルフか……胸、寿命、魔法適正以外の特殊さ、耳の感帯……夢が膨らむなぁ。


 しかし膨らんだものも、これを越えなければ虚しい妄想となる。実現の為に手を考える。

 結界をこの効果だけで考えず、他への転用や運用も視野に入れるのが、突破口となりうる。


 見てきた作品から似たような、結界や壁を探す。


(大魔王のは無理矢理だから真似出来ない。画面端のは殴れば反せるが、やはり壊せない。あれは心への呼び掛けだし……金色は)


 そうして思い当たる。本での繋がりを描く作品での壁に。


 舟を大型集合店舗サイズの収納空間に入れ、氷の足場を作る。そして気絶したままの少年を、頭を下げればぶつからない、手を横にした形で立たせる。


 手の下の水面に向かって海氷を投げる。結界に弾かれることなく着水。それを見て俺はしゃがんだまま歩き、結界を通りすぎる。


「厚い方が確実なのに薄い方を使うからだ!」

[できちゃったね~。よかったね~]


 圧縮技術は素晴らしいが、逆効果になる場合もある。それが今回のような場合だ。


 そしてまたも高速船舶。気絶から帰っても、また逝く少年だった。




[まだ目じゃ無理だけど、港あんで]


 《内演算》はそう言って水流から、スクリューへと切り換えた。良かった、未開の地での第一印象が変人は嫌だからな。

 俺の事だからやらかすだろうけど。そんな事を考えてると。視認可能になり。


『そこの木製船。停まりなさい』


 近代的な船……いやエンブレムだとかがついてるから戦艦の方が近いだろう。

 捕縛される流れのやつだ。言語が一致しようが、きちんと説明しようが関係なく牢にぶちこまれ__






「そうですか……では旅の続きをお楽しみ下さい」


 なかった。自由に出来るのはありがたいが、異世界イベントとしては物足りない。同じ牢の人が黒幕の最大駒だったり、看守が転生・転移者で脱走手伝いと聖地等の情報を教えてくれたり。


[これはサブカル脳]


 真っ直ぐストレートな言葉をくらう。同類に言われようが、きついものはきつい。

 

 そうしながらも情報収集は行う。国や地域名の記憶は後回しに、人や未開の地を探す。街中には人しか見えないので残念だったが。


『北側へ行ってはならない』


 聞き回ったほとんどがこれだ。実際、北側の壁は厳重そうに監視されていた。

 もちろん俺は行くで? 異世界(ここ)の楽しみ方は、冒険以外ないからな。人の言う事をガン無視しているのは………屑だが。


 〈粘性体(ウーズ)〉形態で、舗装された道路の隙間をぬい、壁を抜け、土の中を行く。これでクビになったりしたら悪いが……今の俺は子供のように自分本位なのだ。

 

 __全てを手に入れてから余分なものを取り除かねば、何が真に必要なのか分からない。それが今は__


 したかった事が全て可能の可能性がある世界に【一人で】来た時点で、行動は決まったのだ。ヤマモトとサイフィの出会いは、かなり軽めのストッパーにしかなりえない。デュラムは普通のストッパーか。

 ならば次は最重……人生の墓場といこう。その為に亜人種を探そう。


 


 歩き始めて二時間は経った頃。猛吹雪に襲われた。〈炎鎧(アーマード ヒート)〉で突き進むにも限界が来たと感じた俺は、洞窟を探した。

 流石に猛吹雪の中で、絶対零度の習得に励むのは無茶と思ったからだ。


 30分程の捜索で発見。かなり広く、深かったので《錬成》を使い部屋を作った。しばらくの間はここを拠点に探そうと思う。

 試しにデュラムを出してみると。


「申し訳ありません! ここでは役に立てそうにごさいませぬ!」


 もの凄い土下座だ。慰めるのに時間がかかりそうな。


「では、また修行の旅へ行きます」

「……おぅ。死なずに帰還せよ」


 使えそうにないが、完全に使えなくなった。次に合う時は、酸と冷気にも耐性をつけてくるだろうが。


(いや主を置いて行くなよ)

[壁扱いは如何なものかと]

(そうは言ってないぞ)


 《内演算》とのお喋りに夢中になっていると[22:14]就寝の時間だ。部屋の明かりは暖の為に付けたままにしておこう。


______________________________________


カツカツカツ


 誰かがドアを引っ掻く音がした。野生動物か何かだろうと、臨戦体勢で《内演算》がドアを開けると。


「あの~」


 これは間違いない。ゼノムの目標……というより前世界で、最も保存画像数が多い存在ではないのだろうか。《内演算》は待機モードへと変わった。


 白毛の犬系獣人で可愛い娘。しかも見た目の獣が、耳と尻尾だけという。より言えば巫女服気味であれば極上であっただろうが、そうではなかった。


「これは……触手……? でも襲って来ないし……」


 若干の警戒か。文明人としては同然。


「あっ。暖かそう……入っちゃえ」


 非常識であった。人がいようと布団に潜り込むという、犬のような習性。これもまたゼノムにとっては至福であろう。


「ヌクヌク~………スピー」


 寝るのまで早い。恐らくゼノムは早朝に目覚め、理性との戦いに身を投じる事になる。

追記:最近、飛んでるなと思ったあなた。ご安心下さい。嫁を一応出せたので、ここからはまたゆったりとした、脳内プロットと黒歴史ノートにあるような流れで行けます。

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