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全天録  作者: AX-02
第一章 朝
32/261

聞かない奴が悪いので

俺「宣言はするべきではない」


《内演算》[やはりゴミか]

「あれでよろしいのですか?」


 ゼノムが出た部屋の中で、黒服は主に問いかけた。

 前世の年上を駒でいいのか。会話の中から察するに、前世は相当な法の世界。そこから来たばかりの存在を、あのような扱いでいいのか。


「問題ない。あの実力なら余裕で鎮圧して、達成報告に来るだろう」


 サイフィはそう答えた。負ける訳がないから、全部教えなくても大丈夫だと。


「左様ですか………」


 黒服は納得するしかなかった。主の太鼓判を一対一で覆せる訳がないからだ。


「無理だったとして、救援を出せるようにしておけ」


 黒服の理解の範疇を越えた。助け船までやるとは、想像していなかったからだ。最早ゼノムの扱いは駒ではない。

 黒服は疑問を抱えながら退室した。

 一人残ったサイフィは、反省していた。情報を渡さな過ぎたと。


「どこまで進んでるかな……戦車……」

________________________________________

 

 予測地点に向かいながら、依頼内容を思い出す。


・ セ・カスター家の企みを潰せ。やれるなら当主リヨン=セ・カスターと協力者を殺れ。

・ マーシャ=セ・カスターの保護。彼女から色々と漏れている。こっちの方が優先。

・ 150人程度の部隊を持っている模様。


 というものだ。

 取り敢えず保護にツッコんだ。被害者となるのは赤の他人なので、そうでない者の方が優先になるのは分かるが……。


[雄なんて肉欲なのよ]


 取り憑かれたら男じゃないもんな。よく分かる。俺だって亜人種の美女が居たら、間違いなく野獣となるだろう。


[野獣だったか]


 違うそうじゃない。といいかけたところで《空間覇握》に何かが映る。黒い。四足の……いや腕か。


ギュゴオォォォォオォォォン


 そんな威嚇の咆哮が聞こえる。待ってくれ、聞き覚えがあるぞ。絶滅レベルで、やられ役になってしまったあの。


 そこまで考えて実物が視界に入る。間違えようがなかった。身に雷電が迸るゴリラに遭遇したのだ。

 早速、見慣れた行動を取った。木を抜きこちらに投げつけてくる。普通にしゃがんでもいいが……俺は違う。投げつけられた木を足場に大ジャンプ。そして右で殴り付け。


ベギィ


 非常にまずい音がした。後ろに全速力で下がる。

 右腕はどこをどうみても死んでいる。ポンプのように波打つ自分の腕。ゴリラの堅さを認識した。

 魔法も試すが全然効かない。打撃と魔法耐性がおかしいようだ。残ったのは斬撃。


[ブッタ()ってやるよ!] 


 ノリノリの内側。腕を見れば完治していた上に、大剣が握らされていた。

 またゴリラは慣れたモーションをする。回転攻撃だ。半歩下がり、終わり際に顔面への一撃を叩き込む。ダメージとしては通ったようだが傷付いていない。


ガゴォォオォォォ


 怒った。毛が逆立つなんてことはなかったが、より攻めの動きになった。俺は大剣を背負い走り回っている。地面は雷ゴリラの拳で凹凸が凄惨な事になり、木々も薙ぎ倒され、草は焦げている。

 

 電気の走りが聞こえた。嫌な予感がしたので腰をひねり、身を屈め逆方向へ回転受け身をする。さっきまでの進行の場合、直撃しただろう一条の雷が通過した。

 これが怖い。前世界の呼び名をそのままで言えば、ゴリラビーム。相手の動きを予想した位置に置く時と、全く予測しないで現在位置に放つ場合があるので、非常に事故りやすい攻撃だ。一撃で死ぬ事もあるし、誰を狙っての発射地点調整をしているのか分からない。今はソロだが集団でやると厄介なものになる。


[当たり判定が亜空間前提だもんな、現実は]


 ゲームだと例え即死でも当たらなければどうともない。が現実は、その攻撃以外の影響がある。ビーム系統だと、ビーム本体とそれによる熱が必ず発生するので、当たらなかったとして間近だと熱さで焼ける。実際目の前でそれが発生……………って山火事じゃねぇか?!

 強い攻撃をすれば、生態を破壊するというトンデモ生態。こいつらは一体何を必要としてこんな進化をしたのだろう。


 火消しに向かいたいが、ゴリラはその暇を与えてくれない。むしろ高揚している気がする。大剣の腹でガード状態が続いている。切れ味は《物体変化》による自動修復なので問題ない。しかし攻撃に移れないのは悪い流れだ。某乱闘のタイマン試合で散々それでやられてきた。が、無理にはいかない。それこそ大打撃が入る可能性が高まる。着実に反撃できる機を待つ。


 防戦になってから40秒は経った時に、反撃の時は来た。幾度と見たデンプシーロールの動きへと変化したからだ。回数により二つのパターンがあるので、それの見極めが必要だ。

 剣から伝わる衝撃を数える。4回を越えたのでもう一つの方だと確信。ガードを解き、数歩下がって右へ移動、地面に支えを打ち込み、大剣を振りかぶり。

 デンプシーロールの最後、拳を地面に突き立てる。揺れるが支えのある俺には関係ない。がら空きの右腕に大剣をぶちこんだ。


ギュイ?!


 バランスを崩し転がるゴリラ。さてどこを狙おうか………。


「そういえば。尻尾で雷の調整してたんだったな」


 向こうの設定を思い出し、実際(?)どうなるのかを見たくなった俺は尻尾の破壊をすることにした。

 

 血が吹き出て、切り落とされる。それはそうだ。あれはゲームだったから切断が不可能なだっただけで、現実で同じ事をやれば当然出来る。落胆なのか罪悪なのか分からない気持ちになった。


 ゴリラが起き上がり逃走のためか大ジャンプをした。


[そうそうこれで付け忘れてたりしてね]

(寝床か把握しているエリアに行ってたりしてな)


 前世界の談笑をしつつ、追従する。仕様上絶対にやれなかった、移動中に叩き落とす。をするためだ。

 ゴリラと目が合った。ゴリラの顎が外れたように口が開いたのは気のせいだ。剣を伸ばし斬り付ける。きりもみ回転しながら落ちて行った。

 斬り付けたせいで失速した俺も落ちる。約束された完璧な着地をし、最短距離で落下地点へ向かう。


 着いてゴリラの顔が見えた。半分が目は取れ、骨が見えた状態になっている。おぉグロいグロい。

 明らかなチャンスだ。動きも鈍くなるだろう。ならば……前から出来ないかと思っていた事をやろう。そう思った俺は手のみ《粘性体(ウーズ)》形態にする。


オォォォォォォォォオォォォォォォォォオォォ


 ゴリラが決死になったようだがぬるい。本能でやってるのであろう動きが、悉く既視なので楽になった。飄々と近寄り駄目になった方の顔に、粘性液をかけて離れる。


(行け!内部情報を持ち帰るのだ!!)


 そう念じると粘性液が消えた。仕込みのような段階なので気にせず、戦闘を続ける。

 収集速度が予測を遥かに越えたのだろうか、回収要請が届いている。一応、隙となるのでその前にダウンを取ろう。腕に比べて貧弱な後ろ足を一刀両断の気で斬る。予定調和のように転がる。

 確か、この習性を利用した運搬のクエストがあるとか。そんなネタを浮かべなから回収作業に入る。まぁ俺の位置に分身が飛来するだけだけど。

 回収したら情報解析に回す。勿論、俺は出来ないので《内演算》まかせだ。


[はぇ~~~………は?マ?…………あ~そういう…………]


 何かが見つかっている。ならばよし、俺は立ち入らない。


(で?どこを攻撃したらいいの?)


 純粋な質問をぶつける。さっさと終わらせて消火活動に向かわねばならないからだ。


[目の空洞から脳に入れて。終わり。ブツン]


 わざわざ通信終了のような効果音を入れたのは、会話が面倒だからだろう。これ以上言う必要はないし。

 魅せプのような動きで締めるとしよう。誰も見ていないけど。そして俺は小石を拾い、形を変え手にめり込ませた。


 雷ゴリラはもはや最期の賭けに出るようだ。しかし悲しい事に選んだ技は既知だった。回転バウンド攻撃だ。

 三回目に合わせる事にした俺は避けつつ、腕を射出機構へ変化させる。そして三回目。


「[Jack pot]」


 体の軸をずらして、目から手を突っ込み頭へ小石を射出した。色々引っ提げて貫通したのが見えたので、トドメはさしたと思う。

 死骸となったがゴリラは、重力に正しく従い俺に落ちる。地を掘って下敷きから脱出。


「……こいつもっと違う動きして欲しかったなぁ……でこれの処理だが」


 恒例のように、処理に悩んだ。

撃ち込んだのは

/ \

I

I

v


みたいな形状です

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