一番密度の高い日
俺「空く事が恐怖……そうだ!すし詰めにすれば」
《内演算》[は?]
《錬成》「は?」
ガールズラブ「は?」
チート「は?」
勇者「は?」
帝都に着いた俺は入都審査を待つ。かなり独特の審査……というより、腕相撲と魔法威力検査しかやっていない。
脳まで筋肉のレベルだ。テンプレなら獣人がやるような事を、人間が行っていることに引いている。
腕相撲は勝てばパスだろうが、金を払うようになる人だけになっている。回収人が就いていると推理した。
俺の番になる。すまん皆さん、こんな顔面で。後で薄い本でも発売するから許してくれ。
「腕か魔法のどっちか選べ。腕は勝つか一定時間拮抗したらタダ。魔法は一定威力以上でタダだ」
「名前は?」
「金を払う時だ」
勝たなければならない。偽名判別の魔法の存在が不明で、怖れている。〈ロオ〉では運よく使われなかっただけかもしれない。
「腕だ」
「ならこっちに来い」
声がした方を見る。勝たせる気ないと思うくらいの筋肉質の男が、樽付近にタバコを吸いながら待機していた。今日は税収倍増日なのだろう、普段からこれでは、活気がなくなる。
右肘を樽に乗せ、体を変化させ準備が完了した。男は砂時計を持って。
「時間はこれが落ち切るまで。分かったか?」
ある程度の親切は持って……。
「因みに、勢い良すぎて樽が壊れたら罰金だからな」
これは外道。弱者から吸い上げる気が山盛りだ。手を組み、空いた方は樽に添え、そしてレフェリーの合図を待つ。
カリッカリッ
男からそんな音が聞こえる。一瞬ロボット説が過るが違った。音源が口だったからだ。
[タバコモドキ:幅広い年齢層に根強い人気のスティック菓子。薬草を練り込むので、様々な回復、補助強化が出来る。一番人気はスタミナ回復&血行良化の〈ためコ〉税別118]
知っているのか?! 《内演算》! そしてこれで正体の一部を掴んだ。少なくとも、この世界で生活していないと知り得ない情報を持っている。
「始め!」
腕相撲が始まる。一瞬で終わると思っていたのだろう、相手は驚き周囲がざわつく。
俺の腕は動いていない。その程度の力でしかないからだ。添えていた手を離しても変わらない。
咥えていた菓子を俺の目に飛ばし、腕に魔力を回した。30°俺が押されたので、流石に添える事に。それ以降は不動だ。
「なんだ?! あのブサイク!!」
「化けもんだ……真性の……」
「隊長!!」
外野の興奮が伝わって来る。ここだけ温度が違うし、小石が振動して音を鳴らしているから当然だ。
互いの手汗が滴る。互いの魔力の脈動を感じている。視線が合う。目だけで意思が分かるという現象が発生した。
砂時計が残り僅か_時間にして4秒_で互いに動き、静かに決着した。
「……はぁ~~……行け……無料だ」
拍手と歓声に手を振りながら俺は都入りした。
初見の列と同じくらいの衝撃を受けた。ポツポツとだが、街人の服装、並べられてる服が現代的だったからだ。
流通具合からして3ヵ月は経過している。同じ境遇の者がいるとしか思えない。服を並べている出店に聞いた。
「珍しい服ですね。誰の考案でしょうか?」
「……不明です」
「そうですか……」
冷やかしと思われただろうが、質問だけして買わなかった。済まない許してくれ、使えると確定しているものがないんだ。
非常に不味いので素材を売れる所を探す。勿論ギルド登録なしで、直接売れるのを。
現実は非情である。そんな場はなかった。これでは宿が取れない………。
[逆に考えるんだ。ガチ野宿が出来ると]
(人としてどうかと思います)
[まだ人だったの?]
(………そうだなポジティブに行こう!! いっちょ死んでみっか!!)
[ごめんなさい。間違いまち……。動物とかに擬態すれば良いのでは?]
最初からそう言えばいいのに。前提や主語が抜けた結果の曲解は、全世界共通あるあるのようだ。それにしてもスキルが噛むって事あるんだな。バグかわ。
服装以外では刺激になるものはなかった。
「ありがとう………ブサイクでも真っ直ぐな人はいるんだ……」
絡まれてたので助けた少女や。
「…アッ…兄っ貴………ハァハァ……取ってきやしたぜ……ハァハァ…」
不当に勝負を挑んだ罰として、大量に薬草採取をソロでさせたアンちゃんがいたが、展開するなんて事はなかった。
そんな風にブラブラしていると[21:15]歩き回っていた際に、見つけたので三毛猫に擬態をし、適当な家の屋根で寝る事にした。
ここをお気に入りとしていた野良猫に、喧嘩を売られたが余裕で撃退した。
野外で争い、腕相撲で盛り上がり、服に衝撃を受け、《内演算》に萌え、猫に喧嘩売られるという濃密な一日だった。
リアクション等で疲れている。これで一息つけ。
「ゼノム・ルマ=アウゴだな。同行してもらう」
「…僕…もう眠いんだ……明日じゃ駄目?」
「駄目だな」
どこでこのフラグを踏んだのだろう。とゲーム脳になりながら黒服………忍装束だ……帝国の暗部に連行され、休息が先延ばしになった。




