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全天録  作者: AX-02
第一章 朝
27/261

頼むから止まれ

「まずは第一段階の発動だ」


 ヴェラドは半透明の鍵盤を叩き、浮いた画面を確認しながら呟く。その脇を小さな光が通り、ヴェラドと画面の中間に停滞した。


「何やってんの?」

「イレギュラー〈ゼノ〉への対処。本当はラビオンを送れば、確実に修正できるけど」

「またアホ共のせいね」

「そうなんだ。『期間を空け、順に上げるべし』って手遅れにする気満々の制約があって………フロー定形になれ。見にくい」


 小さな光は人の形をとり、黄金のオーラを纏う妖精になる。本来ならこの姿になるだけだが、悪戯心でオーラを垂れ流しにしている。


 悪戯は妖精の性分なのだから、誰も止められない。当人は無意識に行うからだ。

 特に彼女の場合、周囲は深刻になるような実力の存在はいない上に、保護のような状態になっており、ますます修正しようがない。


 平時ならもっと言うが、判明した制約の方が大問題だ。

 本来ならば成った者への枷となるはずの制約が、海底へと送り込む為の重しへと変貌していたからだ。原因は判明している。先々代のせいだ。無我で対処する事が、満場一致する位にやらかしていた代のせいだ。

 〈万象庫(アカシックレコード)〉の大規模削除、残存生命体1200、種族の得意方面の極限化………二度とあってはならない事件が多数起こっていた。


 禁止リスト案を全員が作成、提出したという奇跡もあった。


「どうしてそうなった……理解出来ない………」

「経過見たい。出せる?」

「出せる。けどねぇ……状況は読めてるんだぁ………」


 連続した画に切り替わる。

 一人の男が集団に肉弾戦をしていた。どう見ても男が優勢である。


「………これは……合ってない……」

「レベルが全然違う。一体どこから発生したのやら」


 火の幕に覆われようが回転で吹き飛ばし、氷塊となれば打ち砕き、斬撃を二指で止め、打撃をすり抜け、次々と気絶させてゆく。見た目に傷は見えるが無いかのように断行する。

 〈狂戦士(バーサーカー)〉にして〈乱調者(バランスブレイカー)〉がそこに在った。


「………殺ってたら……」

「そうだね。魔物が強者を撃破したときの伸びは、凶悪そのもの。しかも彼は……記されてない」


 気休めは殺害がないところだろう。していたのであれば、戦闘中に魔改造という予測困難なものになる。

 そして彼は、神々ですら未来は見えないのだ。〈万象庫(アカシックレコード)〉にない存在の未来は遠くから見えない。しかし〈原初球(エデン)〉へと向かえる条件は、まだ達していない。故に後手を取ることとなる。


「耳とか白は動かせないの?」


 フローが既に送り込まれている存在への問いを出した。


「駄目なんだ。耳は出てはいけないし、白は段階的に言えばまだ先になる。〈ゼノ〉の段階が飛べばこちらも飛ばせるけど……」

「手遅れ」


 そうならない為の対処は制約され、どうなるか見えない存在が自由に行動する。

 あの代に自分が在れば………ヴェラドはそう思った。


「あっ……赤いなんか出て来た」

「終わったな………第二じゃなくて第五にしたい……」

________________________________________



 荒れた呼吸を整える。いつになく長く苦しい戦いだった。


[NKT……]

(城を壊してないぞ? 立ち排尿もぞ? 出ないし)


 完全に俺と同等のネット民となった《内演算》への対応にも疲れた俺は転がった。


 ギリギリだった気がする。何せ体が痛いのだ。間違いなく筋肉痛だろう。体術戦用とか思って付けた反動が来ている。


「お手を煩わせて申し訳ありません」

「しょぅ…じんせ……ょ…どぅらもぅ」


 絶え絶えの言葉をデュラムへとかける。多分、変換出来てないだろう。




 しばらく寝転がっているとグームが現れた。


『次はどこへ向かう』


 行き先を聞きたいようだ。少々、考えて。


「海沿いに西へ行こうと思う。じゃないとこいつが目立つし」


 まだ塗料がない時に、デュラムを関所等に通せる訳がない。グームに乗った方が通れる気がした。


『それ以外はないか? 伝言もよい』

「…………ならこいつらとその上にこう言え。[カウンターは攻撃に合わせるものだろう]とな」

『ふっ……曲がるだろうな、その言葉』


 グームに伝言を頼んだ。そっちが来ないなら俺も手を出さないよ~。のような意味だ。まぁ全然期待してないがな。


 気絶している冒険者の皆さまの装備は、美味しく頂きました。レアリティは然程だが、量があれば使える。食べてるけど。


 食べ終わった俺は立ち上がり。


ベギッ


 体から嫌な音がしたので、即〈粘性体(ウーズ)〉形態へと移行した。


[全治4日]


 この体で4日かかるダメージ。つまり前世界の場合、治らないと思った方が良いレベルのものが、入っているということだ。


 死な安なのがファンタジーだが、恐怖した。

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