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全天録  作者: AX-02
第一章 朝
24/261

ゼノムの初犯

ペースダウンしたら再燃するまでが辛いよ


次とか言ってたのはイベントの事です

 口の中は海の臭みが充満しているらしい。既に嗅覚を遮断済みの体にしておいて良かった。

 雑食の鯨……代謝が半端じゃないのだろう。


 喉へ押し込む動きが見える。逆らわず〈粘性体(ウーズ)〉形態へと移行する。

粘性体(ウーズ)〉形態の方が酸に耐え、体を細くすることが出来るからだ。


 食道を落ちた先に胃が……待ってなかった。


 目の前には、入り組んだ地形が広がっていた。不明な原理で明るい、体内がダンジョンな魔物。そして鯨………。


[大きな浮き百足フラグ立てときますね]


 それまで現れたら俺は、この世界とは?と考察タイムが到来するだろう。






 どこがどの器官なのか分からないので、脱出は困難だと思われる。


《空間覇握》が制限され、肉壁の向こうを調べる術がない。

敵が突き破って来るのを察知出来ないので、かなり慎重な移動をしている。


[骨なしチキン]


 商品名なのか罵倒なのか、分からない言葉を呟かれる。

 腕前は味方だが、心の支えでは敵となるのが《内演算》なのだろう。レスバに慣れていない人には辛いスキルだ。


「ギャガガガガ」


 ゴブリンの群れが曲がった先にいた。溶けかけた海産物を漁っている。酸耐性を獲得しているようだ。年単位で生息していそう。


「ヴギィ!!」


 察知されたようだ。足場が酸だらけで悪いので、移動する。

 矢や石が飛ぶ。矢があたるが問題ない。引き抜いたら矢の刃が見えた。

 

 ……鉄…製………? なんで製作できたのか理解出来ない。この鯨が砦でも食べてるのか?



 それなりの広い場所に誘き寄せることに成功。


「〈氷柩〉」


 前にくらった氷魔法を放つ。

 冷凍保存されていると、ありふれた物でも美的価値が上がる。気泡がないから更に良いだろう。


 範囲外の取りこぼしを狩る。作業だった。


「思った範囲と違うな-」


 そうぼやきながら、手を振る。

 魔法は振れ幅が激しい。ライターがバーナーになったり、100㎡の範囲が64㎡になったりする。

 イメージ等の集中力の揺れ、精霊の機嫌でそうなるのだろうが、なくなった方が良い。威力が安定した方が強いのは必然なのだ。


グググググ


 そんな音が聞こえてくる。目の前の氷を見て、悟った。

 お腹が冷えたから下すのだろうと。


 排泄物には混ざりたくないので、上に向かい壁を掴む。直後。


 空間が潰れ、氷塊の砕ける音が鳴る。出す前動作だ。砕けた氷が奥へと流れるのを見て降り立つ。


[データ収集完了。報告します]

(壁の向こうが分かったのか?!)

[そっちに流す作業が面倒なので]


 《空間覇握》の制限はどうやら俺の実力不足のせいだったようだ。

 馬鹿でもわかる映像へと変換しなければならない手間を考え、スキルに本気で頭が上がらなくなった。


 報告の中、周囲が軽い気体だと聞かされ実験をしたくなる。


粘性体(ウーズ)〉形態で空気を取り込んだ俺は、体内で着火した。


ポン


 そんな音だが確かに爆発した。これは使うしかないだろう。


[浮かなくなれば倒しやすい]


 軽い気体と魔法の合わせ技で浮いているので、地面に叩きつけたい《内演算》はストップをかけなかった。

 寧ろ嬉々として〈爆散〉をホールドして行った気がする。


 恐らく腸の中間だろうところにそれはいた。俺は宣言通りに、考察タイムへ突入し足が止まった。


(この世界は一体何なんだろう。魔法法則がある、地球とは別の星は確定。こいつは前世界の創作物とほぼ同じもの。なら前世界はこの世界と同じ上位存在に作られた。もしくは俺が前世界の創作物の中に入った、創作は創世でありその世界に入ってしまったとなる。そうなると何で俺なのか。召喚されたりの方がマシだったな、人間として認知されるし。

上位存在に会ってるけど、記憶が消されている可能性は望まれない。何を仕出かすのか分からないのにやる訳がない。罰ゲームだったら赦されないな、逃げ場をなくした上で、じわじわと消滅させよう)


 考察は神への反逆を過らせた。


ギュアァァァァ


 浮き百足 大 がまた突進してくる。考えがまとまったので相手をしようと思う。


 ホールドをするため、拳は集中し握ったままにしなければならない。

 魔法や直接拳闘が出来ない。《物体変化》オンリーで戦うことになった。


 まずオーソドックスに一刀両断を狙う。相手の狙いが顔らしいので、思い切り体を下げて斬った。


ギギギ


 後ろから悲鳴らしきものが聞こえるが、まだ浮いているので余裕とみなし、追撃をかける。


 鎚による打撃を追いかけながら行う。

 硬い……回復をしていないにも関わらず、割れた甲殻が一枚もないように思える。

 巨大生物に寄生する存在がここまで強いと、寄生の意味を再確認してしまう。


 (のみ)で剥がす作戦に出たいが、乗らせてくれない。無属性の〈魔法矢〉が飛んでくるので、意識を割かなければならないからだ。膠着しそうになった時。


[………………………《自動攻渉》]


 本当にポツッと《内演算》が答えを出した。数秒間、何を言っているのか分からなかったが、理解した。


 そう言えばそんなスキル持ってたなと。どこかでOFFにして解除し忘れてたのだろうと。


(Lock OFF!)


 と気分的に念じる。すると周囲に〈魔法矢〉が静止状態で出現した。相手のと比較すると、こちらの方が太いようだ。


 弾幕の相殺試合がなされる中、俺は甲殻を剥がす作業に入り、しばらくすると。


ペリペリ


 音が聞こえた。予兆だと感じた俺は、同時作業へと変える。


キンキンキンキンキンキンキン


相殺の音が激しくなる。浮き百足 大が危機を感じているのだろう。手遅れだがな。


 俺は41枚、全ての甲殻を剥がしかけで止めている。


[やっぱ悪魔だったわ]


 それは誉め言葉なのだろう。さぁ一斉に剥がすぞ!


ベリベリベリ!!!

ギァァァァァァ………

[ショック死を確認しました]


 これが勝利だ。

 剥がした素材を空間収納に6枚入れ、残りは食べた。


 消化に時間がかかったので急いで仕掛ける。

 途中にいたキラー細胞らしきもの等を蹴散らしながら、奥へと進む。




 機は熟した。長時間の仕込みの威力を特と見よ。《物体変化》で体を覆い、握った拳を開いた。

_______________________________________



「次の依頼はどんなのがいい?」

「んーーー。また討伐がいいかな」

「クレイス……血の気が多いな」

「ティナだって護衛が多いじゃん」


 二人は平凡に馬車に揺られて、会話をしていた。

 いつも通りの会話だ。


 依頼をどうしたいのかは、ソロでない限りは相談が必要だ。しなかったら空気が悪化し、解散か全滅となる。

 彼女らの場合は元から仲があり、先の事件からは、あまり離れないように行動しているので、話す機会が多くなってその心配はない。


「にしても………あの時は終わったと思った」

「そうだね…男の人だったらアタックしてたかも」

「放置されるのね。分かった」

「しないよ!!」


 あれは運が良かった。もしも現れなかったら……。そうならないためにも。


「強くならなきゃ。また助けられる訳がないもんね」

「だな。頑張るぞー!」

「お」


ズドン


「きゃぁあぁ!!」

「うぉう!! またか?!」


 トラウマが掘り返される二人は、軽症のまま恐る恐る横転した馬車から身を出した。


 人の気配はおろか獣すらいない。あるのは。


「何? あの塊」

「魚の……尾びれ? ……にしてもデカイな……ギルドに持って行くか」


 見慣れない、そして場違いな物体だった。

【祝・使用回】

《自動攻渉》「うぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!」


《空間覇握》「良かったな(今後は知らないけど)」


《内演算》[おめでとう!(上げて落とされそう)]


《錬成》「今回はなしか(お前よりは使われるけど)」


《座標詐称》「いいな(強敵に使われないだろうな)」


《物体変化》「うるせーな。封入するぞ」


《自動攻渉》「やめて下さい折れますから」

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