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全天録  作者: AX-02
第一章 朝
22/261

海の遭遇

遅れっちった

「お前らが討伐失敗?!」

「一方的に攻撃するも硬質化外套に阻まれ、会話の不意を突けたと思ったら、地下に逃走されました」

「……一体何なんだ。ゼノム・ルマ=アウゴという存在は」

「〈水粘体(スライム)〉の系統です。現時点での討伐難度はA以上、成長してしまえばSになり得ます。〈魔物使い〉と魔石に興味を示す事もありました」

「何処に向かったか分からないのか?」

「残念ながら」

「そうか………依頼だったらかなり危なかったな」

「えぇ、本当に。では失礼」


〈天烈〉はゼノムとの遭遇から4日後、グーバスギルドに帰り、報告をした。思い出しキレで机を壊しそうになるライを予想して、ケイが行った。


 やはりというか……驚かれ、そして謎に思っただろう。

 何故、反撃に出なかったのか。何故、〈魔物使い〉に興味を示したのか…。対峙した自分達ですら分からないのだ。


 逃走された後、脱出しゴブリンが産まれるので処理しようとしたが、三人からは綺麗に消えていた。ゼノムが補食したのだろうが、余りに遠回りだ。身籠った母体ごと食べた方が、量があるはずなのに。


 善性を認める必要と、危険なのかが怪しくなってしまった。

 確かに聖人の体を動かすのは悪だ。しかし、冒険者と戦闘、盗賊殺し、〈小怪王(ゴブリンキング)〉の討伐、母体へのダメージが少ない処理。これらを考えるなら討伐対象でなくともよいのではないのか。


 流れてきた言葉

 『お前も』『体に呑まれた』『人に非ず』の意味を推察する。

体と思考の合わない存在は………。


「…………人体実験……? ………いったいどこで…………」


 底知れぬ闇を感じるのであった。


_______________________________________



「せぃ!」

「なんの!!」

「ここだぁ!」

「ごふっ」


 デュラムとの模擬戦をしている。きつい一撃を腹に入れたらデュラムは倒れこんだ。


「………大丈夫か?」

「ありがとございます。大丈夫です」

「模擬は、訓練から外れそうだしやらないぞ………また素振りでもしておくわ」


 折角出来た配下………いや仲間を、訓練の事故で失いたくないからな。負傷箇所に触れて、修復機能の補助をして、それ以上は触れないでおく。


 名前を付けてからの数日は、訓練に使っている。

 しかも体力や近接戦メインの内容のおかげか、地形が変わっていない。

逃走生活中なので都合が良かった。


 デュラムの殻はかなり強い。一回脱皮を行っており、その脱け殻を岩や木に打ち付けてみたら、刺さってしまった。揺らしながら取ったら抉れた。

《物体変化》の鎚で叩いても数ミリ凹んだだけ。俺は耐久力に嫉妬したのか、2時間かけて穴を穿ってしまった。

 どう使うのか困ったので、穴を中心に魔法陣らしい模様を書いて、食べた。何も起きなかったのが残念だ。


 挟みも中々に凶悪。切れ味が半端でなく、俺の腕を実験台にしたら《内演算》が、硬質化以外の処理能力を20%落とした。と言うまで切断された。

 くっつくので切断は問題にならないが、魔力を通していない謎鉱石ならば、余裕で切れるということだ。少し痛いらしいが刺突にも使えるそうだ。


 いい仲間を持った。


 素振りとシャドーファイトを終えた俺は、目の前に広がる海へ向かう。


 水泳へと。


 元から海の存在のデュラムと呼吸要らずの俺。

 だが移動が困難なので、泳ぐ事に慣れておいた方が良いと練習することにしている。クロール、平、背の学校で習った泳ぎと、剣、槍、鎚を持ったままの泳ぎをする。


 武器持ち移動が難しい。特に潜行中。浮力と重力のせめぎあいの中で、動くからかバランスが安定しない。

《内演算》のオートモードと切り換えながらしているが。


[まるで成長していない………]


 と心に突き刺さる言葉を言われるくらい下手だ。氷魔法を極めて、足場作った方が早いのかもしれない。


[18:24]海から上がり《錬成》にて乾かす。夜の海もしなければならないが、まだ泳げない奴が行くべきではない。それに泳ぎと槍……銛しか扱っていないのだ。水中で剣や鎚を振るえないのでは話にならない。


[間違えてる気もするがな!]


 練習中に収納空間に入れた魚を捌く。《内演算》オート。動画で見た神業を完全に応用している。


 出来上がった刺身の盛り合わせを見て、デュラムが歓喜の声を上げる。


「ほじって食べていたものが、こんな風になるなんて!」


 そうだろうな………やはり醤油とわさびが欲しい………しかし異世界にあるものなのか? ……あったとして移動はがむしゃらダッシュと、地下。街はそもそも入れない俺には無用なのだろう。

 自作するにしても大樽の置き場に困る。食素材と具足素材の両立には小さい。


 食べ終わった俺は、《物体変化》でテントを作り、デュラムを見張りに立たせて寝る。


 俺が先寝の番だからだ。この場合、俺が自然に目覚めるまでのおおよそ3時間、デュラムが見張る。交代して4時間位は俺が見張る。また交代して見張ってもらう間に、《内演算》によるサブカルチャー供給をする。もう一度、交代して朝を迎える。


 となる。サブカルチャー供給………ファンタジー世界でなにやってるかというと、能力の使い方やルビの学習だ。

 こっちの魔法やスキルは音読みが主流のようだから、いつしか頂点に立った時に、変えてやろうと考えている。


 サブカルチャー供給の時間は、遮音しているのでデュラムは、寝ていると思っているだろう。いつかは謝ろうと思う。






「能力はやはり拡大解釈が付き物………そしてそれを上から物理…いや質量で殴り倒すのか」

「ゼノム様!! 敵襲です!」

「分かった! すぐ行く」


 供給中に敵襲のようだ。しかし俺を呼ぶ位の敵って何なんだ?

テントを外套へと戻した瞬間。


「危っ!!」


 高速で水が飛んで来た。顔を戻せば。


ウォォオオオォォォォォォン


 と大音量で鳴く、島を背負った鯨がいた。成る程、これは一人じゃ無理だ……てか呼ばれてなかったらぶっ飛ばされてたな。


 そう思いながら身構えて、どこに火力を出せばいいのか考え始める。

俺「さて、こいつの次の次ぐらいでやっと出せるかな」


《自動攻渉》「俺を?!」


     俺「正 妻」


《自動攻渉》「成る程!それで〈せいかい〉って読むんですね!?ヤッター!」


《内演算》[逃避を始めたわ]

《物体変化》「最初からなかったように、書き直した方が幸せなんじゃないかな………絶対やらないだろうけど」

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