海の遭遇
遅れっちった
「お前らが討伐失敗?!」
「一方的に攻撃するも硬質化外套に阻まれ、会話の不意を突けたと思ったら、地下に逃走されました」
「……一体何なんだ。ゼノム・ルマ=アウゴという存在は」
「〈水粘体〉の系統です。現時点での討伐難度はA以上、成長してしまえばSになり得ます。〈魔物使い〉と魔石に興味を示す事もありました」
「何処に向かったか分からないのか?」
「残念ながら」
「そうか………依頼だったらかなり危なかったな」
「えぇ、本当に。では失礼」
〈天烈〉はゼノムとの遭遇から4日後、グーバスギルドに帰り、報告をした。思い出しキレで机を壊しそうになるライを予想して、ケイが行った。
やはりというか……驚かれ、そして謎に思っただろう。
何故、反撃に出なかったのか。何故、〈魔物使い〉に興味を示したのか…。対峙した自分達ですら分からないのだ。
逃走された後、脱出しゴブリンが産まれるので処理しようとしたが、三人からは綺麗に消えていた。ゼノムが補食したのだろうが、余りに遠回りだ。身籠った母体ごと食べた方が、量があるはずなのに。
善性を認める必要と、危険なのかが怪しくなってしまった。
確かに聖人の体を動かすのは悪だ。しかし、冒険者と戦闘、盗賊殺し、〈小怪王〉の討伐、母体へのダメージが少ない処理。これらを考えるなら討伐対象でなくともよいのではないのか。
流れてきた言葉
『お前も』『体に呑まれた』『人に非ず』の意味を推察する。
体と思考の合わない存在は………。
「…………人体実験……? ………いったいどこで…………」
底知れぬ闇を感じるのであった。
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「せぃ!」
「なんの!!」
「ここだぁ!」
「ごふっ」
デュラムとの模擬戦をしている。きつい一撃を腹に入れたらデュラムは倒れこんだ。
「………大丈夫か?」
「ありがとございます。大丈夫です」
「模擬は、訓練から外れそうだしやらないぞ………また素振りでもしておくわ」
折角出来た配下………いや仲間を、訓練の事故で失いたくないからな。負傷箇所に触れて、修復機能の補助をして、それ以上は触れないでおく。
名前を付けてからの数日は、訓練に使っている。
しかも体力や近接戦メインの内容のおかげか、地形が変わっていない。
逃走生活中なので都合が良かった。
デュラムの殻はかなり強い。一回脱皮を行っており、その脱け殻を岩や木に打ち付けてみたら、刺さってしまった。揺らしながら取ったら抉れた。
《物体変化》の鎚で叩いても数ミリ凹んだだけ。俺は耐久力に嫉妬したのか、2時間かけて穴を穿ってしまった。
どう使うのか困ったので、穴を中心に魔法陣らしい模様を書いて、食べた。何も起きなかったのが残念だ。
挟みも中々に凶悪。切れ味が半端でなく、俺の腕を実験台にしたら《内演算》が、硬質化以外の処理能力を20%落とした。と言うまで切断された。
くっつくので切断は問題にならないが、魔力を通していない謎鉱石ならば、余裕で切れるということだ。少し痛いらしいが刺突にも使えるそうだ。
いい仲間を持った。
素振りとシャドーファイトを終えた俺は、目の前に広がる海へ向かう。
水泳へと。
元から海の存在のデュラムと呼吸要らずの俺。
だが移動が困難なので、泳ぐ事に慣れておいた方が良いと練習することにしている。クロール、平、背の学校で習った泳ぎと、剣、槍、鎚を持ったままの泳ぎをする。
武器持ち移動が難しい。特に潜行中。浮力と重力のせめぎあいの中で、動くからかバランスが安定しない。
《内演算》のオートモードと切り換えながらしているが。
[まるで成長していない………]
と心に突き刺さる言葉を言われるくらい下手だ。氷魔法を極めて、足場作った方が早いのかもしれない。
[18:24]海から上がり《錬成》にて乾かす。夜の海もしなければならないが、まだ泳げない奴が行くべきではない。それに泳ぎと槍……銛しか扱っていないのだ。水中で剣や鎚を振るえないのでは話にならない。
[間違えてる気もするがな!]
練習中に収納空間に入れた魚を捌く。《内演算》オート。動画で見た神業を完全に応用している。
出来上がった刺身の盛り合わせを見て、デュラムが歓喜の声を上げる。
「ほじって食べていたものが、こんな風になるなんて!」
そうだろうな………やはり醤油とわさびが欲しい………しかし異世界にあるものなのか? ……あったとして移動はがむしゃらダッシュと、地下。街はそもそも入れない俺には無用なのだろう。
自作するにしても大樽の置き場に困る。食素材と具足素材の両立には小さい。
食べ終わった俺は、《物体変化》でテントを作り、デュラムを見張りに立たせて寝る。
俺が先寝の番だからだ。この場合、俺が自然に目覚めるまでのおおよそ3時間、デュラムが見張る。交代して4時間位は俺が見張る。また交代して見張ってもらう間に、《内演算》によるサブカルチャー供給をする。もう一度、交代して朝を迎える。
となる。サブカルチャー供給………ファンタジー世界でなにやってるかというと、能力の使い方やルビの学習だ。
こっちの魔法やスキルは音読みが主流のようだから、いつしか頂点に立った時に、変えてやろうと考えている。
サブカルチャー供給の時間は、遮音しているのでデュラムは、寝ていると思っているだろう。いつかは謝ろうと思う。
「能力はやはり拡大解釈が付き物………そしてそれを上から物理…いや質量で殴り倒すのか」
「ゼノム様!! 敵襲です!」
「分かった! すぐ行く」
供給中に敵襲のようだ。しかし俺を呼ぶ位の敵って何なんだ?
テントを外套へと戻した瞬間。
「危っ!!」
高速で水が飛んで来た。顔を戻せば。
ウォォオオオォォォォォォン
と大音量で鳴く、島を背負った鯨がいた。成る程、これは一人じゃ無理だ……てか呼ばれてなかったらぶっ飛ばされてたな。
そう思いながら身構えて、どこに火力を出せばいいのか考え始める。
俺「さて、こいつの次の次ぐらいでやっと出せるかな」
《自動攻渉》「俺を?!」
俺「正 妻」
《自動攻渉》「成る程!それで〈せいかい〉って読むんですね!?ヤッター!」
《内演算》[逃避を始めたわ]
《物体変化》「最初からなかったように、書き直した方が幸せなんじゃないかな………絶対やらないだろうけど」




