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全天録  作者: AX-02
第二章 昼
132/261

状況

〈XAX-03(シエル)〉「嫌な予感しかしない」


〈XAX-01(セイメイ)〉「何されたか分からない」


〈XAX-02(ドン)〉「どうして飛んだんだ……俺」

『敵編隊30機を全滅』

『敵基地一つの制圧』

『襲撃を返り討ち』

『新型兵器を撃破』


 彼らの戦果報告に壁を感じ、英雄視よりも畏怖や疑問が先に出てくる者は後を絶たない。強いというより何かがおかしい、実は裏で繋がっているのではないかと思えるくらいの侵攻だった。


 彼らが進んでいるとされている一帯は、不気味な位に敵国の存在がいないのだ。協力関係でなくとも、彼らの中に黒幕を知覚している者は居るだろう。


『こちらゼノ、応答お願いします』


 教えてもない直接回線での連絡が届いた。数秒間意識が飛び、十秒は疑惑に埋め尽くされたが受信機を取る。


「こちら総司令部。何があった」

『改造地底火山の敵基地を制圧。残存データより首都が狙われていると判明した。至急、対策を願う』


 どうしてそうなっているのだろうか。地底火山に何をしている、何故データを明かす事が出来る。情報の少なさを想像で補う余り、困惑してしまう。


「そうか………君達は?」

『十分に到着可能であります』

「……………期待しているよ。通信終了」


 とにかく彼らが来るのは確定した。道中の妨害を考えれば間に合うはずがないのだが、十分な時間があると言っているのだ。どのみち彼らにすがるしかない。


「司令、報告がございます」

「何だ?」

「サウンド隊、モノモ隊、トリン隊。それぞれ全く違う地ですが……四機シフトで全ての戦闘を済ませているそうです」


 例え勝ったとしても、彼らに毒された存在が残る。そう断言された気持ちになった。


______________________________________




 本部への連絡を終えた俺は、夕食と入浴の準備に取り掛かった。当然のように提供側に回されるが、戦場で愛妻の手料理を求め抗議する事の、どこが間違いなのか。


[見せちゃったもんねシカタナイネ]


 火力調整をしながら《内対(ククラ)》が慰めの言葉を送ってくる。

 

 確かに、前世界の料理の再現を見せた俺のせいとも言えるだろう。しかし自分の仕込みとはいえ、嫁の作品には『うまい』と言うべきではないのだろうか。そのように他人の仕事への充実感を味わらせるべきであるのに。


[『さぁ、延々と食うがいい! 俺が如何なる時でも作る!』と豪語してましたよね?]


 儀式的ハネムーン中のノリを後悔させられる。常時興奮状態にあったと言っていい、あの過去の発言が今を苦しめる。

 そしてその回収率から言って、好んでやっているのだからシカタナイネ。


「おぅぃふぃ」

「うむ……奥の味はかくも愉快」

「おかわりを要請する!」

「余も乗るとしよう」

「まだまだ欲しいな~~」


 甘辛という食欲増進でしかないオカズ。ふくれた欲は法則に乗りリピーターとなる。


 


 夜食を含めて作らされて疲れ果てる。メンタルが強靭なのか貧弱なのか分からなくなってしまう。そんな中でも操縦席に座らされ、膝枕さえない状態になる。

 回路はどこであろうと繋がり《内対》が働くだけでいいのだが、そうはさせないと付き合わされる。


 思考の切り替えのために取得データの再確認をする。特殊構造の人工衛星の見取り図と、座標と落下予測時間の三つが書かれてある。

 見取り図は一体、何を目的としているのか不明な隙間だらけで『どうぞ戦闘機でお入り下さい』と言いたげである。座標と時間はそこそこ意味合いが分かりにくかったが、一番効果がある場所と時間を考えれば妥当なものだろう。


「ワウ!」


 犬形態のシュアがじゃれに来たようだ。膝に乗り味の残る唇を舐め回される。

 目を合わせ笑顔を見せ合いながら遊ぶ。と言っても俺がシュアを撫で回しているだけなのだが。


「まだお疲れ?」

「意識を沈めたい……」

「それなら交代、頼んで来るね」


 癒しは一瞬にして俺の要望を叶えに操縦室を去った。

 ショックを受けつつ周囲警戒をしておく。この改造機体はサイズが大きいから見つかり易いのだ。


「よし、まだ行けそうだな」

「おぅ、待てやゴラ」


 サイフィが来た瞬間に帰ろうとしたので呼び止める。質の悪い奴だ。


「それはそうと………俺は何時、帰れるんだ?」

「なんだ? 交代じゃなくて弄りに来たのか?」

「いや〈原初球(エデン)〉にだよ!」


 配下や妻を置いて同行(らち)して貰っていたのを忘れていた。確かにそろそろ帰らないと、全員敵な島での生活を余儀なくされる。


「これが終わったら帰してやるさ」

「本当だよな? 後からやっぱり無しとかないよな?」

「ないぞ。帰還に誓いを立てる」


 そう言うと彼は安心したようで、それ以上何も言わずに席に着いた。



 操縦室を出て10m程度の位置にある二人用の部屋に入る。無論、俺とシュアの為の部屋だ。


 うとうとしているシュアのベッドに潜り込む。人間態なのを抱き締める。


「まりゃ…おわずけ……」

「ん。このままだな」


 夜襲の時の罰は緩和されたが続行中で、本番の禁は解かれていない。同衾の時点で同じとも思えるが、そんな事はない。吸いとられるのと望んで放出するのは違うのだ。


(添い寝万歳!)








「さて、定例のように」

(状況っ! 状況考えて!?)

「何を言っておる、既に深い接吻を交わした仲ではないか」


 シュアを抱き締め微睡んでいたところ、ルシュフェルによる吸引が待ち構えていた。全力で抵抗したいが、正妻の眠りを妨げる訳にはいかず。


「……濃いな……シュアが原因かや?」

「………」


 かなりの背徳で感じていた。

《XAX-03》「やっぱりな」



流石に次回かその次にはファンタジーに戻さないと……

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