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全天録  作者: AX-02
第二章 昼
131/261

あらば

天才には敵わない……なんだよ女体焼肉って……

[機体解析までおおよそ二分]


 その間は《内対(ククラ)》による電子機器の保護が外れる。俺は俺で、燃料や回路代わりに機体に満たしている身体の操作をしなければならない。シュアの操作通りに動く必要があるので難しいにも程がある。ド素人の運転なんて大丈夫の『d』さえ見えない状況だ。


 独立させたのか《空間陸覇》が戻ってくる。性能が段違いだ《空間海覇》とでもしておこう。


 処理は間に合った気になるが、メンタルのせいでギリギリになる。ぶっ飛んだ精神構造ではないからな。


 ショット ライトロール ダウン ライトロール アクセル ガン アップ ショット………

 操縦席から伝わる指示に従う。撃墜出来たからいいものの、まだまだ敵は浮いている。疲れがたまりかけたが。


「ぅんっ!」

「っ?! 嘘……」


 一瞬見えた光に、俺はシュアの座席を埋め込ませた。直後、弾丸が通り抜ける。


 狙撃手として最強な存在が向こうにいる。それだけで、こちらの意識配分の見直しをさせる事が可能だ。更に言えば。


「遅れてるよ! ゼル!!」


 搭乗員を殺せずとも、機体の不備を発生させる事も出来る。バーナー、パネル、空気供給口。どれか一つを欠けさせ、重大ミスへの布石とさせる。


「すまない、制御回路の一部がロストした。急いでいるが……耐えてくれ」


 普段…では発生しないラグ。慣れていなければかなり辛く、間違いなく墜ち易い。歩兵となってラプターで再出撃するルートが頭に構築された。それだけは通ってはならないルートである。


(相手の移動予測を自力でする必要……マジもんのマルチだな)


 誰にとっても死角からの一撃は恐怖、この制限状況での墜落は死を免れる事はない。そのはずなのに楽観的な自分は何なのだろうか。脳内麻薬で溶かした可能を浮上させる。


 相手は走っての移動以外はあり得ない。こんな地形に適応出来る乗り物だったとして、土煙が一切ないのはおかしい。いや……相手が禁忌を侵している場合もあるか。とある戦艦ゲーでは『包囲してもワープ航法で逃げられる』という現象が起きる。プレイヤー側に理不尽不利を押し付けてなんぼ……【理論上可能だからセーフ】





[機体の解析が終了した。地上四つの地点からのエネルギー供給によるもののようだ。その四点にも同様の機構が確認され、同時破壊しか不可能である]


 見せられた地図では全て〈XAX-02(ドン)〉の安定射程外になるように配置されている。

 三個同時に破壊出来ればエネルギー供給不足に陥るのでは?と考えたが速攻で、非正規クリアが認められる訳がない。と否定した。


 とりあえず完全に俺が降りる必要が出てしまった。不穏な最中、信じて送り出すなんてフラグの乱立でしかない。機体自らに見える整備も完璧でないのに。


「固定の場を撃て。同時撃破として時間を……」

[現在時刻14:26:11。14:28:00にマーク。敵目標を送信する]

『おせーぞ!!』

『やっと解放されるのだな』

『あぁ! あんたの掠めるような機銃からな!!』

「じゃあ俺、北北西のに向かうから」


 かなりの進展のようである。栄華から堕ちたもの同士でくっつき易いのだろう。


「死ぬなよ……本当に……」

「ゼルこそ。回復、間に合わないからね?」


 回路を機械に任せて俺は射出された。風と熱が混ざりに交ざる。スナイプを警戒したが来なかったので一安心。


[さーて肉体能力は……………………残念だったな]


 御粗末ではなくむしろ逆に、無制限の状態に近いところまで個人戦力が上がっていた。遠隔の魔法や策敵が不能なだけで、頭上で爆砕した敵機の全てを回避する事は出来るのだから。


[竹槍でも作るか?]

(生えてないです)


 今戦(これ)を終わらせず、このまま単身で本拠地を壊滅させ、降伏宣言を出させた方が早い気さえしてきた。ルシュフェルすまない……羽を伸ばしてしまって。

 武器は実質的に不要である。しかしとりあえずの遠距離攻撃は欲しいので、尖った枝と手ごろな礫を持って走る。


[あっ反射光]


 《内対》の呟きを即座に理解した俺は、持っていた礫を投擲した。


[1kill。しっかし狙撃手が石を投げられて死亡ね………]

(少年忍者がモノを咥えさせられ散った語りがあってな)

[お宿でパンパンと音がいたしました]


 あくまでもガンにまつわる話であるが、何故かジャンルが違うように聞こえる。TPOを弁えない低品質オタクオリティに自嘲しつつ、進路を取った。


[さて考察のお時間が取れたぞ]


 地上部隊が奇妙にない中を走るので、思考をする余裕が出来上がった。そして隙あらば悩み苦しむ特性が合わさり、自身をMへと仕立てて開始する。


 声とも言えない声の正体の択である。友人に因があるのは確かなのだが、どの時点あるいは時空の彼なのかは不確か。未来に終息する為の修正か、現在の行動の余波か、彼の原初との契約か、もしかすると彼も異なる世界に赴き神へ至ったのかもしれない。人の創造により産まれし〈三創神〉……日頃から思考実験じみた事をしていた彼ならば、とんでもないのが産まれていても不思議ではない。性欲への矛盾や早期上級達成に始まり、悟りの最終段階と合致してしまった彼ならば。

 しかし彼は悪意があっただろうか。凡人である自分には分からないものである。例え彼の都合の良いようにあの部屋で思考誘導等がされていたとして、自分の快楽を求める事自体は正しいはずなのだから。純正な彼でなくなった、若しくは彼の別枠を当てられた世界の悲鳴が〈(ディス)〉となってこちらに、俺をトリガーとして発露しているだけ……うん、あれは悪い奴じゃない。ちょっとした可笑しさの影響がデカイだけなんだ。アレは悪くない。目的の言語化が無茶なだけで。


[それを人々は厄災とよんだ]

「いや邪神と言うべきだろ」

[ 謎 の こ だ わ り。到着、時間は7秒前っすねー]


 

 礫を握りしめ気分的な深呼吸を挟み、近未来なオブジェクトに炸裂。同時に爆発音が響き。


「俺、あんな兵装載せてない………」


 粘着爆弾により落ちるマンタを眺めるのだった。

早く脱せねば

この後、四種族は行く必要があるのだ……

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