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全天録  作者: AX-02
第二章 昼
127/261

少数精鋭の悲劇

「どうかね、敵の新兵は?」

「かなりの練度です。軽々しく殲滅されました」


 声が別々にする。されどそれは人と言い切れぬ状態……魂が消失した肉塊を、一つの意志が活動させているだけなのだから。


「まさか他の星から呼び付けるとはな」

「呼ばれるだけあって、最大の脅威となるのは目に見えておる」


 戦略会議じみた自問自答のような何か。理解出来ずともした覚えはある事、それの極限が続く。


「しかし火力機関は同程度です。必ず勝ち目はあるかと」

「ふっ、『今のところは』が抜けているぞ?」

「…………我々も成長すれば良いだけです」

「『出来れば』な…………無産可能機はあの時点にあったものしかないのだ」


 彼らは無限の兵団がある。無より産まれ完全に同一なそれ。しかし同時に時の止まりし兵団でもあった。『強者へ進む意志』の(ゼノム)とはコンセプト相性が悪く、いずれ駆逐されるのは理解している。


「【帰りたいなぁ……離れさせてくれよ……】」

______________________________________




『諸君、よくぞ集まってくれた』


 ブリーフィングが始まった。気を効かせ過ぎる事に定評のある《内対(ククラ)》がBGMを鳴らす。


『今作戦は』


 何故、北の海に相手拠点が丁度よく置いてあるのだろう。何故、拠点が円形に砲台を配置しているのだろう。何故、その砲台の威力が隕石破壊なのだろう。何故、砲台の自動防御システムは砲身の正面をカバーしてないのだろう。


『相手は恐らく無人の光線機を』


 そもそも人が人でない状態だったのを忘れていないか? 《内対》もそちらの結果と同じく[二週間前には死んだ身だ]と判定したぞ。今更、無機質が相手と言われても忌避する訳がない。むしろ有人を装っていた方が、受け付ける事に無理がある。


『この作戦は君達の手にかかっている。幸運を祈る』


 戦力が四機しかありませんね……一体どうする気なのでしょう。


「皆、大丈夫?」


 ストレスでの脳の出血を気にしたのか、シュアが声をかける。


「あれを使えば好きにしてよい。それだけ伝われば問題はないの」


 先の襲撃時に最もキルスコアを稼いだルシュフェルが、気だるそうにソファーを立つ。訓練教官(じょおう)をしている気がし、独占欲を煽られてしまう。


「そのうち機体ギリギリのトンネルを、くぐり抜ける事になるんだろうなぁ…………」


 サイフィがパイプ椅子で鬱な姿勢を見せる。逃げちゃ駄目なのが心労なのだろう。逃げたとして俺やルシュフェル、種族の神々が必要とあらば強制送還。


「まぁその時の先頭、ってかリーダー機はルシ義姉(ねえ)だからな」


 そして美味しい所を二番機のサイフィが持っていければ、全て完璧に収まる。〈人〉である彼が祭り上げられて、我々は陰の英雄となるのだ。


「早く行こ?」


 耳や尻尾をあざとく動かしながら、シュアが出発を要求する。同じ言葉なのに、紫な龍の装備に言われるのと雲泥の差である。




 空の旅は非常に遅い。降りて飛んだ方が明らかに速く、ゲーム化されるとするなら『イライラタイム』と称される事になる。

 サイフィは食事、シュアは居眠り、ルシュフェルに至っては自動操作に切り替えて外の空気を吸っている。


[こんな感じでいいか?]

(うん、お疲れー)


 俺は、自分のステータス画面の製作に勤しんでいた。名前、種族、職業、能力…と本当に基本的なものでしかないが、自分が一応は出来る事の羅列は必要な事なのだ。


 今の職業を決めるのが一番、時間をかけたものになる。〈神の犬〉〈星巡者〉〈操縦士〉etc…どれにするか非常に揉め〈星修者〉に落ち着いた。

 能力のランク設定も上限からやり直しであり、アルファベット式より被害範囲等でのランク分けにした。《内対》は裏で核ゲーのランク分けをすると、堂々と言い放ったので了承している。


(中々にえぐいな……もう星の破壊なんて当然……しかし最たる例のは)


 そしてついでに作った戦績表を見て、自身に恐怖してしまう。やらかし事もそうだが、一番の実力を示す戦いが記憶にない事で拍車がかかる。


ゴンゴン


 機体にノック音がなる。


『離れてて大丈夫なんですか?』

「墜ちれば造ればよい」

『まさか性能に飽きて新たに造らせようとしてない?』

「それはないぞ。余の心を疑うのか?」


 『そもそもあんた堕天使やん……』は押し殺し、軽く謝っておく。こうなれば構想をしておいて損はない。


『何か、静かですね~』


 サイフィが事象召喚のキーワードを放った。的確過ぎるフラグの蒔き方に感服してしまう。


『警告! アンノウン急速接近中!』


 そして回収の早さに納得する。よくよく見てみれば食事内容は、パインアップルとレタスに近いものだった。


 太い赤の光線が空を『斬った』。真空波が発生し機体が揺れる。


[強すぎる航空戦力はワイバーンとでも言うんだったか?]

(北の海から来たんだ、モルガンでいい……いや王立国教)


 頭のおかしさに思考回路が揺れる。戦闘機で斬撃効果を発生させるという、どうしても剣を捨てきれなかった剣士の様に思えた。


 閃光が振れる。制御と回避の両立で手がいっぱいで、反撃に出る暇がない。


『機体の解析を急ぐ!』


 本部よ早くしてくれ、でないとサイフィが堕ちる。

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