鉄帯
英雄となれる〈人〉を呼びつけた。ここは〈人間種〉の星であり人外で救星などあり得ない、少なくともメインは〈人〉がしたことにしなければ。
俺らが来てからの一次戦が終わり、少しの間が出来たので攻略準備をしている。
「ゼルー? どう使うの?」
恐らく見慣れない配置やレバーで、困惑しているのであろう。
「レバーとペダルが機体制御だ。レバーを傾けた方に機体は傾き、右のペダルで速度を変える。レバーの一番上のボタンは親指で押す直線爆撃、人差し指辺りの引き金は機銃……ようは〈岩弾〉だ」
「左の足のはー?」
「投下爆撃だな。右肘より後ろの方のスイッチを押せば、水中を進む爆弾となり」
兵装を羅列して行く。残りは、左の方の追尾ミサイルと属性レーザーの切り替えボタン、そして正面の脱出ボタンだ。
属性レーザーまで搭載してある機体は、少なかったが完全にいない訳ではない。という事で禁忌でもなさそうなので載せる。
脱出ボタンは気分であり狙い目でもある。一応の離脱意思だが、押してからは実質、炉心暴走状態へと切り替わり何かに当たれば、大熱風を引き起こすようにした。
「あれ? 足りないよね?」
シュアが指摘した通り、機体の数は一つ少ない。〈XAX-01〉はルシュフェルが〈XAX-02〉はサイフィが。現地にあった物を改造しただけの機体をシュア。
「あぁ。俺のはこいつだ」
そう言いながら一つの機体を出す。
「魚……水中用?」
「どのみち相手も水上、水中を使うだろうからな」
〈XAX-01〉は宙域戦機、〈XAX-02〉は土域戦機という枠組みである。ならば次は水域の機体を造ろうと始めた。
「〈XAX-03〉と名付けた」
本当に水のない空間では無能になる、青と白のカラーの機体。名前は……何か聞かないといけない気がしたからだ。
「サボるの?」
「そんな気はないよ。水辺での戦いになるまでは、シュアの機体の動力および接続部になっておくから」
ルシュフェル以外は『いや、格差………』と呆れていた。ルシュフェルは機体内部の大改修に興じて、気にも留めていない。
ブォンブォンブブ ウォンウォンギーギー
少しばかりのほっこりから、警報により一気に緊迫した空気へと変貌する。
『敵機接近、総員! 戦闘配備!!』
「「「イエッサ!!」」」
司令官の令に答えて機体に乗り込む。敵機が空気と同化するタイプのステルスでない限り、離陸前に打ち落とされる事はない。そして空気化も内なる管制塔が観察しているので、見落とす事はない。
[4~5機編隊が8セット。レーザーは2だな]
(電磁パルス系統はあるか?)
[……読めない。相手は無限沸きなんだ、自爆が基本になってもいいのは確かだ……]
それでも完全予測は辛そうにしている。情報の根元たる〈万象庫〉に自由アクセスして〈改変〉や〈確定〉をするようになるのは随分、先のようだ。
(まぁ読めなくてもいいさ、後出しでも勝てば良かろう)
[とりあえず、お前の期待値は修正が必要なのは分かった]
他人の評価が高いのはいけない事だった。卑屈の元凶は直る事はないのだろうか。
「飛ぶよ!」
シュアに言われてエンジンの出力を上げ、舗装された地から離れる。普通の戦争へと参加したのを実感し頭に諸々が過る。
(空の移動制覇を目指し造られた翼は、戦いの運命に翻弄される。運ぶべきは人であり火ではなかった。舞い降りし火の後に残りしは痕跡としての碑しかなく、維持の誠意を付随させた。負の後の正、負の中に正が見いだされ……)
[落ち着いて軍服のシュアを激写しようか?]
(写真か。正確な位置を示す一つの手段として、罪を積むのにも立証するにも使われるものだな。本来としては)
[………壊れたか……これはシュアに報告しなければ]
(壊れた存在が壊れたならそれは正常だ)
『ゼルは壊れてて? ね………?』
おねだりされては壊れるしかないのだろう。さてこの戦場に君臨するはどの英雄か。
ミサイルアラートが鳴った。左に円を書くが追尾式のものであるようだ。右に戻りつつ上に機体を上げ対地爆弾を落とす。轟音、爆発物同士の衝突だが、機体にダメージはない。
ほぼ垂直となったこれに、操縦席の真上から敵機が襲来する。普通であれば既に機銃で搭乗者は死んでいるが、俺に依る頑強さを発揮し先ほどと変わらない。
『付いてるでしょ?! 撃って!』
言っていない兵装の要求に応える。操縦席を囲うように配置した機銃を放ち、まず一機撃墜。
宙返り直後に真正面から近付かれたので、直線ミサイルを僅差で二発。回避行動中の右翼にヒットし相手は墜落した。
[チッ…品定めのようだな。地上部隊が居ねぇ]
《内対》が戦略に気付き舌を打った。撃墜されたりで帰ってこない部隊から、敵勢力の確認というところだろう。永久戦力ならではの使い勝手であり、敵将がウハウハしているのが目に見える。
『ここっ!』
シュアが何もない所に撃った。《内対》と共に嫌な予感をして、ドッグファイトに縺れ込む。
『逃すか! ……………えぇ…』
サイフィは戦車擬態で敵機を追い込んでいたのが、突如の爆発で引いていた。
諦めよ。天使は確率的にも、神に愛されているのだ。




