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全天録  作者: AX-02
第二章 昼
125/261

異才昇致

完走者が出る度に

他人が時間を消費するくらいの価値が

これにもあるんだなぁと思っている

「やっぱり変だよな?」

「そう……何かがおかしい」


 〈天烈〉は数日振りの仕事を終え、ギルド内で分かれて報告等を同時進行していた。

 しかし、その目は一人を注視している。


「今回の素材は……」


 メンバーであり〈天の眼〉リーダーのケイ。ほんの数日、会わなかっただけで彼の魔法が跳ね上がっていたからだ。


 今回の依頼は討伐であり、話が来るまでに四つのチームが返り討ちになっていた。対象は〈エルダーファング〉という〈魔王(ゼノ)大変革〉よりも前から居た、速いが脆い二段毛並みの存在。

 Bランク一人が準備していれば十分に倒せるはずの相手。にも関わらず失敗が続き、不審に思ったギルドが安定している最大手を出した。


「なにか……格を感じてしまいます」

「えぇ、我々が知る中でもかなり上位の強さでした」


 その最大手として〈天烈〉は入念な準備をしていた。多様な毒肉、殺意の落とし穴、誘導先に凍結魔法…と、それら全てを掻い潜り〈エルダーファング〉は立ち塞がった。

 特筆すべきは戦闘センス。四足の獣でありながらライの剣を受け流し続けたのだ。魔物ではなく人と思わされる程の洗練、無論、魔法にも対応しており。


「刃は通らないし治りも早い。当たる前に魔法は結界で弾けて」

「……よく、討伐できましたね」


 何が決め手になるのか、さっぱりな存在だった。ギルドの英雄がここまで弱音とも思えるものを、言わしめるその魔物。先の四つのチームの怠慢を素材取りは考えたが、続くケイの言葉で否定された。


「罠を切り倒した木で発動させ、序盤には結界はなく回避でした」


 実力を隠せる。それだけで、難度の機能停止が起きるくらいの厄介な相手。それを相手に失敗報告に来れたのだ、過分な頑張りでしかない。


「皆、色々使い果たしてボロボロになって、駄目だなぁと思った時。空を光が横切ったのです。そしてこう考えました『ゼノムらならどうだろうか』と、それからは」


 一方的な一対一が始まった。結界は甘いレンガ造りのように隙間が空けられ、受け流していた毛並みは焦げ、最後には。


「足を氷と岩の杭で留め〈真空断(エアロスラッシュ)〉で首を落としました」

「「……」」


 素材所や周囲は声が出せなかった。自分らの知る存在との隔絶が、沈黙という衝撃となって表れる。


「そこまでのお力を……一体、何時から」

「……彼の英雄、サイフィとの訓練後からかと」


 聞いていた全員が思った『それ絶対、異常なものだ』と。


「つまりは師匠が助けに来たってことでいいよな?」


 ライが話の先を行く。そう、彼らは魔力やアイテムを使い切ったが、道中も無事で帰還しているのだ。つまりそれを救ったのは。


「違う。あれは確実に輸送途中だ」

「どこも当ては……あぁゼノムか」

「そう、しかもその後にも空に光が流れた。時期でもないのに流れる星……何かが起きている」

_______________________________________



『こちらブロック5-1-2!至急、救援を!』

『了解。グリム48が向かう』

『くっ……リーン、離脱します!!』


 いきなり連れて来られて、諸々が飛び交う戦場に放り捨てられる。


 ただでさえ全てがうるさいのに、身を守るのが自分しかいない地獄っぷり。〈熾天使(セラフ)〉の鬼畜を体感しつつ、地に降り立つ。


 瞬間的に射撃が来る。音速のバックステップで難を逃れた。


(おい、てめぇだろゼノム!! 説明しやがれ)


 追撃の甘さと弾痕で『1』を描いた事で確信した俺は、ゼノムに〈念話(テレパス)〉で怒鳴りつける。


(説明……? 欲しけりゃくれてやる。敵将の首を取れ、全てはそこだ)

(何で、幕開けシーン?! 既に開戦済みだろ!)

(時間がないな……シュア、サイフィを加速させてくれ)

(ラジャ!)


 思考が頭おかしい速さに変化して行く。そして説明……ただ暈しの入れられた状態には違いない。


『ここは〈原初球(エデン)〉から出た、人間種の住む星の一つ。目の前にあるゼノム製でない現代兵器な形状のように、魔法と科学の融合がされた文明である。

 そしてほんの少し前に戦争状態に陥った。原因は、時代の変化を武力で黙らせたいある国の意思と、ゼノムが呼んだ意志が掛け合わさったから。

 だからサイフィ協力してくれ』


 俺が呼ばれた理由を飛び抜かしてある。これは察するしかないだろう、細かく言ってしまうと不都合だからだと。


ズドン


 質量弾かと思ったら違った〈XAX-02(ドン)〉がゼノムの真上に投下された音だった。


(さぁ、その雨で戦場を錆び付かせろ)


 なんという理不尽なのだろうか。いくら異世界に順応したからと言って、いきなりの戦争参加は人として捨てていなければ出来ない事を。


(俺は二束三文の為にやるような……!)

(無限沸きを潰せるのが二人だけだとしても?)

(……………そう言う事か……)


 相手は人はおろか生命体としての、何かさえ欠落している存在のようだ。不老不死がありふれた世界かもしれないが、何かが違う。不老不死にはあって、無限沸きの何かにはないモノ。


(理解はするな。多分、引き摺り込まれる)


 そう言えるゼノムは理解しているのではないか。そう思いながら〈XAX-02〉を駆る。

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