異才昇致
完走者が出る度に
他人が時間を消費するくらいの価値が
これにもあるんだなぁと思っている
「やっぱり変だよな?」
「そう……何かがおかしい」
〈天烈〉は数日振りの仕事を終え、ギルド内で分かれて報告等を同時進行していた。
しかし、その目は一人を注視している。
「今回の素材は……」
メンバーであり〈天の眼〉リーダーのケイ。ほんの数日、会わなかっただけで彼の魔法が跳ね上がっていたからだ。
今回の依頼は討伐であり、話が来るまでに四つのチームが返り討ちになっていた。対象は〈エルダーファング〉という〈魔王大変革〉よりも前から居た、速いが脆い二段毛並みの存在。
Bランク一人が準備していれば十分に倒せるはずの相手。にも関わらず失敗が続き、不審に思ったギルドが安定している最大手を出した。
「なにか……格を感じてしまいます」
「えぇ、我々が知る中でもかなり上位の強さでした」
その最大手として〈天烈〉は入念な準備をしていた。多様な毒肉、殺意の落とし穴、誘導先に凍結魔法…と、それら全てを掻い潜り〈エルダーファング〉は立ち塞がった。
特筆すべきは戦闘センス。四足の獣でありながらライの剣を受け流し続けたのだ。魔物ではなく人と思わされる程の洗練、無論、魔法にも対応しており。
「刃は通らないし治りも早い。当たる前に魔法は結界で弾けて」
「……よく、討伐できましたね」
何が決め手になるのか、さっぱりな存在だった。ギルドの英雄がここまで弱音とも思えるものを、言わしめるその魔物。先の四つのチームの怠慢を素材取りは考えたが、続くケイの言葉で否定された。
「罠を切り倒した木で発動させ、序盤には結界はなく回避でした」
実力を隠せる。それだけで、難度の機能停止が起きるくらいの厄介な相手。それを相手に失敗報告に来れたのだ、過分な頑張りでしかない。
「皆、色々使い果たしてボロボロになって、駄目だなぁと思った時。空を光が横切ったのです。そしてこう考えました『ゼノムらならどうだろうか』と、それからは」
一方的な一対一が始まった。結界は甘いレンガ造りのように隙間が空けられ、受け流していた毛並みは焦げ、最後には。
「足を氷と岩の杭で留め〈真空断〉で首を落としました」
「「……」」
素材所や周囲は声が出せなかった。自分らの知る存在との隔絶が、沈黙という衝撃となって表れる。
「そこまでのお力を……一体、何時から」
「……彼の英雄、サイフィとの訓練後からかと」
聞いていた全員が思った『それ絶対、異常なものだ』と。
「つまりは師匠が助けに来たってことでいいよな?」
ライが話の先を行く。そう、彼らは魔力やアイテムを使い切ったが、道中も無事で帰還しているのだ。つまりそれを救ったのは。
「違う。あれは確実に輸送途中だ」
「どこも当ては……あぁゼノムか」
「そう、しかもその後にも空に光が流れた。時期でもないのに流れる星……何かが起きている」
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『こちらブロック5-1-2!至急、救援を!』
『了解。グリム48が向かう』
『くっ……リーン、離脱します!!』
いきなり連れて来られて、諸々が飛び交う戦場に放り捨てられる。
ただでさえ全てがうるさいのに、身を守るのが自分しかいない地獄っぷり。〈熾天使〉の鬼畜を体感しつつ、地に降り立つ。
瞬間的に射撃が来る。音速のバックステップで難を逃れた。
(おい、てめぇだろゼノム!! 説明しやがれ)
追撃の甘さと弾痕で『1』を描いた事で確信した俺は、ゼノムに〈念話〉で怒鳴りつける。
(説明……? 欲しけりゃくれてやる。敵将の首を取れ、全てはそこだ)
(何で、幕開けシーン?! 既に開戦済みだろ!)
(時間がないな……シュア、サイフィを加速させてくれ)
(ラジャ!)
思考が頭おかしい速さに変化して行く。そして説明……ただ暈しの入れられた状態には違いない。
『ここは〈原初球〉から出た、人間種の住む星の一つ。目の前にあるゼノム製でない現代兵器な形状のように、魔法と科学の融合がされた文明である。
そしてほんの少し前に戦争状態に陥った。原因は、時代の変化を武力で黙らせたいある国の意思と、ゼノムが呼んだ意志が掛け合わさったから。
だからサイフィ協力してくれ』
俺が呼ばれた理由を飛び抜かしてある。これは察するしかないだろう、細かく言ってしまうと不都合だからだと。
ズドン
質量弾かと思ったら違った〈XAX-02〉がゼノムの真上に投下された音だった。
(さぁ、その雨で戦場を錆び付かせろ)
なんという理不尽なのだろうか。いくら異世界に順応したからと言って、いきなりの戦争参加は人として捨てていなければ出来ない事を。
(俺は二束三文の為にやるような……!)
(無限沸きを潰せるのが二人だけだとしても?)
(……………そう言う事か……)
相手は人はおろか生命体としての、何かさえ欠落している存在のようだ。不老不死がありふれた世界かもしれないが、何かが違う。不老不死にはあって、無限沸きの何かにはないモノ。
(理解はするな。多分、引き摺り込まれる)
そう言えるゼノムは理解しているのではないか。そう思いながら〈XAX-02〉を駆る。




