表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全天録  作者: AX-02
第二章 昼
124/261

無ギュウ

 神木が焼かれゆく。もはや楽しもうとしている自分に憎悪を向けた。


 星の緑を守ろうとしていたのを完全に上から否定され、周囲からすれば狂気に駆られたとしか見えないだろう。

 仲間は精神的に手遅れだ。『これが俺らの選択……大地よ暫しの別れとなる』と言い始めた。ゼノム……どう足掻いても〈魔王(ゼノ)〉の要件を満たす男、それの言う通りに動いてるだけなのだが。


 〈熾天使(セラフ)〉から与えられた火は豪気に森を焼く。幼き日に切り傷を付けられた葉、初めての狩りの日の尖った枝、いつもの待ち構えに使った木陰……全てが灰塵に帰している。喪失感しか沸かずにいるのだが、どうやら周囲は違う。


 完全に呑まれたと言っていい。喪失の先に快を見出だしている。確かにゼノムの言う通りに我々が火を使った所から、魔物は生えなくなっていた。


「この調子だ! 焼き尽くすぞ!!」

「「「おぅ!!!」」」


 〈森精人(エルフ)〉が森を躊躇わず焼き始める。先程までと別人と言ってよい変化だ。自分があのようにと恐怖が背筋を伝う。


 火による蹂躙、ゼノムはそれに許容がない。本当に全てを黒や白に変える気だ。


「種一つ残すな! 星を侵食すると思え!!」


 であれば、呼び込み元凶に再度なる前に死んでくれないかと思うのだが。

_______________________________________


 粗方燃えた頃に、場を抜け出し大きい核を探しに出掛けた。こうすれば間違いなく出て来ると思ったからだ。分体が潰されて本体に還元、若しくは本体が表に現れるだろうと。


 無論、俺もミカエルの炎は貰ってある。火の名は〈破邪之焔(アンタレス)〉だったか………なんだろうか不遇枠のような気がする。


 空を行く。少し遅れてルシュフェルがついて来ている。シュアよりも実戦での接触が多い気がした。


「此方で合っているのか?」


 彼女は強い相手と戦いたいのだろう。上が故の虚しさを埋める為に。しかし熱くなることはほぼなく直ぐに冷める。反逆するのはこう言うタイプである、と分かりやすい人だ。


「さてな。俺は気配に進むだけだ」


 確信は持てないが呼ばれている。そう思って進まなければ。


 そうこうしている内に孤島に到着した。


「赤いですね……禁断の果実と言ったところでしょうか」

「そうよのぅ」


 5mくらいの大きさの真っ赤なものが落ちていた。おぞましさは微塵もない。


「お先にどうぞ」

「うむ」


 戦闘的な欲求不満のルシュフェルに先手を打たせる。何が飛び出すのか非常に楽しみだ。


 ルシュフェルの六対翼が輝きを放ち広げた。十二枚の羽が抜け彼女の手に白黒分けて集められ、魔法の球体を成す。その二つの球は果実のようなものを挟むように浮遊している。

 ゆったりと……されど静か過ぎる動きで二つの球は互いを求め、その間を埋めて行く。


[ルシュフェルの発汗、動悸を確認。やべぇもんぱなすぞ……]


 《内対(ククラ)》がビビる程の圧倒的火力のようだ。余波で人類でも滅亡するのであろうか。その恐怖の時は訪れた。

 光と闇の形質が真正面よりぶつかり合う、正負の極限の衝突にその中央で引き起こされるのは。


「〈無積対(クロスオーバーフロー)〉」


 そのど真ん中の無のようであった。そして無の引き起こすことは真空や気圧のものと同じく、周囲がそこに引っ張られ、世界がほんの少しの時だけ無の一点を中心に回る。


 その中心に虹色の種が鎮座。何だその耐久、対消滅の波に呑まれてなお健在とかどうなってやがる。


[魔力回路を密にして殴るべし。じゃねぇと多分、空間消去紛いで腕落ちる]


 さらりと高等技能での対処を求められる。どこぞで見た『骨より血管』理論の実践だ。しかも《内対》は駄目なのか補助をしようとしてくれない。制限の仕様を突破するにはまだ早いか。


 手を開き種を潰しに跳んだ。無の領域に接触、存在の否定をされるかのような重圧が右腕にかかる。夢の中でのダッシュだとかとは比較にならない、意思だけで押しきれる気がしないからだ。

 虚無、虚脱、虚空、その全てがこの右に集約されている。


【……た】

【……で】


 ククラでも、ヴェラドら上位神でもなさそうな意識。これは……俺の内からか?


 気付けば種を握っていた。ガッチガチかと思いきや、むしろ柔らかい。これは片手では無理だと左手を出す。集中力の微量の乱れで右の小指が消えた。恐らく無の領域に入ったままだと回復は不可能だろう。


 両手で種を包み込み漏れなく平で潰す。


【あぁ! 突破された!!】

【任せろ、これ以上はやらせない】

【なおトドメが変わるだけのもよぉぉぉぉぉぉぉ!!】


 声や言語の表現で良いのか、非常に分からない意味が溢れる。一体、この世界は何に振り回されているのだろう。

 

 こういう訳が分からないものに振り回されるのは最も嫌いだ。単なる知識不足とか経験不足ではない。何せ相手は観測不能なのだから。先も読めなければ行動したかさえも分からず、例え行動したとて意味を考えれば途端に分からなくなる。

 無意味に意味を与えるというこじつけ、それでは本質と言える部分の捏造をせざるをえない。真実や事実とも言える部分の捏造をする。

 それは正しく悪ではないだろうか。


[汚名程度は受け入れて]

(凄く……断りたいです……)

[ここに美少女が三人おるじゃろ]

(全員いたしたい。汚名がなんぼじゃき)


 清名と女性観察を天秤にかけられ、余裕で女性観察をとる変態でしかなかった。悪ではない。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ