却火を放て(懇願)
ガブリエルに伝令を頼み、夜戦の準備へと取り掛かる。
夜戦と言っても基本的に動くのは俺らで〈森精人〉達は死なないように、森への恐怖を染み着かせるのだ。
「本当にこれでいいのか?」
〈森精人〉が不安ながらに聞いてくる。正確さ0のうちから作業を始める辛さに、耐え切れなかったのだろう。
「分からないさ……だからやる」
嫌だろうが実験するしかない、そんな状況なのだから諦めてくれ。
「ゼル、素材が足りない」
「何人分?」
「二人」
シュアの加護を指輪等に付与しようとしたが、人数分の素材がない事が発覚した。残る同等の素材は彼女ら天使の羽ぐらいで、量産不可能なものである。
[天使を虐めたくないもな]
天罰を目の当たりにする気はない。ましてや、ここで失敗する訳にも行かない。
「これなら代用出来るだろう」
「……いつの間に集めたの?」
「暇さえあれば」
前世界で言えば、髪の毛やコップの唾液を収集されていた。そんな事実が発覚したのである。
倒した何かの部位を使うのが日常的なこの世界では、格のある存在は自然と取れた切れ端でも優良。そうしなければ、いつか自分から沸く分では足りなくなった時に、命を守るのも敵を討ち破るのも出来なくなる。
すべきことと倫理を天秤に乗せるという悪の諸行に。
「私が管理するから全部出して」
自分のものは自分でみる。という基本的な事を持ち出して来た。感情で言えば絶対に使わせたくないが、自身の格を思い出しての折衷案である。
言う通りに羽を渡す。
「犬毛も」
抜け目ない請求。服作りは終了のようである。
シュアに素材を渡すと直ぐに、付与器を完成させた。身体回復、精神保養、緊急脱出の三効果のアイテムである。
これを全員が装着していないと無茶な事だ。彼らに恐怖を刷り込ませるには、必要不可欠。
汚い黄昏が終わり闇へと落ちる。襲撃を受け止めながら、使いに出したガブリエルの帰りを待った。
「いやぁぁぁあ!!」
「ちっ! くそぉ」
「何がしたいんだ?! 答えろ!!! なぁ!!」
その間に何度〈森精人〉に憎悪の目を向けられたか。必要な事とはいえ、やはり心苦しいものである。
ボロボロにして、微量の回復で止めて。
「そもそも乗っ取られるって、今回の悪と形質が似ている木……いや星だったからじゃないか?」
とんでもない煽りをかます。場合によらずとも存在否定、善性な言葉なのだから。
「……あぁ…滅びる事は確実なんだな……」
一人呑まれるが好都合。後は一押しからの連鎖を期待しよう。
「そうだな、真火で咲かせる位にな」
「この星を捨て、新な星へ行けと言いたいの?」
本質を突かれたので、悪びれもせずに話を続ける。
「その通りだ。魔法の植生では格式が落ちるものを、自然につくらせる。そうやって共存してきた、しかし今回の事件で木々や土地は死に絶え、残るは謎の残る目的で現れる植物」
そこまで言っているとガブリエルが到着した。
「つまらん用は赦さんぞ、ゼノ」
ミカエルを連れて来させたのである。ぴったりの役割と属性、それをするためだけに。
「つまらなくはない、神の造りし星を守る為に必要な事だ」
「そもそも貴様が呼んだも同然なのだろう?」
「だから尻拭いをしているじゃないか」
嫌われているようだ。元相棒に怨敵級の姉を入れた張本人に向ける目として、正しさしかない。
「で、何をするのだ」
「〈森精人〉に火を与えて欲しい。彼らで焼き払い、核を俺が叩き死せる星となったここを出て」
「それで守れただと?」
火が噴き出す。
説明の途中なんだが、まだ結果を出していないし、合ってない。
「数百の月日が流れて、また過去のような生い茂る星へと戻る。その時には〈森精人〉だけでなく〈原初球〉からの人々も」
「そんな都合の良い話が」
「自分の持つ力が何か分かっているか? 神の火だぞ、どれだけの敵を都合良く葬れると思っている」
都合の良さは常時相対。死せる星に一旦でもなるなら敗北とでも思っているのだろう。内心で同意するが声に出す事はない。
「俺に問う暇があるなら〈森精人〉達に付与をした方がいい。星が戻る時間が無駄に長くなるからな」
「百年単位の計画に何を言ってる」
「だからこそだ。ある位置を通るはずだった蝶を、捕まえるのは大改変に分類されるだろう」
逆に、すぐ動いてしまっては駄目な時もある。時間制限となりうる要素が少ない今では、反論になる事はないが。
「彼方のルールに添うのは面倒な事よのう」
「喋るな堕ちたる者。汝が意と同一である事を知らせるな」
「余も同一と知りとうなかったぞ…………」
これはネットで言えば『結局、同じ事で草。気付かされて、画面の向こう顔真っ赤で確定だお』の流れである。違いがあるとすれば、実際に顔を赤くしてマナーモードな相手を見ることが出来る点か。
「……赦さん……赦さんぞ……」
「お お、落ち着いてミカ姉?」
絞り出した言葉が呪詛のよう、前のように堕ちかけたりはしないが黒いのは確かだ。シュアが翼を出しての、本気回復行使で宥めにかかった。
[『向こう』の意志は特殊だな。こんな画さえも録らせるなんて]
元天使長が元天使に翻弄されて顔を赤らめ、微量に泣いてるのを癒天使がよしよしをする画。宗教的には、ボツの烙印しか押されないだろう。いや……漫画となれば話が変わる。
〈森精人〉らが静かでありすぎた。天使の集合がそれだけ衝撃だったか。
書いてる途中に違反言われたぜ。話一つの消去で問題無しになったぜ。
つまりはそれ以外はセーフだったのか()




