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全天録  作者: AX-02
第二章 昼
120/261

久しく且つ、端的

歯が痛くてな………

 頭がクエスチョンにまみれた素材受け取り。用は済んだのでさっさと退場する。

 周囲の話声や貼り出された依頼からして深刻なものはないので、俺が来たからとギルドマスターが現れることはないだろう。

 深刻ではないと言うことは〈魔王(ゼノ)〉化現象の終息か、冒険者の向上か。どちらにせよ俺の仕事が減るのは良いことだ。

 

 どちらの要素もあってか、帰路を邪魔する存在がいないのは大きい。俺らの実力を察知して空け、頼むような事はないと自由に行動させてくれる。

 『外』からの影響があったとしても、ちょい悪な感じで終わっているのであれば、無視でいい。あれは相応の器じゃないと凶悪さなんて、分からないからな。


「んじゃ次はシュアの親に会うぞ」


 ギルドを出ながら二人に予定を話す。街の探索は既に行ったらしいので、見回る場所はない。更に言えば、進んでいる天界文明を理解しているのに、どうしてその礎に興味を持てようか。という感覚に近いだろう。


 〈転移〉陣に入り、全くどのタイプかもつかめていない現状に、苦い顔が出る。

 空気や地面、あるいは龍脈と言ったものとの〈同化〉系、門を通り亜空間を行く〈転移門〉系、まるでゲームのように存在可能な場を弄ることで移動する〈座標〉系。大体の〈転移〉と呼ばれるものは、基本この内のどれかである。が、自身が何処を通っているのか、どのような変化が起きているのかを認識するより前に、目的地に到着してしまう。

 

 シュアによる発動だから〈水〉や〈時〉の属性に依るものとは思うが、強い認識阻害で見えていないのか。


[調味料の確保へ急げ。お話の時間を終えたら直ぐにでも発つぞ]


 諦めてウチの情報科が味の探求者になっている。それほどの強固なプロテクトだと察した。


「俺は少し買い物に行くが、そちらは?」

「挟パン!」

「城へ一足先に行くとしよう」


 犬となったシュアは前に行った店へ駆け、ルシュフェルは王城へと飛翔する。


「まぁ、そうなるわな」


 悪意を伝達させたのか、ルシュフェルに飛び道具が殺到。せせら笑いながら間を縫う堕天使。鳥系の騎士団が出てきて空中剣戟が閃く。

 おい、ショッピングの邪魔するなよ。悪魔の祖に言っても無駄だろうが、愚痴(じゅそ)をはく。


 結果として買えはしたが、土下座スライドを散々にかましたのを忘れられない日となった。




「はい!二人とも!」


 ルシュフェルのやらかしもあって、すぐさまの面会と行かず、外で待たされる事になった。きゃわわなシュアより、完全にハンバーガーと化したサンド系パンを貰う。味の再現と独創が混ざり新たな衝撃を舌へと与える。

 系統で言えば甘辛だが何かが違う。言うならばコク……いや、ソースかバンズに魔力でも練ったなこれ。


[ふぃー。編集、疲れた]


 思った通りにモザイク編集を《内対(ククラ)》はしていた。技術のある男子中学生と同等の25才に一瞬、終焉を感じたが、よく考えれば元から盗み撮りを行う人だったので差はなかった。変態発想と犯罪発想は厳密に言えば違うだろうが両方、非常識の枠である。


 ルシュフェルの口端に着いたソースを、シュアが指で取り舐めるのを目撃。周囲にいた者達とほぼ同時に体の支えが抜けた。


「「?」」


 当事者は原因が分からないようだ。俺らにとってはそれがトドメなんだが。


「……てぇてぇ…」

「新天地……」

「次回作は決まった………帰ったらあれ燃やすか……」


 なんて破壊力なのだろうか、語の無駄を省かせ、一つの名作を世から消すとは。


 その後も幾度かの展開にキュンキュンしてたら、シュアが膝に乗りキュフンキュフン。ルシュフェルがデフォルメ形態で、肩に手を置き耳へクスクス。俺が余計な事をしかける度におっさんのゴホゴホ。そんな状態にヒィヒィし始めた頃。


「お待たせしました」


 いつぞやの狼頭さんが、屋根のない馬車で迎えに来ていた。


「やぁ、強くなったかい?」

「……少なくとも、出会った瞬間の貴方様になら勝てます」

「それは心強い」


 恐らく先のルシュフェルの時にも出撃していただろう。目線が俺の方ではない。

 そして現在の実力が当時の俺に勝てるって、そんな廃スピードになるとか凄まじい進化だ。本当か、星回りを終えたら、制御をガッチガチにして闘技場か訓練場で確かめよう。


 薄々、分かっていたが帰省パレードが開かれている。垂れ幕、花吹雪、演奏団、観衆、兵隊……。短時間でこれだけ集める事が出来るのは、素晴らしい。

 兵士は平均的にルシュフェルに畏れをなしているが、シュアの喜色で中和され真面目な顔に戻る。

 

 あぁくそうっ!! その尻尾で遊びたい!! 耳もピョコピョコさせやがって、ハムハムすんぞごらぁ!! と公衆前の上がりは、城の大扉が閉まるまで続いた。シュアが愛らしいのは息子に悪い。




「…………では私達はどうすればいい?」


 レクスだけかと思ったら、その他の親族も勢揃いであった。今は正体による衝撃で、レクスだけ動いているが。


「こんな風に翼があればラファエルとして。なければシュアとして接して?」


 偉大なる癒しに触れたリラックスからか、全員ゆったりとした頷きしかしていない。おじいちゃんなウサギなんて幽明の境に誘われている。


 魂を戻したり扱い下手による喧嘩なりを宥めたりの後、身内だけの食事会となった。


 豪華絢爛に輝く盛り付け。量にさえ気を向けなければ、極上を感じきることに終われていただろう。


 咀嚼音により野生へと帰った気になる。恥は食欲でねじ伏せられ、マナーはなくただ食う場としての食事。機密の会話をする必要のない空間は好きだが、王がこの有り様だと……マナーが出回り過ぎた前世界が悪いか。


「ん~~!!」


 それでも画になれば良い。シュアの満足な顔には、食べ方なんて不問なのだから。

 ルシュフェルは真の食事へ、始まるや直ぐ部屋を出ている。窓枠を横切る兵士は気のせい。もしも本当だったとして、堕天使に師事されているのだから幸福であるはず。


[この画像どうですかね]

(シュールというレスが14以上は来る)


 鎧が壊れ下着も風に脱がされかけの兵士の手前で、王族は食事。誰が初見で『この兵士の原因は王様達じゃない』と言えるだろうか。

 紅茶を飲みながら考え続けるのであった。

なお星回り終了後、間髪入れず落としますので

狼頭との決闘はございません

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