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全天録  作者: AX-02
第二章 昼
118/261

重いは軽く発散するに限る

「仕事内容は単純。そいつにやったように剥がしまくれ」


 いとも容易く言っているが、これは対象がケイだったから楽に終わっただけだ。宇宙(そと)に出れば恒星サイズの化け物や、その群れに遭遇する事だってあり得るのだから。


「大人しく剥がれる存在に憑依してます?」

「大体はな」


 極少数がとんでもないらしい。魔力量も質量も数値で表すなら、天文学とかでしか使われない数になる気がした。


「因みにそちらからの人員は?」

「足として11人まで用意出来るぞ」


 非常時に非常な事をやって下さるようだ。

 一応お前の下の宇宙だろ。なに俺に投げてんだよ、原因は俺みたいだけど。


「シュアの能力制限は?」

「規約にある通りだ」

[範囲限定時止め(数秒)、治療外時戻し・スキップ不可、加速は個人に限る]


 怪我の心配は無くなったが、切り札ではない事が確定してしまった。この調子だとルシュフェルにも。


「もしもの時には」

「あぁ」


 信頼の短文。やはり実力が相当上……あの時の俺で圧せたのは何だったのか? もしかしての俺も外部干渉を……。


「〈干渉結果〉ってタイトルの本に覚えは?」

「……これだ」


 ヴェラドが魔法陣から一冊の本を取り出す。そこそこにありがちな神話としか思っていなかったが、もう一度は読むべきだと思ったからだ。


 鍵となるのは、神々の生まれ第三期【三創神】の一柱であろう。権能と見紛う外れた力、原初存在である【有】との仲の良さ、こいつの一言で開戦したとみて間違いないその言葉。有からの伝聞をドストレートに『癒の次の癒し系は誰だっけ?』と集まりで言ったのだ。

 一番は言わずも分かっていたものに、二番を気にし始めさせた純朴な諸悪の根源。更に『お前の理論値(さいのうのげんかい)はまだ先だ(適当)』と人に創られた影響を真に受けたかのような激励を、【有】に送っている。


「この本は誰が作った訳でもないんだよな?」

「そうだね~いつの間にか、あの棚の中に鎮座~」 

「更には出た瞬間さえ記録されていない。訳の分からないものだ」


 神々でさえ読めぬ存在たる本。俺にもさっぱりで、シュアやルシュフェルが読んでも。


「どうしてこう話は重なるものやら」

「不思議だね、ゼル」


 感想しか返って来ない。自分と経歴の一致が多い書物に考察は不要、想定だけで終わるからだ。


「また暫くはこの星に帰る事はない。やり忘れはないか?」


 一応、死地に送るのだから当然の配慮であろう。

 まずはシュアとイチャイチャは確定として、冒険者ギルドへの顔出し、レクスへの娘の正体報告。後はサイフィに〈原初球(エデン)〉の事を託せば終わりだな。所要時間は11時間と40秒程度か。


「あるな。おおよそ11時間は欲しい」

「……大丈夫そうだな。行って来い」


 お許しを貰い〈グーバス王国〉へシュアと二人で向かう。ルシュフェルは神々との会談、サイフィ達は降臨地としての今後の相談を始めたので、都合良く二人だ。


 直接行くのも気が引けるので、近場の小川へ〈水伝転移(ジャンプウォーター)〉で出る。いつもの込み様だ。


「あっ、ゼノム様。こちらへどうぞ」


 検問待ちをしていたら別枠に呼ばれた。多分、貴族だとかの為のルートだろう。この場合の待たされで気分を害することはないのだが、早く緊張から脱したいのだろうか。


「本日はどのようなご用で?」

「嫁と遊んだ後にギルドへ顔出しだ」

「そうですか、最近は館やギルド付近での暴漢が多いので、気を付けて下さい」


 うっかりトドメを刺さないように気を付けます。そんな気で最短ルートを通って、裏路地と言える場にくれば。


「フヒッ」

「キェェァ」


 非常に軽微な影響を受けている奴らであった。当人にも無自覚で、神々すら見逃している可能性がある。【友人】を使うのはルシュフェル戦の一回ではないので、じんわりとこの星に広がっているのだろう。


「あぁ……〈フェリオス〉の方は無事かな……」


 一撃で沈めながらシュアの故郷を気にする。〈キテル〉が吸収したとは言え、漏れが絶対にないとは言えない。


「感じないから大丈夫。事件だってそこまで深刻じゃないよ」


 回復をかけながらシュアが、心配は無用と慰める。まぁ俺が対処出来るレベルだから、その通りとでも思っておこう。


「でもこの臭いは深刻……」


 鼻の良いシュアには、この空間は堪えるのだろう。雌雄の交じりの匂い、興奮効果のある何かの匂い、それらの匂いを紛らわす何かの匂い。甘い溝と言っても過言ではない臭いだ。


 彼女の握る手が固くなる。解放してくれていないので何を考えているのか、俺には分からない。生理現象か決意の表れか。いや、天使(かのじょ)の白が白濁に変わるのだから恐怖を感じているのか。

 そう思えば、肩の震えは俺への恐怖感のような気がしてくる。まぁ、こんな得体の知れない男が更に分からない現象を引き寄せるのであれば、仕方のない事だろう。

 もう彼女は無知なお姫様ではなく、偉大なる〈熾天使(セラフ)〉なのだ。例え少女を装おうともその内面は、考えてはいけない歳月が流れている。俺に例え前世があろうとも、その経験の差は歴然。実力としても時の力を使いまくれば俺より遥かに強い。友人の思考をする前に殺せるだろう。首輪と紋章なんてやろうと思えば永久に消せる。


「変な事、考えてたでしょ?」


 シュアが足を止めて目を合わせに来る。自然と俺は目を逸らした。

 それを見てシュアは耳や尾を下げて、悲しげな鳴き声を発する。あぁ、またか。まただ。


[めんどくさいな、さっさと〈色欲(ラスト)〉に溺れろよ]


 動く気配のない俺の体を《内対(ククラ)》が操り、シュアを姫抱きにして進む。


(済まない……俺はやはり……不細工のようだ)

[確かにお前には、細工は不向きだな]


 あらやだ、このイケメン。ポジティブ思考万歳だわ。


[さぁ細工なしでストレートに!! あ、でも前戯は忘れるなよ]

「忘れちゃ駄目だよ?」


 くっ、俺の扱い方を分かっていやがる。シュアの囁きと《内対》のノリについて行けない訳がないのだ。


 


 部屋を取り、勝手ながらシャワー室を置く。湯けむりの立つシュアを眼福に、俺も洗いに行く。体をさっぱりすれば、心もそれなりに整うものだった。


『ん……ふぁ……姉様……』

「[……]」


 既に始まってさえいなければ。   

Q 何でシュア堕ちないの?


A 癒されるから

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