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全天録  作者: AX-02
第二章 昼
117/261

因果

一時間で読み終われる内容なのか……ライトだからいいや

「ウゴゴゴ……」


 サイフィからの連絡により〈原初球(エデン)〉に戻った。目にしたのは紫の靄を垂れ流す、赤目のケイだ。何かに乗っ取られたとしか言いようがないだろう。


 彼の周囲の植物は枯れ、岩も崩れて砂になり易くなっている。近付けるのも一握りな上で、無被弾が前提のような気しかしない。


「GROA!!」


 ケイが跳ぶ。全員、余裕を持ち見切って散開。ルシュフェルに至っては、狙われていない事により優雅に歩む。

 俺へと向かって来たので魔力の波動を叩き付ける。無防備に受けてケイは転げた。


「何があった、サイフィ」

「堕天使からお前らが造った訓練場を貰って、訓練中に呻き出して、あんな姿になった。全員避難は済んでいるが……」


 訓練場と言うのは〈(クロック)(フィードバック)(スペース)〉の事だろう。

 少年心で聖典と化した作品……その後の時間係能力や場を出すことが可能な作品でよくある、主人公に都合の良いように時が進む訓練場。場内で何年経っても、出れば数分の時しか経過していない。そんな場を目指して造った物だ。

 時属性は使いすぎるとヴェラドからの真面目な制裁が来たり、一回の使用毎に俺とシュアが全力で補充する必要があったりで、この段階で断念し、危険だからルシュフェルに渡していたが……まさかこんな事件になろうとは。


 ケイの視線は、ずっと俺に向いている。何の怨みがあるのかさっぱり分からない。確かに、先に進んでしまっているが、それは周囲から抜けてAランカーになっている彼も同じである。突け込める場所がないのに、乗っ取れるという事は相当の腕前だ。


[あの力は凶悪だ。回避だけ考えてくれ]


 解析不能だったか……まぁ〈万象庫(アカシックレコード)〉に接続してないので、仕方のない事だろう。彼女は情報思念体のようになったプロなだけで、世界法則を担う存在ではないのだから。


「OOOOOOO!!!」

「被弾者は蟲毒じゃあ!!」


 と檄を飛ばすも相手の狙いは俺。遠距離攻撃があって、誰かを確実な囮に出来るのなら、近付く必要は皆無である。言い出しっぺが一番ペナルティを受けるという、懐かしい状況となった。


「〈黄金之野(ゴールデンベルト)〉」

「〈(ソロ)照細線(アマテラス)〉!」

「〈凍凝道(ダイヤモンドダスト)〉」


 全員、ケイへの気遣いなくヘッドショットを決めに行く。ついでにルシュフェルは辺りを金へ変換し、それをシュアが凍てつかせる。

 靄に阻まれ、ルシュフェルとシュアの攻撃は通らなかったが、サイフィの光線は靄を貫通し当たった。

 頭に穴が空いていないので一安心である。


「UGAGAGAGAG!?」


 衝撃は吸収出来なかったのか、頭を押さえてケイは転がる。凍った金が腐食される様を見て、被害範囲の拡大防止の為に〈斥力壁(アンチウォール)〉を進行方向に置いた。

 予想外の粘着力を発揮し〈斥力壁〉を登る。リング状に形を変え、三周したところで止まった。


「「〈鎖天牢(ヘルズチェイン)〉」」


 瞬間的に青白い鎖がケイを縛り上げる。恐らく悪魔の捕縛に使われる聖鎖であろう、釘も刺さなきゃいけないな。


「〈(ネイル)(エレナ)〉」


 天使の手の代わりの固定。のつもりが何故か本数が多くなっており、ルシュフェルがケイの体を低空で十字にしていく。見事な念力的操作だ。


「………んー……」


 足がどっちが上だったかを悩んでいるようだ。拘るなぁ。


「別々にしようよ」

「そうだな………」


 シュアの提案通りに足を平足に固定し、椅子を出して休憩を始める。まだ終わっていない内に抜けられるのは、信用されている証拠。無言のエールとでも受け取ろう。


[そうじゃなきゃ(ニート)だもんな]


 一時期の俺と行動が似るという最大の汚名になる。いや非現実な美女が、駄目であれば貢ぐ存在も現れるか。流石は堕天使、どっちに転ぼうと自分に利益が来るようになるとは。


「抜け出す前に終わるかなー」


 じわじわと拘束からケイが脱しようとしている。光の鎖では足りなかったようだ。シュアが時の牢獄でもやればいいのだが、俺なら間に合うと信じてか動かない。


 身体情報の為にケイの体へ〈分身体〉を流し込む。普通に激しい運動後の人体のようで、不思議な点はなかった。目でさえ異常なしなのか。

 精神や魂の状態は、ごちゃごちゃしている。一体、誰の意思が入り込んだのだろうか。


(ゼノム、席の追加と茶と菓子を出せ)


 ルシュフェルからの注文に応えつつ、原因を究明する。血腫や結石であればいいのだが。


[完全に座標指定タイプ。しかもこの力は異質過ぎる]

「【友人(じゃしん)】の時と同系統なのか」


 酷いものだった。蝕む管も線もなく、ピンポイントでケイへと送られる力。それは友人を基とした力で、間違いなくトリガーは俺と判明した。


(外からが多数とな)

(そ~~完全対応が出来なくて~ゼノムを巡らせようと)

(不完全だが行動不可に出来るからね。早く負担を除きたいのさ)


 フローとヴェラドが到着しているようだ。フットワークが軽いと見るべきか、友人基が異常過ぎるのか。どちらにせよ重大事件の香りがする。


「お帰り頂こう友よ。サラダバー、お前は食い過ぎた」


 友人に接するように扱えば問題ないはずだ。生憎、土産(SDカード)の類いはないが、気にしないでくれたまえ。

 通じてか【仕方ないな】と言っているかのような消え方をした。

 

 内から出れば神々と天使が交流会をしていた。サイフィの配給姿に給食を思い出す。


「さてゼノム、新しい仕事だ」


 尻拭い確定者に対してのその笑顔は、煽りとなる。煽り返させないのは最高神としての圧か。 

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