因果
一時間で読み終われる内容なのか……ライトだからいいや
「ウゴゴゴ……」
サイフィからの連絡により〈原初球〉に戻った。目にしたのは紫の靄を垂れ流す、赤目のケイだ。何かに乗っ取られたとしか言いようがないだろう。
彼の周囲の植物は枯れ、岩も崩れて砂になり易くなっている。近付けるのも一握りな上で、無被弾が前提のような気しかしない。
「GROA!!」
ケイが跳ぶ。全員、余裕を持ち見切って散開。ルシュフェルに至っては、狙われていない事により優雅に歩む。
俺へと向かって来たので魔力の波動を叩き付ける。無防備に受けてケイは転げた。
「何があった、サイフィ」
「堕天使からお前らが造った訓練場を貰って、訓練中に呻き出して、あんな姿になった。全員避難は済んでいるが……」
訓練場と言うのは〈加環場〉の事だろう。
少年心で聖典と化した作品……その後の時間係能力や場を出すことが可能な作品でよくある、主人公に都合の良いように時が進む訓練場。場内で何年経っても、出れば数分の時しか経過していない。そんな場を目指して造った物だ。
時属性は使いすぎるとヴェラドからの真面目な制裁が来たり、一回の使用毎に俺とシュアが全力で補充する必要があったりで、この段階で断念し、危険だからルシュフェルに渡していたが……まさかこんな事件になろうとは。
ケイの視線は、ずっと俺に向いている。何の怨みがあるのかさっぱり分からない。確かに、先に進んでしまっているが、それは周囲から抜けてAランカーになっている彼も同じである。突け込める場所がないのに、乗っ取れるという事は相当の腕前だ。
[あの力は凶悪だ。回避だけ考えてくれ]
解析不能だったか……まぁ〈万象庫〉に接続してないので、仕方のない事だろう。彼女は情報思念体のようになったプロなだけで、世界法則を担う存在ではないのだから。
「OOOOOOO!!!」
「被弾者は蟲毒じゃあ!!」
と檄を飛ばすも相手の狙いは俺。遠距離攻撃があって、誰かを確実な囮に出来るのなら、近付く必要は皆無である。言い出しっぺが一番ペナルティを受けるという、懐かしい状況となった。
「〈黄金之野〉」
「〈天照細線〉!」
「〈凍凝道〉」
全員、ケイへの気遣いなくヘッドショットを決めに行く。ついでにルシュフェルは辺りを金へ変換し、それをシュアが凍てつかせる。
靄に阻まれ、ルシュフェルとシュアの攻撃は通らなかったが、サイフィの光線は靄を貫通し当たった。
頭に穴が空いていないので一安心である。
「UGAGAGAGAG!?」
衝撃は吸収出来なかったのか、頭を押さえてケイは転がる。凍った金が腐食される様を見て、被害範囲の拡大防止の為に〈斥力壁〉を進行方向に置いた。
予想外の粘着力を発揮し〈斥力壁〉を登る。リング状に形を変え、三周したところで止まった。
「「〈鎖天牢〉」」
瞬間的に青白い鎖がケイを縛り上げる。恐らく悪魔の捕縛に使われる聖鎖であろう、釘も刺さなきゃいけないな。
「〈魂釘〉」
天使の手の代わりの固定。のつもりが何故か本数が多くなっており、ルシュフェルがケイの体を低空で十字にしていく。見事な念力的操作だ。
「………んー……」
足がどっちが上だったかを悩んでいるようだ。拘るなぁ。
「別々にしようよ」
「そうだな………」
シュアの提案通りに足を平足に固定し、椅子を出して休憩を始める。まだ終わっていない内に抜けられるのは、信用されている証拠。無言のエールとでも受け取ろう。
[そうじゃなきゃ悟だもんな]
一時期の俺と行動が似るという最大の汚名になる。いや非現実な美女が、駄目であれば貢ぐ存在も現れるか。流石は堕天使、どっちに転ぼうと自分に利益が来るようになるとは。
「抜け出す前に終わるかなー」
じわじわと拘束からケイが脱しようとしている。光の鎖では足りなかったようだ。シュアが時の牢獄でもやればいいのだが、俺なら間に合うと信じてか動かない。
身体情報の為にケイの体へ〈分身体〉を流し込む。普通に激しい運動後の人体のようで、不思議な点はなかった。目でさえ異常なしなのか。
精神や魂の状態は、ごちゃごちゃしている。一体、誰の意思が入り込んだのだろうか。
(ゼノム、席の追加と茶と菓子を出せ)
ルシュフェルからの注文に応えつつ、原因を究明する。血腫や結石であればいいのだが。
[完全に座標指定タイプ。しかもこの力は異質過ぎる]
「【友人】の時と同系統なのか」
酷いものだった。蝕む管も線もなく、ピンポイントでケイへと送られる力。それは友人を基とした力で、間違いなくトリガーは俺と判明した。
(外からが多数とな)
(そ~~完全対応が出来なくて~ゼノムを巡らせようと)
(不完全だが行動不可に出来るからね。早く負担を除きたいのさ)
フローとヴェラドが到着しているようだ。フットワークが軽いと見るべきか、友人基が異常過ぎるのか。どちらにせよ重大事件の香りがする。
「お帰り頂こう友よ。サラダバー、お前は食い過ぎた」
友人に接するように扱えば問題ないはずだ。生憎、土産の類いはないが、気にしないでくれたまえ。
通じてか【仕方ないな】と言っているかのような消え方をした。
内から出れば神々と天使が交流会をしていた。サイフィの配給姿に給食を思い出す。
「さてゼノム、新しい仕事だ」
尻拭い確定者に対してのその笑顔は、煽りとなる。煽り返させないのは最高神としての圧か。




