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全天録  作者: AX-02
第二章 昼
115/261

明けてみれば

書きながらデジャヴを感じるのが

一番怖い

「なぁ妹よゼノムとは、どうだ?」

「ん~……変化なし…かな」


 ルシュフェルはシュアと同じ寝具の上で、ゼノムについて話を始めた。天界に多大な影響を及ぼした存在、それに何かされていないか、心配になっているからだ。


「本当か? 認識をずらされたり」

「今のゼルは〈(ルナ)〉の決戦の時みたいに強くないから、出来ないと思うよ?」


 不思議現象としてゼノムのパワーアップがある。火事場の馬鹿力のような、外部干渉が確認されていない一時的強化。詠唱妨害の難度をはね上げたあの形態〈熾天使(セラフ)〉四人が玩ばれる結果となったあのゼノム。


 それと比べれば今は大人しいものである。〈竜〉による隕石を無害化するために、スキルを使っているのだから。


「ならば良い。怪しい事があれば余に話すがよいぞ」

「ありがと、ルシ(ねえ)

「お前もその呼び方なのだな」


 発音上、ゼノムと同じ呼びである。自発的な思考に影響するのは、当人さえ読めないだろう。


「力が弱まったりしていないか?」

「全っ然! むしろ強くなる一方!」


 次に気にしたのは、ゼノムとの触れ合い過ぎによる格下げだ。個に天使が侍る事はあり得ず、元来で言えば堕天使となってのみ、個の元へと飛び立つもの。

 しかしシュアは絶好調の白さである。よくよく感じれば、小さな回復魔法が辺りに出続けている。


「そうか……心配はないな」

「…戻ったんだ」


 ルシュフェルは〈奈落(アビス)〉から出て明星だった当時へ戻っていた。神に最も近しい慈愛の天使へ。


「闇に覆われる事はないしな」

「それはそうと…何でここなの?」

「来たらこうであっただろう?ふふっ、起きた時が楽しみだ」

_______________________________________________


 

 落ち着け。落ち着くんだ、素数を奏でようではないか。そうこれは決戦、これを堪えきれという試練と受け取るべきなんだ。


 環境配備作業を7割終わらせ、外界遮断による疑似睡眠から目覚めると、両手に華が生けられていた。

 右側はシュアであり、いつもの愛くるしさを与えている。舌を絡めれば寝ぼけながら、応じてくれる。が、それまでで起きてくれない。

 左側のルシュフェルについて話を聞きたい。何故、添い寝となっている。何故、いつもより身長を低くしている。疑問が沸いては、本人にしか知り得ないと結論付けた。


 手を離しベッドを伸ばす事により距離を取る。起きていない……成功だ。


「おふぁぁようぜるぅんん」


 シュアは目覚め、俺の肩に両手を乗せ引き上がる。シュアが乗ったまま朝の諸々を済ませ朝食である。


「極塩」

「ほい」


 ある幻想風景極まれり。美少女と食卓につくだけで完璧なのに、家族としての扱いがされるのは至極だ。


[制度が消えてるからな……分からないものよ]


 〈内対(ククラ)〉が廃止についての認識害を考えている。

 そういえば俺、こいつの心を読めた試しがないな。相互寄生のような状態で、太い管もあるのに。


「置いてきぼりとはな……覚悟はしたのだろう?」


 フラッと起床したルシュフェルは、触れ合いがなかった事で怒りに染まっている。


「私に構う暇は、お食事に使ってはいかがでしょうか?」

「本来の食事をしてからにしよう」

「成る程、ではメインを後回しにして前菜から」

「其方は作法を気にする質では無かろうに」


 回避を目指すがどうしようもない。やはり地頭の差は顕著のようだ。しかしここで荒らされる訳にはいかない。

 シュアに視線を送る。理解したのか、床が崩れ上下に現れた〈転移門〉にルシュフェルと俺は吸われる。


 着いたのは何処かの終末間近の星。

 いやちょっと待って、壊星からのブラックホールコンボに俺は耐えきれないんだぞ。正妻によるスパイ的行動は『知的な嫁』だからセーフにしておこう。じゃないと気が持たない。


「全ての手札を切れ。さすれば傷を付けれよう」

「悪魔の祖たる堕天の主よ。その御心に届くまで、我は舞い続かん」


 手札の前にメンチを切った。死合をするというのに、口上がないのは不作法でもある。特に彼女は、中二患者が追いかける存在筆頭〈明けの明星〉それと対峙する誉れに、感謝の念からの言の葉を出さずして何が『末期患者』であろうか。


「死の舞踊はかくも美しい」


 その一言で、空間が止まったように圧された。

 理解不能だ。何故この力を持って彼女は俺の下に付いている。この位の力があれば、例え俺が供給源だったとしても炉心を新にするのは、余裕のはずなのだから。


「入るぞ」

「どうぞ」


 間合いを詰めると同時の攻撃。物理に従い威力が上がった貫手が、心臓部分だったところを消滅させる。

 体が恐怖を覚えて脱力するのを締め上げて、待たれた反撃を出す。顔面への右拳は額によって砕かれ、刺したままの腕を折りに行った左腕は、白い棘に貫かれていた。


 少し残念そうな顔をされ、続く羽ばたきで吹き飛ぶ。阻害されたのかいつもより体を制御出来ない。きりもみ落下し〈粘性体(ウーズ)〉形態で熱い地中を駆け、誘導されるがまま飛び出す。


「〈剣世(セイバーズ)〉」


 空中で俺を囲うような配置の剣、それも全て聖なる輝きを放つもの。属性有利を貪欲に取りに来ている。


「〈羅万(アスラ)〉!!」


 手を増やし全てを砕く。どれを本命だとか考える余裕などない。対応失敗は全て半殺し以上なのだから。 

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