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全天録  作者: AX-02
第二章 昼
113/261

再突入

無駄だったけど一部は必要性があったな


〈キテル〉「灰の夜は帰してくれない?」


 帰還した俺らを待っていたのは、冷淡な辞令だけだった。


『環境を戻せ』


 端的な言葉で、何をしなければならないのかを察する。炭化した木々、掘り返された土地、噴煙や灰への対処だ。


 ルシュフェルは去ってから戻って来ない。星を治すのは嫌いなのか、完全に遮断されている。居なくても大丈夫だが、最後まで見るべきだろうに


 まずは灰を集める作業に取り掛かる。多少は肥料として使うが、ほとんどをダイヤ等に加工し素材として使う。

 次に土地だ。灰を無くしたところで、ほぼ死んだ大地に緑が生えることはない。養分の高い土を作り上げて管理する必要がある。土というのは、生命の営みの上になるもの。死骸や落ち葉の分解なくして、土は生まれない。なのでやることは決まった。


「完全持ち帰りダンジョンアタックって……お前ら居なくて大丈夫なのか、その星」

「シュアの結界は特製だ。再度の〈直下式隕石召喚(メテオストライク)〉以上が起きない限りは、安心出来る」


 〈原初球(エデン)〉にあるダンジョンを潰して回り、良い土に変える算段がついた。どのみち〈魔王(ゼノ)〉による強化現象を断つのだから、魔物は狩りすぎで丁度だ。

 心配されたのでサイフィに無問題と伝える。


「俺のやらかしを埋める為に〈原初球(ここ)〉に向かうとは言っておいたからな。調査員くらいは出すだろう」


 そう言ってシュアと二人で〈ハス島〉という名前になった、元無人島にあるダンジョンへ潜る。


[クリアして破壊しても消えないって]

「相当に核を守ってるな」

「響かせたら分かるかも」


 〈熾天使(セラフ)〉形態にせよ、獣人形態にせよ、シュアは音に敏感なのだ。探す為だけに耳を痛めつけるのは勘弁。


「分からないままでいい。いざとなればスルトの所まで一直線に、大きな穴を空けるまで」


 とはいえ解決案を出したのは褒めるべきだ。『いい案』と言いながら頭を撫でる。


 始まったのは蹂躙と言うべきだろう。1階毎の全滅平均が[1:34]中には死さえ認識しきれない存在さえいそうなタイムだ。壁の全てを叩いて回り、隠し部屋があれば〈青焔(ノヴァ)〉を投げ入れ塞ぐ。延々と燃える高熱の火だ、いい燃料として有効活用されるだろう。


 途中に無機物魔物の階層が続く。興味深く《錬成》機能を使い続け、実験して行く。

 高温で、衝撃を加えてから、光属性で……最も変形させやすい、若しくはしにくい状態を模索する。どれもこれも〈竜〉の方が強いのが残念だが〈原初球〉で使う分には優秀だ。サイフィ達に渡した後、余りを〈天烈〉と各々の国に流す事にした。


 深層である90階に着いた。正に自然の迷宮とも言うべき複雑さと乱雑さ。風変わりにも程がある。


「こっちから匂う!」


 シュアが匂いに釣られて進むと、古典的トラップである吊り網に掛かりかける。

 わざとらしいが許容範囲だ。問題は『気を付けろよ……お前が傷付くのは嫌なんだ』と言うべきか『くっ…俺の匂いより気になるのかっ……!』なのかだ。気遣いの緩み等から別れになるのは、前世界でよく聞いた。考えろ…考えろ、俺。


[俺ならもっと上手くやる。は?]

(成る程、その発想はなかった)

「何、話してるの?」


 若干、気温が下がるのを感じる。しまった、思考速度を上げたとはいえシュアが感知しようと思えば、完全解放な表層思考は普通に聞こえるのだった。


「ごめん。何かあったかな? って思って」

「ふーん……」


 疑いのジト目……ふぅ……向けられる事さえなかった俺には、甘美な表情でしかない。


 節々に思考を怪しまれつつ、立体化したダンジョンを進む。やはりどこかしこもやるような、危険地帯から娯楽施設への認識改革をするべきなのだろうか。現時点で、サイフィの忍者さんならば『訓練にもなる遊び』として笑顔で踏破出来る難度である。

 と言うより魔物が全く強くない。トラップが凶悪なだけで、オール1/2ライの強さで倒せるくらいだ。深層が雑魚って一体…何を狙っての配置か不明である。神々の形質から推測しようにも、紹介された存在にダンジョン管理者そのものが、いなかった。


 111階だった深さに到達し、狙いが判明する。


「ガロロロロロ……」


 一戸建てサイズの黒狼が鎮座している。察するはボスラッシュ、魔素等が集まりやすい深層を薄める代わりに、個々の強さを上げたのだと。


「ウォーーーン」

「ガォォオォォォォォォオン!!!」


 シュアが大狼形態でやる気満々、プライドでもあるのだろうか。


 獣の争いは魔法を抜かせばほぼ、牙、爪、パンチ、体当たりの四つである。幾度も繰り返した方が、強いと言えばそうだ。負け癖なんてものが付かない限り、戦闘経験がある方が上なのだから。


「ガルル」

「ヴゥゥ」


 にらみ合いだ。この時点で、腹を見せたり穴を堀始めれば負けだが、どちらもするはずもなく飛び付く。


 シュアが黒狼を咬み振り上げてる。木に衝突する前に、黒狼は翻し足場として加速した。真っ向から頭突き合い、互いに距離を取る。

 大したダメージでないと判断し、黒狼は影を刃にして走らせる。シュアは上に向かって、ミラーボールのような氷球を打ち出し、そこへ光を放つ。影は追われるように照射され、刃として機能を失った。


 影に黒狼が潜る。光への耐性が上がった影に潜み、隙を見て咬み殺すつもりのようだ。しばらくシュアは見渡したが、来ないのを確認すると伏せた。

 あからさまな誘いである。乗る乗らないを完全に任せた作戦に、黒狼は出てこない。野生の勘で逃走したのか?


 

 背後の呼吸音で狙いを変更したのだと察した。神速で〈粘性体(ウーズ)〉形態へと変わり攻撃を透かす。勢いの余った黒狼は空中で、シュアの叩き付けを頭部に食らう。防御の闇は純粋な拳速に貫かれ、地にめり込む。


「わふー」


 気の抜ける遠吠えに、何を感じたのか推測する気も起きない。

2日連続で読破する猛者が現れたんやが

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