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全天録  作者: AX-02
第二章 昼
112/261

始めてでないのは異常

orz、


焼き土下座級に無駄回が完成してしまいました。


「ペースをっ、持っていかっ、れてな」


 斧使いはそう言って動こうとしない。どうやら深めの一撃を貰い、ペースが乱れて死にかけていたようだ。俺らが間に合わなければ、嬲り殺しだった。


「治療は任せる」


 シュアを回復に向かわせ、俺とルシュフェルでこの〈竜〉の相手をする。

 サイズは10m程度、色は白。さっきのは卵か生命維持形態と推測。見た目の尖りが、天を突くかのようで非常に威を感じる。


[素材だ……レプトの8/100の]


 〈神龍(ドラクル)〉の8%の良さ……とある七段階ランク表記なら上から三つ目だろう。初仕事の弱いはずの装備で、プロを負かす極限に挑むのだ。理不尽な強さになろうことは想定済み。


 火球の連続を回避し、前足に一撃。勿論のように弾かれる。素の武器が悪いと、魔力を通しても限界が早い。


 うざったさを撥ねるように、猫のするようなパンチが来る。俺は大剣を盾にするように構えたが。


「何をしておる」


 ルシュフェルのスタイリッシュな回転斬りで、手が引かれた。


 〈竜〉に緋のオーラが纏われる。怒りの顕れに俺は。


「ルシ()()……そういった動きは止めてくれ」


 注意するように言う。こちらの動きのレベルが上がれば、向こうも上がるような気がしているからだ。


「余興を阻むか?」


 機敏な尻尾を見切りながら、ルシュフェルに刃先を突き付けられる。成る程、さっきのオペレーターの気持ちはこうなんだな。


「好きに行こう……」


 諦めて真の実力を拝む事にした。装備の弁償は、いくらになるのだろう…任務の達成報酬が吸われる未来しか見えない。


「ならば良い」


 ルシュフェルは回転しながら〈竜〉の背を駆け、俺は大剣を音速に真っ直ぐ振り下ろす。大剣の刃が欠けた。想定外の使用に耐久がお亡くなりのようだ。


「グルォォォォオ!!」


 〈竜〉の咆哮。尖った部分が青クリスタルのようになり、地面から火柱が幾つも伸び〈竜〉を包む。空は深紅がかり隕石すら落ち始め、終末が到来した。


「ォオ」


 火柱から出た〈竜〉の四肢は太くなり、白かった鱗(?)も焼けた跡がちらほらと見える。地獄の第二形態だ。


 

 吐く熱線は山を貫通し、その先の隕石が砕け散る。歩みの度に地から溶岩が吹き出す。その身を叩きつけようものなら、一帯が炸裂し噴石が注ぐ。


『……想定外過ぎます』


 もうこいつだけで星滅ぶのでは?そんなレベルを相手にしている。画面から目を背けていそうな、オペレーターの声に同情する。

 回転斬りと一発の音速攻撃だけで終焉が始まり、当たらなければどうともないのだから。


「ようやく退屈から出れそうだ」


 余りに輝くせいで、周囲にも同等の輝きを求めてしまうのだろう。そういう事にして欲しい。


「なぁ? これは何だ?」

「気にしないで? ね?」


 シュアが斧使いの精神を保とうとする。大災害同時のぶつかり合いを見たら、状況逃避を始めてしまうものだ。それとも、こんなに則らない人が始めてなのか。


「〈双極(パーフェクト)(リーマー)〉」 


 完全に間違った使い方を見せつけられる。それでいて鱗を剥がすという、快挙を成し遂げた。

 ボロボロの大剣を眺める。まだ丸太で殴った方が、効果がありそうなくらいの破損。替えが欲しい。


「グォォォオォォオン!!」


 〈竜〉が天に吼え続ける。嫌な予感と共に上を見る。

 実に清々しい〈直下式隕石召喚(メテオストライク)〉だ。どう考えても範囲外は無理な大きさ、防御もまともなものは使えない。


「脱ぐか……いやそれは流石に……」


 退職の可能性が見える。もう手遅れだろうが、制服を脱ぐ訳にはいかない。制限解除なんて……。


[緊急事態発生。星の死への対応許可を]

『了解しました。完全鎮圧まで解放いたします』


 存在していたようだ。それにしてもよく、ここまで破ってる奴に応答する気になれるな……完遂を止めたら向こうも退職なのか?


 解放されたのを確認し、隕石へと飛ぶ。触れてみてその質量を感じる。宇宙を漂流する何もかもが、付着あるいは形成したこの石。

 それを久々の使用で一刀へと変えてみる。


(《天地一体(オールフュージョナー)》より《錬成》)

[……あったな]


 力押しが通り過ぎて情報体でさえ、数秒の思い出しを要する。やはり現実は、全てを即座に算出するのが難しいようだ。


 大隕石を刃物へ圧縮する。ブラックホールが発生しない瀬戸際の調整、同時に飛び掛かる火球(ひのこ)を払う。

 完成したのは無骨そのもの、されどロマンの詰まった一品。


「〈重剛丸〉」


 銘を付けた瞬間に〈竜〉の首へ自らを引く。


[お前が隕石なんだな……]


 真っ直ぐに滅ぼしにくる日ごと〈竜〉を真っ二つに切り裂いた。


 気付けばルシュフェルは消えていた。制限解除後の差がありすぎて、暇に絶望したのだろう。

 初仕事は申し訳ない事だらけだ。   

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