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全天録  作者: AX-02
第二章 昼
111/261

初仕事から飛ぶ者達

 到着するなり着替えや、翼の収納が命じられる。そしてその着替えとして出されたのは、原始的な鎧。〈竜〉の素材を継ぎ接ぎした装備だ。


[能力低下を確認]


 武器も選ばされる。覚えのある形状しかなく、俺だけ困惑したが。


「これかな?」

「これだ」


 シュアが弓を選び、ルシュフェルが小太刀を二本持つ。持った瞬間から属性の付与が行われ、色が変化する。


[武器×美少女……良いな]


 かなり遠回しに自分を褒める《内対(ククラ)》をよそに、武器を選ぶ。心としては弩を使いたいが、俺が扱うと実質マシンガンになるので避ける。となれば残るは。


[やっぱ大剣(それ)だな、キャラ被りめ]


 支給される時点で分かるが、素手の殴り会いは御法度な法則の星なのだろう。相手も付き合わなくなり被害が甚大になるのであれば、多少の不利を被りながら自然と人工を調和する。


「……新人か?」

「はい。よろしくお願いします」


 同じような装備の人が現れた。彼の場合は全身鎧の為、髪や顔が見えない。それでも目付きを推察出来る程、歴戦の気配を放つ斧に意識が向く。

 黄緑の光沢は武器の格を知らしめる。それは幾多を切り裂き、時には盾とし、尚も折れなかった証。


「凄い……何年使っています?」

「11年」


 魔法世界等において、武具の成長はよくあることだ。それは人の鍛練と同じく、手直しや素振りと言うトレーニングと実戦により伸びる。故に道具に人格があると思って…八百万が如く扱うべきなのだろう。

 11年も使い回せるのは『流石はファンタジー』としか言いようがないが。


「本日のはご一緒ですか?」

「まだ分からん。同じ依頼、同じ地かも知らぬ」


 同じサーバーだからといって、協力するとは限らない。そういう感じか。


 


 全員、森の中に降り立つ。普通は『集会所』とかではないの? と思ったが電子音と共に連絡が入り、空中に画面が表示される。装備と余りにもミスマッチな光景に、笑顔となってしまう。


『待ち望んでいたようですね。情報伝達担当となりましたリベルです、よろしくお願いいたします』


 何でこんなピンポイントで被るのだろうか、オペレーターの女性声により笑いが込み上げる。


[卵を探しそう]


 ドドメ過ぎて真顔になる。仕事前に表情変化が忙しい。


『まずそちらの三に……四名様は周辺調査となってます。異常個体と思えるもの、またはそれに準ずる物体を発見しだい報告してください』


 何でも初めは調べることだ。それが基本となり応用へと繋がる。

 にしても異常個体か、報告する暇があることを祈ろう。


『細かい位置の捕捉はこちらが致します。原生生物もいますのでお気をつけて』


 《内対》によるマップ表記がない訳が分かった。制限を装う必要がある星だからだ。そして俺に聞かれるまでは、言わないつもりであることも。


 同じような装備の人は、オペを聞きながら何処かへ走っていった。プロの動きだなぁ。




 散策を始めて15分。オペレーターを呆らせる事に成功していた。


『貴方は食欲しかないのですか?』


 異常なオーラとおぼしき、赤紫の光を放つ植物や生物の報告に毎度『これ食べれます?』と言っていたせいだ。勿論、全て答えは『NO』だったが良い情報を集められたのか。


『色合いからして、通ったのは数時間前……緋色のものはありませんでした?』

「なかったよな?」

「だな」

「そうだよ」

『引き続き調査をお願いします』


 どうやら何かが通った際には、周囲が緋色に始まる発光があるらしい。それならば。


「何を隠しておるのやら」


 ルシュフェルと同意見だ。調査対象を秘匿にしての調査という、ドッキリ企画のような事をしてくれている。俺達に知られては不味い何かがあるのだろうか。


 金属音。かなりの質量を感じさせる大きさが響く。駆け寄れば球体がそこにめり込んでいた。


「こちらゼノム、金属音を調べに来たところ落下物ではない球を発見。色は白、熱はありません」

『了解。回収班を向かわせます。その場に待機してください』


 目的物ではあったのか回収に来るそうだ。撃墜されない事を祈る儀式として『小足コサック』をする。


 その間も、ルシュフェルとシュアは調査をしていた。聴力にも制限がされ会話が聞こえない。広義姉妹の二天使は何を話すのだろうか、シュアの惚気話に押されるルシュフェル?


[何それ、めっちゃ見たい……てか書くか]


 彼女によっていくつ新作が出来上がったのか定かではない。少なくとも、出会った分だけ組み合わせが増えているのは確かだ。


「見つからないなー」

「終えたら宇宙(そら)を飛翔するぞ」


 制限に苛つきを覚えたのか、ルシュフェルとの遊覧飛行が予定に入る。俺との二人ではないので問題ない。


 小さい四角な宇宙船が到着し球体の上を取る。宇宙船の底から円の広がりに光の照射、正に『拉致』のシーン。


 眺めていると咆哮と爆発音が鳴る。何処かで戦闘が始まったようだ。


『任務完了です。想定より球体が大きいので、他を送ります。それに乗るまで待機していて下さい』


 また待機か……流石にきついな。ルシュフェルからの圧が耐えきれなくなり、木に登って戦闘を見ようとする。

 二人も真似して木に立つ。すると。


「うむ、死んだな。喰らいに行くか」


 ルシュフェルが物騒な事を言い始める。魂の有効活用としては間違えてないだろうが、未だに戦闘らしい音がする中で言わないでくれ。


「どのみち行く気だしな……」

「こちら……シュア! 戦闘支援に向かいます!」

『不許可です。待機してください』


 分からない。行ける場に同業が負けかけで、駆け付けを禁じる理由が。


「はぁ? ベテラン切り捨てっすか?」

『そうです』

「何の為にか分からないし、多分、伝えても行くだろうから?」

『はい』


 悉く無機質な返事が返ってくる。有事には無駄を省くようにされた〈造人(ホムンクルス)〉のようだ。しかし、分かった事はある。


「なら言わなくても行くだろ」

『ですね』


 大して止める気はない。一応の体裁としての停止命令だ。

 

 俺達は駆けた。まだ誰かの灯火は点いている。スタミナを切らさないように、木々を抜け。


「シュア」


 見えた〈竜〉に矢を放つ。  

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