初仕事から飛ぶ者達
到着するなり着替えや、翼の収納が命じられる。そしてその着替えとして出されたのは、原始的な鎧。〈竜〉の素材を継ぎ接ぎした装備だ。
[能力低下を確認]
武器も選ばされる。覚えのある形状しかなく、俺だけ困惑したが。
「これかな?」
「これだ」
シュアが弓を選び、ルシュフェルが小太刀を二本持つ。持った瞬間から属性の付与が行われ、色が変化する。
[武器×美少女……良いな]
かなり遠回しに自分を褒める《内対》をよそに、武器を選ぶ。心としては弩を使いたいが、俺が扱うと実質マシンガンになるので避ける。となれば残るは。
[やっぱ大剣だな、キャラ被りめ]
支給される時点で分かるが、素手の殴り会いは御法度な法則の星なのだろう。相手も付き合わなくなり被害が甚大になるのであれば、多少の不利を被りながら自然と人工を調和する。
「……新人か?」
「はい。よろしくお願いします」
同じような装備の人が現れた。彼の場合は全身鎧の為、髪や顔が見えない。それでも目付きを推察出来る程、歴戦の気配を放つ斧に意識が向く。
黄緑の光沢は武器の格を知らしめる。それは幾多を切り裂き、時には盾とし、尚も折れなかった証。
「凄い……何年使っています?」
「11年」
魔法世界等において、武具の成長はよくあることだ。それは人の鍛練と同じく、手直しや素振りと言うトレーニングと実戦により伸びる。故に道具に人格があると思って…八百万が如く扱うべきなのだろう。
11年も使い回せるのは『流石はファンタジー』としか言いようがないが。
「本日のはご一緒ですか?」
「まだ分からん。同じ依頼、同じ地かも知らぬ」
同じサーバーだからといって、協力するとは限らない。そういう感じか。
全員、森の中に降り立つ。普通は『集会所』とかではないの? と思ったが電子音と共に連絡が入り、空中に画面が表示される。装備と余りにもミスマッチな光景に、笑顔となってしまう。
『待ち望んでいたようですね。情報伝達担当となりましたリベルです、よろしくお願いいたします』
何でこんなピンポイントで被るのだろうか、オペレーターの女性声により笑いが込み上げる。
[卵を探しそう]
ドドメ過ぎて真顔になる。仕事前に表情変化が忙しい。
『まずそちらの三に……四名様は周辺調査となってます。異常個体と思えるもの、またはそれに準ずる物体を発見しだい報告してください』
何でも初めは調べることだ。それが基本となり応用へと繋がる。
にしても異常個体か、報告する暇があることを祈ろう。
『細かい位置の捕捉はこちらが致します。原生生物もいますのでお気をつけて』
《内対》によるマップ表記がない訳が分かった。制限を装う必要がある星だからだ。そして俺に聞かれるまでは、言わないつもりであることも。
同じような装備の人は、オペを聞きながら何処かへ走っていった。プロの動きだなぁ。
散策を始めて15分。オペレーターを呆らせる事に成功していた。
『貴方は食欲しかないのですか?』
異常なオーラとおぼしき、赤紫の光を放つ植物や生物の報告に毎度『これ食べれます?』と言っていたせいだ。勿論、全て答えは『NO』だったが良い情報を集められたのか。
『色合いからして、通ったのは数時間前……緋色のものはありませんでした?』
「なかったよな?」
「だな」
「そうだよ」
『引き続き調査をお願いします』
どうやら何かが通った際には、周囲が緋色に始まる発光があるらしい。それならば。
「何を隠しておるのやら」
ルシュフェルと同意見だ。調査対象を秘匿にしての調査という、ドッキリ企画のような事をしてくれている。俺達に知られては不味い何かがあるのだろうか。
金属音。かなりの質量を感じさせる大きさが響く。駆け寄れば球体がそこにめり込んでいた。
「こちらゼノム、金属音を調べに来たところ落下物ではない球を発見。色は白、熱はありません」
『了解。回収班を向かわせます。その場に待機してください』
目的物ではあったのか回収に来るそうだ。撃墜されない事を祈る儀式として『小足コサック』をする。
その間も、ルシュフェルとシュアは調査をしていた。聴力にも制限がされ会話が聞こえない。広義姉妹の二天使は何を話すのだろうか、シュアの惚気話に押されるルシュフェル?
[何それ、めっちゃ見たい……てか書くか]
彼女によっていくつ新作が出来上がったのか定かではない。少なくとも、出会った分だけ組み合わせが増えているのは確かだ。
「見つからないなー」
「終えたら宇宙を飛翔するぞ」
制限に苛つきを覚えたのか、ルシュフェルとの遊覧飛行が予定に入る。俺との二人ではないので問題ない。
小さい四角な宇宙船が到着し球体の上を取る。宇宙船の底から円の広がりに光の照射、正に『拉致』のシーン。
眺めていると咆哮と爆発音が鳴る。何処かで戦闘が始まったようだ。
『任務完了です。想定より球体が大きいので、他を送ります。それに乗るまで待機していて下さい』
また待機か……流石にきついな。ルシュフェルからの圧が耐えきれなくなり、木に登って戦闘を見ようとする。
二人も真似して木に立つ。すると。
「うむ、死んだな。喰らいに行くか」
ルシュフェルが物騒な事を言い始める。魂の有効活用としては間違えてないだろうが、未だに戦闘らしい音がする中で言わないでくれ。
「どのみち行く気だしな……」
「こちら……シュア! 戦闘支援に向かいます!」
『不許可です。待機してください』
分からない。行ける場に同業が負けかけで、駆け付けを禁じる理由が。
「はぁ? ベテラン切り捨てっすか?」
『そうです』
「何の為にか分からないし、多分、伝えても行くだろうから?」
『はい』
悉く無機質な返事が返ってくる。有事には無駄を省くようにされた〈造人〉のようだ。しかし、分かった事はある。
「なら言わなくても行くだろ」
『ですね』
大して止める気はない。一応の体裁としての停止命令だ。
俺達は駆けた。まだ誰かの灯火は点いている。スタミナを切らさないように、木々を抜け。
「シュア」
見えた〈竜〉に矢を放つ。




