天使軍4
ゼノムとシュアが〈月愉悦殿〉でイチャイチャしている頃〈原初球〉では
ゼノムを見送り、策を練り伝え一時間、その艦は現れた。
『哀れなる者共よ。裁きの時は満ち、我らは来たる』
そんな布告を無視して、まずは遠距離物理を仕掛ける。遠距離魔法は消費や、相手の吸収を考えれば初手に使うべきではない。
乗ったり破損させたりで、艦は現在、幻影や霊体でない事を確認する。
『〈奈落之一〉に惑うか、正への引導を』
間違いなく、ゼノムが連れたルシュフェルのことだ。恐らくゼノムの覚醒や界渡りを、彼女の復活の為と断定し、俺も眷属とみなされているのだろう。
神の絶対性の維持等から、何か異分子に仕立て断罪するのはよくあることだ。前の世界でも宗教や思想で主張され、サブカルチャー関連なら毎日のように騒がれるものだった。
天使が隊列を組む。
相手の属性は光、それも純粋過ぎるものだ。速さは遅くとも落雷そのものと推測。こっちは俺を除き、剣先が音速かどうか……俺も雷を読んで避けられる程度だ。
天使の初期微動を見て、水晶に魔力を送る。直後に衝突音。
「散れ!」
結界を突き破りにかかっている。そして元凶は、俺と水晶と見抜かれているだろう。
一斉に森へ隠れる。魔力感知に差がありすぎて、自力ではどうしようがバレるのは、伝えてある。ゼノムが設置した砲台や倉庫の中へと行けば、少しは耐えれるとも言った。
置かれた兵器は対空砲、対地砲、〈輪戦車〉全型、手榴弾、ランチャー、銃……ゼノムよ、お前はどれだけ幻想を壊したいんだ? 実生活からすれば、兵器も幻想のようなものだが、魔法世界に何を産まれさせたい。
走る傍に光の矢が刺さった。より急角度で且つ、止まらないように走る。天使なら人の弱点は見切るだろう。
「〈麗氷〉」
振り返る余裕はないので、透明度の高い氷を飛ばし、反射された像で見る。五体以上なのを確認し、一番近くにあった包囲へと駆け込んだ。
発射のスイッチを送る。追っていた天使は、誘い込まれ砲撃の雨にさらされ地に落ちた、無慈悲に対地砲がトドメを刺す。これで種を明かしてしまった。しらみ潰しと消耗、どちらが早いかの勝負へと切り替わるだろう。
上の影響がなければ〈戦車〉があれだけ揃う事はないと思う。天使は兵器について既知だ、戦艦があるから当然かもしれないが。
装填数を上げたショットガンを手に、次の地へ向かう。発砲、発射、爆破音。シェルターらしきものに向かわせた、マーシャは無事だろうか。
これが本当の戦場。『死ぬわけがない』と思いながら『振り返れば仲間が消え』続ける。安全地帯なんてものはなく、権利の主張をする息があるなら走り、何かに書き留める指があるなら金を引くべき場……一体、何人死ぬ。
『〈聖域〉』
「チッ!」
範囲結界に捕らえられた。しばらくの間は超兵器〈輪戦車・四型〉が使えなくなり、形成不利だ。
外から内、もしくは天使はすり抜けれるように出来ているのか、攻撃が殺到する。
「〈守専〉」
守りの為だけの結界を張り、一瞬の緩みで集中放火から脱する。
「後0.04……」
そのくらい遅かったら、天使の槍が自身を貫いていたであろう。そうでなくとも長くは持たない。空は光の輝く翼で埋められ、投擲や呪文の準備をしているのだから。
『〈破衝〉』
『〈至上〉』
結界が割られ刃が天井となり、落ちてくる。隙間は人が通れない位。道を開くしかないようだ。
「ぉおおぉぉぉ!!」
剣に光が宿る。明らかに俺の光とは質が違う。堕天使の気まぐれか、見返りは考えないようにしよう。
振れば剣は伸び、慣性を無視したかのような軌跡を描く。天井を崩した後、地面に向かって刃を突き立てる。甲高い音と共に結界が割れた。
対地砲を起動させ、天使が吹き飛ぶ様を見る。
「何で当たるんだろうか」
素朴な疑問を胸にする。何か特殊な物質か撃ち方としか思えないが、想像がつかない。
艦で来ていた事を思い出し、空を見る。見上げただけでは、何処にも見当たらなかった。次の瞬間に閃光と轟音。
土が降り注ぐ中、水晶に[8.8 lost]との表示がされる。
『ひれ伏せ』
空間に潜んでいたのか、艦が姿を現す。勝つのも、近くにいたであろう配下も絶望的だ。
あんなものにどう対抗しろと言うのだ。自身の出力の限界を遥かに越える必要が。
【壊せ……全ては…………】
音でも像でもない何かを感知する。天使、堕天使、ゼノム、ましてやマーシャでもない。誰かの……これは意志なのだろうか、ともかく触らない方がいいのは確かだ。人間を中退する可能性が高すぎる、少なくとも『心が異形』になるのが見えた。
【積み上げを消す……再開も分からずに……………】
目的がない。いや移ろいが早すぎるのか、非常に不安定な意志。追い掛けて疲れて憑かれるタイプ……そのような【誰か】は無視して、気を保つ。
【俺、セーブデータ消した事、殆どないわー。なんか過去の自分の否定みたいでなー】
【成長しろ~次に進め~】
【次が未定すぎるわ! まだゴールすらないのにやれるか!!】
【お手軽な方法があるぞ】
【苦行を進めるな……】
保てない。別人なのか、同一なのか分からない会話。蚊帳の外を延々と聞かされる(?)。何故これに耐えなければならないのか、嫌になって聞こえる心を。
「閉じたら終わりだ!?」
精神攻撃への対処を誤るところだった。方面がどうあれ、相手の狙い通りのシークエンスに移行した時点で、敗北ルートだ。
『〈砕深〉』
目の前にまで天使が迫り、槍で突かれる。突飛な動きでバランスを崩し、水晶を落とす。
そのまま天使が砕く。強兵器の遠隔が不可能となった。更に勝率が落ちるが……地が震えている。
タイミング的には、破損によるスイッチだろう。一体、ゼノムは何を用意していたのか。
地面が盛り上がり機械が姿を現す。スパロボらしさ満載の形状、カラーリングは黄色と黒。飛び乗れば、勝手に起動し。
[XAX-02]
と機体名を流す。
ど真ん中に『押せ』と言わんとしている赤のボタンがある。それ以外に触れれるものはないので、押す。
[天使のみダンスだ!!]
外部を見る映像から、見えてはいけないものが見える。前世界の技術でも、ここまで飛び交う事はあり得ないだろう。何より爆発が真っ黒なのが恐ろしい。
流石に水晶一個じゃ無理ゲーだな。渡す時に追加しますかね
追記
問題なかった
死者0、部位欠損17、重傷8、軽傷1。
《内対》[適当に傷つけるとは、これいかに]
勇者 「クズですわぁ……でも現実の諸々にクズ要素が多く『見える』から仕方ないね」
《闇威者》「創作にさえ逃避キメてて草」




