天使軍3
『こちらソドム隊、全滅の報告です』
『応援要請!』
「バベル隊、行け」
『了解』
〈天使軍〉は新たなる脅威に、弄ばれていた。神の軍として幾度の研鑽を重ねただろうか、果てしない時をかけた力は、たった一つの闇を葬れずにいた。これまでの〈魔王〉は〈主天使〉未満…魂を全て燃やし尽くして、やっと大陸規模の何かを放つ程度。
それが今回は〈原初之護〉と正面から殴り合い、本気を出されても殺されなかった存在なのだから。
「どうだガブル」
「どうもこうもないよ、完全に想定外だ」
〈月〉の隠されし基地、その一角であり頭である部屋で、二人の三対翼が会話をしていた。一人は正に燃え盛る翼で、金髪の女性。もう一人は深緑の男性だ。
基地はゼノムの前世界から遥かに進み、彼が居れば二人に『なんてサイバー……ここに居を置きたい。不動産は何処だ?!』と言い出すに違いない。
「だらしねえなぁ。締めてくるぜ」
「止めろ、ウリ助」
更に茶髪の三対翼が現れ、早々に止められる発言をかます。
「わーってるよ、俺らが出たらすぐに終わるって」
「本当は終わらせたいんだけどね」
「ラファ、本当に情報は全部か?」
「そうだよミカ」
青髪へと変化したシュア………ラファエルが部屋にたどり着く。
復活するとは言え、傷付くのを見るのは嫌なようである。その為に追加情報がないのか、金髪……ミカエルが問う。隠し事がないのかを。
「今回の〈魔王〉は、内にもう一つの魂を持つ〈滑者〉。真に異なる者、魔法の制御と根元が別々の存在」
この世に迷い込む存在は、一定数存在していた。別の時空、あるいは可能性からくる存在。原因は実に様々だが、第一号者が『滑って来た』のでそのまま〈滑者〉という名称になった。
「面倒にも程があるな。罪深く且つ先の読めぬ、力だけ持ってしまった阿呆は」
ラファエルは否定の言葉が出かけた。力以外も一応は持っていたと。しかし冷静になり、自分が考えたのは、追随を許さない生活『力』だったと気付き飲み込んだ。
(シュアに引っ張られてる……)
人格に深く影響が出ている事にも気付く。〈深縁儀〉の影響だろうと結論し、それを伝えなかった。
『〈光却〉の許可を!』
「それ以外の制限も解除だ」
ガブリエルは通信をしながら今〈魔王〉の成長率を、思い直していた。明らかに可笑しい存在だ、強化へのリスクをまるで負っていないのだから。そして上がり幅。数ヶ月で星から出てしまう存在なんて、聞いた覚えもない。それでいて〈滑者〉であり……。
「〈滑者〉は〈魔王〉になりやすいか……」
「一理あるな。常人ではないのだから」
ミカエルが納得している。その目には熱い炎が見えた。
「人ならば知り合いが居た時、その者を気にするはずだ。が、奴はなかった。そのせいで、私が人の時の相方が死んだのだから」
正確に現場を見た訳ではないが、〈魔王〉になるの状態の処刑を、見に行った相方は数日待っても、帰って来なかった。
ミカエルにも、引っ張られる記憶があるようで、ラファエルは安心している。
『『『〈光邪滅〉』』』
「この数でなら逝ったな。闇よ邪よ滅びるべきは貴様らだ」
ミカエルは決まり手であると確信した。闇そのものに集められた光を当てれば、闇の崩壊は決まっている。幾つもの存在を葬り〈熾天使〉が出る幕を幾度無くした事か。
『うっ?! 原型を留めています!』
「何だと?」
『人型に! 黒い光が! こ、これはアビスぁあ"ぁ"ぁ"………は~いどうも~』
「切るか?」
「そのままだ。初めまして〈魔王〉私は〈天使軍〉総司令、ミカエルだ」
『あっ、やっぱり?』
ミカエルは理解が一瞬、追い付かなかった。ミカエルの名に『やっぱり?』の返しが解らなかったからだ。しかし直前の『アビス』で氷解した。
「〈奈落之一〉の手先か……成る程、だから魂を帝都で集めたのだな。だが、その程度で」
『いや、俺わ。自発的なんですが』
「そういう事にしておいてやろう。それで、何が目的だ?」
〈魔王〉の根幹でもあろう部分を質問する。復讐、征服、禁忌……それらにより成ったのだから、真面目な回答が来るとも思っていない問い。
だがゼノムは。
『嫁が天使だったからお仕事に行ったんだよね。目的が俺っぽいから、本社に直談判ついでに、お迎えって感じ』
馬鹿正直のように答えた。しかも〈魔王〉が副産物であるかのような口振りで。
またもや理解に時間をかける。そして。
「天使の名は?」
『名前からして同室にいないの? お~い、ラファエ~ル』
「「「…………おい…」」」
「やぁん」
三人の精神が飛びかけた。元凶が身内なのだから仕方がない。
「場合によっちゃぁ、断罪ものだぜ?」
罪への刑罰を司るウリエルが、決起しラファエルへ近付く。超重要事項を黙っていたのだから。
「白状せよ。軍団長からの命令だ」
「情報修正はしておかないとね」
優しくミカエルとガブリエルが、追及する。アプローチミスの先は、敗北である。神の軍としてそれは認められないのだ。
「今〈魔王〉ゼノム・ルマ=アウゴは私の夫です。離婚もせずに〈月〉への到着を優先しました」
『だからって何かしたら、世界ごと殺すぞ』
ラファエルの情報修正と共に〈魔王〉による宣戦布告。ミカエルの合図で『〈斬艦・黒桜路〉』の声を最後に、通信は切断された。
「随分と愛されているではないか」
「一日一回は抱き締め合うもん」
「今でもか?」
「……………ゼルなら……きっと……」
作戦全体の見直しが必須になり、緊急会議が開かれたのは言うまでもない。
Q 捻らないのは?
A 理由は後程
追記
Q 桜?リスペクト
A ただし、竜に思考回路が汚染された、邪神でもない友人のな




