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箱入リ娘  作者: 橘立花
6/10

第6話:ある日の朝食

1.


私は秋田県のとある民家で生誕した。

正確には父親と叔父と叔母と助産師に見守られて母親に出産された。

自宅出産関しては母親たっての希望であったのでそう決まったらしい。

だが、その時はなかなか出産に立ち会ってくれる助産師が見つからなく、

病院での出産を決めようとした矢先についに現れたのでなんとか自宅での出産になったらしい。

しかし問題はここからだ・・・

どうやら私の父親は、私を生むことを反対したらしい。

今の私から言わせてみればお前が妊娠させたのがいけないのだろうと言ってやりたい。

今の時代避妊の道具など普通のお店でも売ってるくらいなのだからそのぐらいは責任を取ってもらいたいものである。

そんな事はさておき、私の母親はそんな父親と反論を繰り返していた。

父親は私の母親に対して中絶、つまり人工妊娠中絶を勧めたが母親はそれを断固拒否したらしい。

一時期は離婚の話題も出たらしいが結局その事については父親はなんとか思いとどまったそうだ。

しかし人工妊娠中絶をしても構わない22週の期間に近づいてくるや否や父親は半ば強制的に病院に連れて行った。

母親はそのとき必死に抵抗したが子を授かっている一人の女の力では男の力には勝てなかったようだ。

だが、母親は男の隙を見つけてなんとか病院内から外へと抜けだした。

しかしそこで母親は妊婦としてはやっていけないことをしてしまった。

なんと階段から転落したのだ。

大抵こんな事をしてしまえば赤子はおろか母子共々怪我を負う。もしくは赤子、つまりは私が死ぬ。

だが奇跡的にも打ちどころ良かったためか私はこうして元気に生きている。父親の憎悪を孕みながらだが。

そのため私は幼少時代の頃から幾度ととなく父親の暴力を受けていた。

今となっては思い出となって残っているのだがその種類は数知れない。

今ではそれをまとめて虐待というのだと分かった。いや本当はもっと前から知っていたのだが。

暴力に関しては至ってシンプルなものが多かった。

主に殴る、蹴る、(はた)く等の暴行が多く中でも一番きつかったのは煙草の吸殻を腕や背中に押し付けられることだった。

父親は思ったよりかは抜け目がなくそういった事をあまり目立たない程度で済ませていた。

しかしその微々たる虐待も幼少時代の私からすればとてつもない恐怖の毎日である。

傷があからさまに残っていれば他の誰かが気づき何か手を差し伸べてくれると思っていた。

しかし夢は夢でしかなくそんなことは私に訪れなかった。

光は私を照らしてくれなかったのである。

よって私は光が照らさないまま暗い所で生きていたのだ。



2.


_____私の可愛い白雪。お前はもっともっと綺麗になってくれ。

男が私の正面に立ち、言った。

_____白雪ちゃん。僕達とずっとずっと遊んでようね。

周りにいる人形たちが私に囁いた。

_____「   」・・・私の大事な「   」あなたはどこにいるの。今いったい何をしてるの?

いつまでも待っているから帰ってきて。お願い。

私の知らない誰かが私に訴えかけてきた。

顔はもやもやしていてよくわからない。だがそんなに嫌な感じはしなかった。

私も知りたい。あなたが誰なのか。

白雪は横で寝ている私をどうこうするわけでもなく、掛け布団を掴んでガバっと起床した。





半分覚醒しつつあった私は、その音で完全に覚醒し目をゆっくりと開いた。

私の横では白雪がびっくりした顔で目覚めていた。

私は布団から腕を出し、目をこすった。

「どうした白雪?」

「怖い・・夢・・・怖い」

どうやら白雪は悪夢を見たそうだ。だがそれは今日に始まったことではない。

こういったことは以前からあり、そのたびにこんな会話が行われる。

しかしそれは毎日起こるというわけでもない。大概は1ヵ月に1度くらいの周期で起こり、酷いときは週に1回ぐらいだ。

「また夢か・・・白雪、平気だよパパがいるからね」

「パパ・・・怖いよぅ・・」

私は白雪を抱いて頭を撫でてやった。白雪自身も短い手をいっぱいに広げて私の腰をぎゅっと抱きしめてくれた。

「もう大丈夫だからね」

優しく白雪の髪を撫でてやる。

「うん・・・」

白雪は力いっぱい私を抱きしめてきた。

やはりどんな生き物というのにも恐怖というものは付き物らしい。

ほとんど知識がなかろうが恐怖というものは、生物の本能によってくるものらしい。

例えば猿なんかにしてみても、自分の身に危険を感じれば高い声で鳴きものすごい速度でその場から逃げようとする。

そしてもうひとつ例を挙げてみると、世界に4億匹いるといわれている犬もそういったことがある。

つまり知識と感情は完全にイコールでは結ばれないという事だ。

だが、私が思うに感情と本能は完全にイコールであると思われる。

こんな白雪でも感情だけはちゃんと一人前に身に付いているのだから。

「じゃあ白雪、朝食でも食べようか」

白雪を抱いていた手を放して布団を足元に払いのける。

白雪はまだ恐怖心が残っているのかなかなか私から離れなかった。

私はその状態でしばらく白雪の傍にいてやった。

「よし、じゃあそろそろ食べようか」

私がベッドから足を投げ出すと白雪は頷いてベッドから降りた。

そしてベッドから降りた私は扉を開け、まだ寝起きのため動きが鈍いのか重い足取りでキッチンへと向かった。


白雪は椅子に腰を掛けており私はいつも通りに籠から食パンを取り出していた。

「白雪、今日はどの味がいい?」

「いちご」

即答であった。そう言えば最近朝食でのジャムはイチゴ味しか食べていなかったような気がする。

私は二つ溝のあるトースターに食パンを入れ、食パンを焼いている間にマーガリンを冷蔵庫から取り出した。

「そういえば白雪、何で最近はイチゴジャムばっかり食べるんだ?」

これは先程の疑問だった。

「う〜ん、白雪、イチゴジャム好き」

最もな意見であった。たしかに何度も食べるという事はそのジャムが好きという事だ。

「そうなのか、それと白雪。今日は新しい友達を連れてきてやるからな」

新しい友達というのはそのままの意味ではなく、もちろん白雪の部屋に数多く存在するぬいぐるみのことだ。

「本当?新しい友達」

「あぁ本当だとも、楽しみにしててね」

「うん」

そしてちょうどよくトースターがチンという音を上げて、先程入れてあった食パンがトースターの溝から半分ほど顔を覗かせていた。

私はこんがりとキツネ色に焼けた食パンにマーガリンを塗りつけた。

食パンの表面ががテカテカをつやを見せ始めた辺りで私はジャムの蓋を手をかけた。

ジャムの蓋は最初に開けた時よりかは簡単にパカッと開いた。

ジャムの中にスプーンを突っ込み食パンにそれを塗りたくった。

私の方にもジャムを塗ったが白雪の食パンと比べると薄く塗ったつもりだ。実をいうとあまりジャムは好きでないのだ。

「よし・・・白雪、できたぞ」

そう言って、テーブルの上にイチゴジャムで赤く彩られた食パンの乗ったお皿が置かれた。

「いちご、いちご」

白雪はお皿を手をとり食パンを両手の指先で持った。

だいぶ前に手の全体で持ったら熱く、手を火傷しかけたことがあって以来同じ(てつ)は踏まなくなった。

「いただきます」

白雪の手にした食パンがカリッとという音をたてて小さい口の中に入って行った。

「美味しい」

私も白雪を食べるのを見送った後トーストを口に運んだ。

口の中では甘いイチゴがバターの為り替わりであるマーガリンに包まれて胃に落ちて行った。



私は玄関に立ち、外への扉に手を掛けていた。

「じゃあ白雪、出かけてくるよ」

「お友達連れてきてね」

後ろで白雪が言った。

「うん」

そう言って私は外に出た。

玄関先に止まっている白のシボレーの鍵を開け車に乗り込んだ。

教習所ではマニュアルだったが、今の時代となってはやはりオートマチックが一番楽だということなので

もちろんこの車はオートマチックだ。

さて、そんな事はさておき今日は姉の希望で姉の家にお邪魔することになった。

そのため私は姉の住んでいるアパートに向かっている。

少し前までは一軒家に住んでいたのだが、夫と子供が居なくなった家で住むというのは辛いということで、

家を売っぱらいとあるアパートで一人暮らしを始めた。

今となってはその原因は私というのが明らかだ。

私が、赤子であったときの白雪、つまり姉の子供の静奈ちゃんを誘拐したことによってすべてが崩れたのだ。

子供誘拐されたことにより夫婦は仲違(なかたが)いを始めて、とうとう離婚。

そして今この現状があるということになる。

姉に私が犯人だといったら間違いなく私に対してこう言うだろう。

『人の皮を被った悪魔』と。

しかしこれは妄想でしかなく本当はそうとは限らない。もしかしたら何も喋れなくなるのかもしれない。

何が起こるかわかない。だから楽しいんだよ人生は。








すいません・・・今までで一番短いです。


どうも風邪気味っぽいので動けません。


という事で次の試験が近い中、受験勉強との両立を頑張り更新していきます。


見捨てられなければ幸いです

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