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第2話 おっさんは冒険者登録をする

 アランは街へ入り多くの屋台を抜けギルドへと目指す。野菜や果物、魚に肉と多くの品物が売られていて街は賑わっていた。村で過ごしていた時もここまで人がいたことはなかったためアランにはこの光景がとても新鮮に見えた。


 ギルドへと歩いていると段々と屋台は消えて飲み屋や道具屋などが多くなっていた。これも利用者が使いやすいようにと考えられているのだろう。アランは感心し辺りを見回す。


「よお兄ちゃん。変な格好してるけどよそもんかい?」


 アランよりも歳を取っているだろう一人の男がアランに話しかける。道具屋なのだろう。多くの武器や防具、その他にも鞄やナイフなど狩りをするための道具などが一目に見えた。


「あぁ。この街には始めてきた。」

「そうかい。迷い無く歩いてる辺り冒険者になるんだろ?金が余ったらうちに寄っててくれよ」

「その時は世話になる」


 アランは一言、道具屋の男に言うとギルドへと足を運んだ。


 周りにいる人達が、ギルドに近づくにつれて皆冒険者の格好をしている。腰に刀を差した物やでかい槍や剣を背負ってる者、様々な者達がいてアランは少し笑みを浮かべた。


――自分の力がどれ程あるのだろう。


 思考して歩いていると、気がついたら大きな建物の前へと着いていた。アランはギルドの門を叩き中へと入る。


 アランに集められる視線。その視線は値踏みするような冒険者達の視線。


「こんなものなのか」


 アランはそう呟いた。


 冒険者達の視線を感じこの程度の者かと辺りを挑発する。実際にはアランは「もっと冒険者の人数は多くいると思っていたが案外少ないな」という意味で言ったが周りにはそう伝わらなかっただろう。一人、また一人と立ち上がる。よそ者に馬鹿にされた屈辱を仕返すために。


「すまない。冒険者登録はここか?」

「……え?は、はい。受付はここで致しますが」


 怒る冒険者達に目もくれずアランは登録を済ますために受付へと足を運んだ。


 受付をしている女性は混乱する。


 どうすればこの事態を回避できるか。例え受付を済ましてもすぐに喧嘩になるのは眼に見えている。最悪は登録中に喧嘩になることもありえるだろう。冒険者たちの怒りに気がついていないアランの鈍感さに受付は感心し呆れる。


「それでは、私――受付のミーナが担当させていただきます。こちらに記入事項を書いてください」

「……すまない。字を書くことが苦手で」

「なら私が代わりに書かせていただきますので質問に答えていただきますか?」


 ミーナは紙に記入するためにアランにいくつかの質問をした。名前、年齢、住んでいた地域。具体的に答えられたのはそれだけでミーナも困っていた。


「……えーっと。アランさんで年齢は30ぐらい。住んでいた地域は森でよろしいでしょうか?」

「あぁ。」

「それでは、登録料として銀貨50枚が必要になりますがお持ちでしょうか?」


 また困った人が来たなとアランを見てミーナは考えていた。アランのような男は例年多くない。身元も定かではない人も冒険者として働くことはある。この手の人は大体金が無く自分の持つ貴重品を売り、冒険者登録をする。だがその後は、道具なんかも買えずに金を得ようと危険なクエストに行って受付の言葉を無視し命を落とす。そんな人をミーナは散々見てきた。


「すまない。金がないから換金して貰えると助かる」


 ほら見ろと長年の経験から同じ様な人が来たと当たったことを心の中で思う。アランの鞄から取り出される貴重品は一体どれぐらいのはした金になるのかと思い鞄の中から物を取り出す。



「……え?これもしかしてワーウルフの皮じゃないですか!?」


 ミーナの高い声がギルドへ響いた。


 アランへ今にも殴りかかりそうだった冒険者達は動きを止めた。アランの鞄からワーウルフの皮が出てきたと騒いでいるミーナを見てギルドの中にいた冒険者達も騒ぎ始める。


 ワーウルフは上位の冒険者でも狩ることが難しいためワーウルフの討伐クエストも報酬金は高く腕に自信のある冒険者がパーティを組んでやっと受けに行くといったレベルの難易度だ。素早さも並みの獣と違い素早く牙と相手を噛む顎が異常に発達していて基本的な狩猟は罠を仕掛けて仕留めるのが普通だ。そのため皮は傷がつきやすい。アランの持ってきた皮には罠をしかけて仕留めた形跡が無いのだ。それもそのはず、何せアランは蹴り殺したのだから。


「ど、どうやってこのワーウルフを!?」

「蹴り殺した。ただそれだけだ。」


 アランの声は静まったギルドへ良く響いた。立ち上がった冒険者は座りなおし、今にも拳を振るおうとアランの元へと向かっていた者は回れ右をして静かにその場を立ち去った。


 それほどの実力差をたった一匹の死骸で示すことができるほどこの獣は強いのだ。


「貴方は本当に人間ですか!?ワーウルフは冒険者さんの中でも苦労する獣ですよ!?それを蹴り殺したって!」

「まぁ。とりあえず落ち着いてくれないか?それと換金をお願いしたいのだが」

「……えぇ。わかりました。専門の者をお呼び致しますので少々お待ちください!」


 ミーナはアランにそう告げると慌しくギルドの奥のほうへと走っていった。


「おい新人。お前がワーウルフを殺ったのか?」


 ミーナがいなくなり何をして良いのかわからず呆然としていたアランに一人の青年が話しかける。その青年は大きな大剣を背負った大柄な若い男だった。


「あぁそうだが……」

「けっ。大方、弱っているところを隙を突いたとか卑怯なまねしたんだろ?」


 若い男はアランにイチャモンをつけるために確証のないでたらめなことを言う。周りもそれに合わせざわざわと話がはじめる。


 曰く、新人がこんな大物を仕留めることが出来るはずがない。


 曰く、ワーウルフを仕留められる程の実力のあるおっさんが今まで、世に名が広まらなかったのがおかしい。


「いや、普通に蹴り殺して仕留めたんだが」

「ワーウルフを蹴り殺すだぁ?それこそおかしいだろ。本当に蹴り殺せるんなら今ここでワーウルフを蹴り殺した実力を見せてみろよ。」

「それは貴方と戦えということか?」


 若い男は背負った大剣に触れる。こいつを殺せばワーウルフの皮は俺のものだ。若い男はそう考えていた。あとはどうやって理由をつけるか。ギルドとしては喧嘩による殺人を禁止しているがあくまでも試合中、鍛錬中に起きた事故として片付ければ、それ以上は言うことはない。腕の一本や二本切れば逃げ出すだろうそう考えていた。


「あぁ。ルールは簡単だ。相手を気絶させるか。降参するかだ」

「ふむ……。良いだろう、いい腕試しになりそうだ。」

「おう。それじゃあ訓練場へ案内するぜ。」


 若い男は高笑いをし外へ出る。その後にアランが、ギルドの中にいた冒険者達が後を続く。


 訓練場はギルドのすぐそばにある。ここでは主に冒険者達が力をつける特訓や訓練をするために作られた場所で大きな壁に囲まれたコロッセオのような場所だ。アランたちのやり取りで気になった冒険者達は2回の観客席にて酒を飲みアラン達を見守っていた。


「さっき言ったとおりルールは相手を気絶させるか、もしくは降参させるかだ。コインが落ちたら試合開始だ。」

「わかった」

「じゃあ始めるぞ。俺のことはワーウルフだと思って良いぜ。本当にワーウルフを蹴り殺したのならな」


 男はコインを高くに投げる。


 放り投げると背負っている大剣を抜く。アランに向かい剣を構え、今にも飛び出しそうな殺気を放つ。対してアランは変わらず落ちてくるコインを眺めていた。


 コインが地に着いて音を鳴らした瞬間、若い男は地を蹴る。


 アランへと振るった大剣の一振りは空を切った。若い男の視線の先にはアランが立っていた。確かに若い男はアランのいた場所に大剣を振るっていた。振るわれる直前にアランは地を蹴っていた。バックステップで避けられたことに気付き若い男はもう一度、大剣を振りなおす。だがワーウルフを蹴り殺したアランにとってその動きは余りにも遅かった。


――蹴りが来る。


 若い男にも分かったのだろう。咄嗟に大剣を振るうのをやめ、アランの攻撃をガードする為に大剣の刀身を立てる。


 ガードは間に合った。アランの蹴りが大剣の刀身に当たる。アランは前蹴りで大剣の刀身を蹴っていた。若い男はほくそ笑む。蹴った状態のアランを切り倒そうと立てた大剣を掴みなおしアランへと振るおうとした。


 だが大剣は余りにも軽かった。


 アランの前蹴りによって男の大剣が壊れる。男の大剣が壊れたことにより若い男が試合に負けたことは観客席から見ていた者にも明白だった。若い男もその事実に驚きながらも降参をしようと口を開く。


男の口から言葉が発せられることは無かった。


 アランは大剣を壊し体勢がぶれた男の隙を狙い回し蹴りを腹へと放っていた。若い男は蹴りの衝撃で吹き飛び、訓練場の壁は崩れ若い男は壁に穴をあけて倒れていた。


「すまない。蹴りすぎてしまったか」


 アランは男の元へと一歩、また一歩と駆け寄る。


 その姿はまさに獲物を確実に殺す狩人の姿。それに恐怖した観客席にいた冒険者たちは、観客席から飛び降り若い男の様子を確認する。幸い呼吸はまだしているため急いで医務室へと運んで行った。手際の良い冒険者たちにアランは感心し、一人取り残された訓練場でどうしたら良いのか呆然としていた。




蹴りってかっこいいですよね……!

戦闘描写をまた書き直すかもしれません。

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