彼への気持ち。
名前も知らない彼らが頭に思い浮かぶのは赤髪の凄く綺麗な男の人に会った日からだ。
気分転換にとリュードと一緒に森の外へ出て散歩をしていた時に彼と出会った。
(本当に綺麗だったなぁ…あの人。それに不思議な魔力だったし…。)
リュードが用事を思い出して学校に行っている間に私は何かに導かれるようにフラフラと校舎の裏へと歩いて行った。
そして、建物の影になっているあまり目立たない場所にその人はいた。
色とりどりの花々に囲まれた赤髪の男の人はとても神秘的な雰囲気を持っていて、息をするのも忘れてしまいそうだった。
けれど、その花を見ている瞳はとても悲しそうで…その人の泣いている姿を見たら放っては置けなかった。
「そういえば、何であんなに私の髪を見てたのかな…?」
話し掛けると凄く驚いた顔をされ、何故か髪をずっと見られた。
銀髪が珍しかったのかな?でも…探せばいるだろうしな銀髪。
彼は別れる時も悲しそうな表情をしていて、私まで泣きそうになってしまった。
勝手に居なくなってリュードに心配を掛けちゃったから反省しなくちゃなのに…あの人の事の方が気になって仕方無い。
今は泣いてないのだろうか、とか。
もう悲しくないのだろうか、とか。
(言い過ぎた…よね。やっぱり…。)
リュードに凄い剣幕で詰め寄る彼に私はかなり強い口調で言い返してしまった。
あの時の傷付いた彼の顔が忘れられない。
それに、あの人は私の事を「トト」と呼んでいた。
どうしてか分からないけれど赤髪のあの人にもう一度会えば何かを思い出せる気がするのだ。
根拠の無い自信が何故かあった。
「うん。確かめてみる価値はあるよね」
「何を確かめるんだ?」
「ひゃ!っ、リュード!驚かさないでよ!!」
「くくっ、すまない。随分と悩んでいたから反応が気になってな」
「もう…お帰りなさい、リュード」
「あぁ、ただいま」
後ろから急に抱き締められて物凄く驚いた。
リュードは反応が面白いからと言って、いつもこうやって私を驚かす。
結局は許しちゃうんだけどね私もさ。
いつか必ず仕返ししてやるのだ。
今はリュードがひっくり返るようなサプライズを考え中だったりする。
「それで?何を確かめるんだ?」
「あ、えっとね。この前、私達が会った赤髪の男の人が居たでしょう?
その人にもう一度、会おうと思ってるの」
「何故?」
「私が記憶を思い出すきっかけになる人かもしれないの。それを私は確かめたい」
「………そうか」
リュードの私を抱き締める腕の力が強くなった。
彼から少しの緊張を感じた。
私は何か彼が不安になる事を言ってしまったのだろうか。
体の向きを変えてリュードに向き合い、私も抱き締め返す。
大切な彼を不安にだけはさせたくない。
「もし、私があの人に会う事がリュードの不安になるのなら会わないよ」
「ノアール…」
「記憶も大切だけど、今の私には貴方の方がもっともっともっと大切なの。だから私は大丈夫よ」
「………っ、好きだノアール」
「!」
唇に柔らかな感触を感じた。
何秒間か固まって、それが何かを理解した瞬間にボボボボッと顔が赤くなる。
い、いいいいいいいいいいいいい今?!
何と何がくっついた?!
ふぇ?!え?!ちょ?!ふぇぇぇぇ?!
「あ、の、え、と、え…」
「好きだ。俺もノアールが何よりも大切だ」
「っリュード…」
頬や額に優しくキスをされ、私の頭は爆発寸前…というか、もう爆発していた。
(リュードの顔がちゃんと見れない…!!)
真っ赤な顔を隠すように私はリュードの服に顔を埋めた。




