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悪役令嬢?…いや、ご遠慮したいです。 作者:桜 さつき
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天然って本当に恐ろしい。

昼休み、ふと学園の隅に咲く花がかなり珍しいものだと気付いて思わず足を止めたのがいけなかった。

薬剤師として薬草になりそうな植物を気にするのが癖で今回も観察に夢中になって授業開始の鐘を聞き逃してしまったのだ。


「またリオネちゃんとミケ君に怒られる…」


前にも私が植物の観察に夢中になり過ぎて、二人を心配させた事があったのだ。

申し訳ないとは思うが、ここは開き直って今は観察を続けることにする。
運が良いことに今の時間は魔法学の授業。
得意分野なので気にする必要は無い。


「さぁ!続きを始めるわよ!」
「授業をサボっての植物観察とは感心しないな」
「ひゃ?!」


耳元で急に聞こえた声に驚き、後退るとそこにはクククッと笑いを堪えている私の良く知る人物が立っていた。

成長して声が変わったから、かなり驚いてしまったではないか。


「い、いつお戻りになったんですのランジェ様?!」
「ついさっき仕事が全て片付いたんだ。…ところで、何故トワ殿はここにいるんだ?今は授業中では?」
「そ、それは…」
「ふっ…まぁ俺もトワ殿と話したかったからちょうど良かった」


数ヶ月ぶりに見たランジェ様は相変わらずの美しさだった。
大人の色気と言うのだろうか。
子どもの時からだが、成長してからのランジェ様のモテっぷりは本当に凄い。

何人かの女子生徒が本気で嫁になろうとしている話を良く耳にするくらいだ。


「入学おめでとう。祝いの言葉が遅くなって申し訳ないな」
「お手紙をくれたじゃないですか。とても嬉しかったですわ」
「そうか…喜んで貰えたなら良かった」


入学の三日前に手紙をくれたランジェ様。
本当に優しい人である。

植物観察を切り上げ、ランジェ様の後について行くと校舎の端にある扉の前まで来た。
ここ…確か、開かずの間って言われてなかった?


「ランジェ様…ここって…」
「俺の仕事部屋だ。人が多くいる場所はどうも落ち着かなくてな…だから端に部屋を造って貰ったんだ」
「なるほど」


ランジェ様によると、誰も入れないように厳重に防御魔法をかけているという扉。
少しの魔法じゃ開かない仕組みになっているようだ。

そりゃ「開かずの間」って言われるよね。

びくともしなかった扉がランジェ様が触ると、簡単に開き始めた扉。
中は彼らしいシンプルな造りになっていた。


「コーヒーと紅茶、どちらが良い?」
「では…紅茶を頂きたいですわ」
「分かった」


魔法でティーポットやティーアップを操り、紅茶を淹れていくランジェ様に笑いが溢れる。

しっかり者の彼は実はかなりの不器用なのだ。

リオネちゃんがお裁縫を一緒にしたいと言って、やった時は何故か手が血だらけになってしまったランジェ様。
針一本であそこまでの大災害を起こせる人はなかなかいないだろう。

それからはリオネちゃんから細かい作業は絶対にしないという禁止令を出されていた。


「自分でやるとリオネに叱られるからな。魔法ですまない…トワ殿の様に上手く淹れられないのだ」
「怪我をしないことが大切ですわ。それに、ランジェ様が淹れて下さった紅茶もとても美味しいです」
「そうか、それは良かった…」


安心した様子のランジェ様にまた笑みが溢れたが、そろそろ本題に入ろうと姿勢を正した。

予想だけど…多分、間違いなくヴァン君のことだと思うんだよね。ゲームでもこの時期になるとヴァン君が登場してたから。

案の定、ランジェ様が話し出した内容はヴァン君のことで登場人物コンプリートの文字が頭に思い浮かんだ。


「俺の補佐が前から欲しくてな。何も知らない赤の他人より友人のヴァン殿に是非頼みたい」
「確かに、ヴァンなら防御魔法の補佐はとても適任でしょうね」
「あぁ。調べてみたら彼の防御魔法の知識は凄かった」


ヴァン君はあの侵入者事件があった時から独自で防御魔法を学んで、自分の火属性の魔力を防御魔法と融合する技術を磨いていた。

家族を守る為だと言われた時は嬉しくて泣いてしまった。

…と、とにかく。
ヴァン君の防御魔法の知識は豊富だし、ランジェ様とも凄く仲が良いし、補佐は適任だと断言出来る。

ゲームでは家にいたくなかったヴァン君からランジェ様に頼み込んでた気もするが…細かいことは置いておく。


「年齢は十五歳だが、ヴァン殿の能力なら問題無いだろう。入学許可書を学園長に頼んでおく」
「ありがとうございます。ヴァンをよろしくお願い致しますわ」
「こちらこそ許可を貰えて良かった。ヴァン殿に話したら、迷い無く首を縦に降っていたからな」


まだ学園に入ってから一週間しか経っていないのに、ヴァン君が懐かしい。
私の自慢の義弟を早く皆に見せてあげたい。

ヴァン君もかなりのイケメン君に成長したんですよ。多分、おモテになることは絶対だろう。

ゲームではイケメンだけどヤンデレとして遠巻きにされていたヴァン君がここでは爽やかイケメンなのだからね。

姉として頑張った甲斐がありました。


「明後日には学園に来るだろう。俺の部屋に案内しているから、朝礼前にここへ来ると良い」
「分かりましたわ。ヴァンを迎えに来れば良いのですわね。お任せ下さい!」
「あぁ、頼む。…またトワ殿とこうして話せる日が来れて本当に良かった」
「?!」


向かい側のソファーから手を伸ばして私の頭を撫でてきたランジェ様…の顔に私は固まった。

今まで見たことが無い様な腰が砕ける様な甘い笑顔。

これ絶対、ゲームだったら画面がスペシャルバージョンになるくらいのイベント笑顔だって。


(う、うわわわわ…さ、流石に照れるな…。)


昔に比べてランジェ様は良く笑う様になったけど、こんな反則な笑顔…駄目ですって。

顔の前でパタパタと手で扇ぐ。
少しの風でも今はありがたいくらい暑かった。

主人公はいつもこんな殺人級の笑顔を見ていたのか…凄いな主人公。


「お、大袈裟ですわランジェ様ったら」
「…む。そうか?自分でも何故こんな嬉しいのか分からんのだ」
「そ、そうですの…」


ランジェ様のド直球過ぎる言葉の威力はいつになっても慣れない。

ゲームの主人公が絶えず赤くなっていたのも納得出来るよ。


(はぁ…取り敢えず、明後日が楽しみってことだけを考えようっと。)


思考をこの甘ったるい雰囲気から切り換えないと、顔の熱は引かないだろうからね。
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