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悪役令嬢?…いや、ご遠慮したいです。 作者:桜 さつき
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永遠の誓い。〜ヴァン視点〜

当たり前になっていた穏やかな日常に俺はかなり油断していたらしい。

背後に忍び寄る人影に気付けず、馬乗りになって押さえ付けられてしまった。

地下街で生活していた頃は寝る時まで神経を研ぎ澄まし、誰かの気配を感じるようにしていた俺がだ。

反撃しよう思ったが、聞こえてきた男の笑い声に俺は思わず動きをとめた。

その声を俺が忘れる筈が無い。
俺を監禁していた貴族の男だとすぐに分かった。


「何で、お前がここにいる…しかも、どうやって警備を掻い潜ってきた?」
「おお。嬉しいねぇ…私を覚えててくれたのか。私もお前のことが忘れられなくてね。くくっ、会いに来てしまったよ」
「今更、俺に何の用だ」
「………チッ、何だその態度は。生意気言いやがって。こっちはお前のせいで全て失ったんだぞ?!」


焦っては駄目だと自分を落ち着かせ、冷静に話し掛けるが、声からして相手はかなり興奮している様だった。

グイッと髪を掴まれ、無理矢理顔を上に上げさせられる。


「貴様に復讐する為だけに闇魔器なんて物を手に入れてまで来たんだぞ私は!!」
「っ、お前が勝手に俺を拾って勝手に手放しただけだろ…!自業自得っつーんだよっ、そういうのは…っ」
「黙れ黙れ黙れ!貴様なんか誰も必要としないんだ!このアトリエス家がお前を養子にしたのだって間違いだったと思う筈だ!!
お前は所詮、薄汚れたガキでしかないんだよ!」
「…っ、」


男にそれを言わた瞬間、包帯で巻かれていた目が燃えるように熱くなっていった。

そして、俺の体から発火した炎に男が驚き飛び退いた時には既に自分の魔力をどう制御して良いのか分からなくなっていた。


「お前みたいな出来損ないのガキに居場所なんか無いんだ!魔力を操れないやつはただの化け物でしかねぇんだよ!!」
「うるせぇ!!!」


叫ぶとドンッと地面が大きく揺れ、激痛のする目を押さえる。

男の言葉が俺の頭を占領する。


「ははははは!このまま自らの炎で焼き死んでしまえ!!何とも滑稽だ!はははははっ!!」


男の声が遠ざかり、ドームの中には俺だけになった。

焼かれた包帯が落ちると今まで見えなかった景色が見え、俺は涙を流していた。
辺り一面に広がっていく炎…自分の火で死ぬなんて確かに滑稽だ。


(トワ…トワに会いたい…。)


あの優しい声を聞きたい。

けど、あの男が言った通り俺は薄汚れたガキでしかない。
そんな俺があいつの傍にいては駄目だと分かっている筈なのに……なのに、今、トワに会いたくて仕方が無い。


「トワ…っ、」


その場に踞り、ただトワの名前を呼ぶ。

助けてくれと届く筈の無い言葉を唱える。


炎が建物内全てに行き渡り、目を閉じて愛しい存在を求めていると風が吹き荒れ、そして雷の落ちる音がした。

俺の意識はそこで一旦、落ちた。

次に目を開けた時には目の前に俺が会いたかった存在が涙を浮かべながら、俺を抱き締める腕を震えさせていた。

その優しさにまた涙が溢れる。


だが、男に言われた言葉が俺の思考を奪う。

傍にいては駄目なのかと居場所はないのかと不安を口にした時、トワは泣きながら怒ってくれた。


「何を言っていますの?!誰が何と言おうと私達は家族よ!ヴァンが鬱陶しがるまで、ずっと一緒にいてやりますわ!」

「でもも何も無い!貴方は私の愛する大切な家族の一人なのよ?!何か文句があって?!」


いつも彼女は俺が迷っていたら助け出してくれる。魔法の様な言葉をくれる。

俺にはトワが必要だ。


俺の暴走をとめ、男と対峙した時もずっと俺の手を握り、柄にもなく震える俺の手を大丈夫だと言って温めてくれた。


「ヴァンちゃん、貴方は私が誇りに思う立派な息子よ。あんな男の寝言なんて聞いたら耳が腐るだけだわ」
「君は既にヴァン・アトリエスなんだ。堂々とアトリエス家を名乗って良いんだからね」
「僕の大切な妹と義弟を傷付けるやつは抹消してやるからな。任せておけ」


お母様とお父様、そしてクオン兄さんの言葉を胸に刻み込む。
俺にはこんなにも素晴らしい家族が出来たのだと今なら堂々と言える。


「ヴァン!大好きですわ!!」
「?!」


そして、この無自覚に抱き付いてきて頬にキスなんかをしてくる俺の大切な姉の傍にずっといると俺は決めた。

トワに守られる義弟じゃなく、トワを守る男になるのがその日から俺の目指すものとなった。


「覚悟してろよトワ」
「?何か言ったかしらヴァン?」
「いーや、何も」


この金木犀の花に誓う。

いつの日か俺がお前を守れるだけの男になったら言おう。

「愛してる」とーー…。
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