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悪役令嬢?…いや、ご遠慮したいです。 作者:桜 さつき
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彼の不安、そして暴走。

唐突ですが言わせて下さい。

ヴァン君、まさかの超天才児でした。


一週間前から始めた魔力操作にも関わらず、ヴァン君はどんどん上達していって今では少しの魔法なら簡単に出来る様になった。

教授もヴァン君の成長には驚いていて、この分だと後少しで目の包帯も取れると言っていた。


ちなみに、ヴァン君の魔力は「火」だ。
ゲームの中でも彼の力はとても強く、よく炎のドラゴンを作っていた。
芸術的センスもあるんですよ彼。


「では、十五分間の休憩を致します。トワ様もヴァン様も素晴らしい成果です。
今日のノルマがあっという間に終わってしまいましたので次のステップに進みたいと思います」
「ありがとうございます、教授。
あ…そうだわ、ヴァン。私、部屋に魔術書を取りに行ってくるわね」
「分かった」



コクリと頷くヴァンの頭を撫でる。
まだ私より少し小さい背とぶっきらぼうな口調とは反対に必ず私の後についてくる義弟が今では可愛くて仕方無い。

今も撫でても「な、何だよ…」と呟いたっきりされるがままだし。
私の周りには可愛い子達が溢れている。天国か。


「ふふっ、今日はお兄様と一緒にチェスで遊びましょうか。とても強いのよ、お兄様」
「…久しぶりに兄さんと会うな」
「あら、本当?そしたら、尚更一緒に話す時間を大切にしなくきゃだわ」
「ふっ…そうだな」


お兄様とヴァン君は普通に仲が良い。
私に対するシスコン状態ではないけれど、よくヴァン君を誘って乗馬をしている様子などを目撃する。
男同士、気軽に話せるのだろう。


(うんうん。良い傾向だ。良かった良かった。)


ヴァン君と別れ、本棚から魔術書を取り出し内容を確認しているとドンッッと大きな揺れが私を襲った。

これは明らかな魔力暴走による揺れだ。
しかも、この魔力の波動は私の良く知る人物…ヴァン君のもの。

急いでヴァン君達がいる建物へと走っていった。

魔力の鍛練は「ドーム」という建物内で行っていて、そこは魔力の力を吸収する壁を使っているので外へ魔力が放出されない。
つまり、中で魔力が抑制されているので外は安全なのだ。


「っ、教授!ヴァンは?!」
「トワ様!ヴァン様が魔力暴走を起こしてしまい…今はドームに閉じ込めている状態です!」
「原因は何ですの?!ついさっきまで普通だったじゃない!」
「原因は…あの男です」
「彼は一体…」


教授が指差した近くの木には、木の枝できつく縛られ気絶している一人の男がいた。
頬はやつれ、体は黒く汚れ、お世辞にも綺麗とは言い難い服装をしている。

男はレインとリリィが見張っている様だった。

そっちは二人に任せ、私はヴァン君を一刻も早く助け出さなければだ。
このまま何もしないでいたらヴァン君自身の火で自分の体を焼いてしまう。


「ハヤテ!少しの間だけで良い!風で炎を一ヶ所にまとめて欲しいの!!」
「キュイ!」
「な?!中へ行くのですかトワ様?!
危険です!何か別の方法をお探しになって下さい!!」
「私の家族が中で苦しんでいるのです!そんな悠長なことを言っている暇はありませんわ!!」


トワ様!と後ろから教授の声が聞こえたが、構わずにドームの扉を開け中へ入る。

すると、息をするのも難しい程の熱気に包まれた。
肩にとまるハヤテもかなり辛そうだ。

燃え盛る炎で真っ赤な景色しか見えない状況の中、必死にヴァン君を探す。

そして、建物の中心部に踞るようにヴァン君は頭を押さえ何かを呟いていた。


(いけない…!自我が殆ど無くなってる…!)


炎の勢いが凄すぎて前に進めず、これではヴァン君に近付けない。

水属性の魔力なら火属性の暴走をすぐにとめることが可能だけれど生憎、私は雷属性。
教授も火属性だし、レインは最も相性の悪い土属性。
一か八かでハヤテの風と私の雷の合成魔法でやるしか方法はない。


「ハヤテ!天井付近で風で炎をまとめて!私が雷で炎を消すから!」
「キュイーー!」
「よし…ここで決めなきゃ女が廃るぞトワ!」


急上昇で天井へと飛び立ったハヤテは大きな翼で強風を起こし、辺り一面の炎をヴァン君の頭上で一つの大きな球体にした。

風で立つのもやっとだけれど、根性で踏ん張り、手を地面にかざす。


「落雷よ轟け!雷槌よ!触れた全ての物を破壊せよ!破壊(ロスト)(クラック)!!」


詠唱は力を増幅する威力を持つ。
普段はあまり使わないが、今回は緊急事態なので流石に唱えた。

球体になった炎をガシャーンッッという鼓膜が破れそうなくらいの音を発して無数の雷が包み込む。
そのまま炎を抑え付けるイメージで雷で出来た檻を縮めていくと炎が段々と消えていき、最後は雷を解除して暴走はとめられた。

息つく暇も無く、倒れたヴァン君のもとへと走って、上体を起こした。
炎で焼かれたのかヴァン君の目には包帯が既に無く、かわりにきつく目が閉じられていた。


「ヴァン!ヴァン!大丈夫?!しっかりして!」
「ぅう…ト、ワ…?」
「!えぇ、そうですわ!私よ!トワよ!」
「…俺、…トワの隣にいても……良いのか…?俺は…いらない…?」


うっすらと目を開け、そこから涙を流しながら私の頬に手を伸ばすヴァン君。
それは酷く悲しい声音をしていた。

頬にあるヴァン君の手を握り返し、彼の初めて見る深緑色の瞳を見つめ返す。決してそらさぬ様に。


「何を言っていますの?!誰が何と言おうと私達は家族よ!ヴァンが鬱陶しがるまで、ずっと一緒にいてやりますわ!」
「でも…」
「でもも何も無い!貴方は私の愛する大切な家族の一人なのよ?!何か文句があって?!」
「……ごめん、…ありがとう。はは…トワまで泣いてどうすんだよ」
「な、泣いてませんわ!…ずびっ」


無事だと知った瞬間、緊張感が切れて我慢出来ずに涙が溢れ出す。

ヴァン君はその間、ずっと私の涙を親指で拭ってくれた。
これじゃどっちが年上か分かったもんじゃない。


その後、外で待機していた…というか中に入るのをとめられていた家族全員に私とヴァン君は抱き締められた。
お兄様なんか泣いていた。ごめんね。

教授は火属性の暴走を雷属性で静めるなんて前代未聞だと言っていた。
それと、無謀すぎるとかなり怒られた。ごめんなさい。


「レイン、ありがとう。貴方が縛ってくれたのよね?」
「うん。このおじさん、ヴァンに対して凄く酷いこと言ったから縛ったの。
だから、ヴァンも苦しくなっちゃったんだよ」
「そうなんですの?ヴァン?」
「あ…」


ギュッと一歩下がって私のドレスの裾を掴み、顔を伏せてしまったヴァン君を私は横目で確認した。

前に向き直り、にーっこりと男に微笑めば男は顔を青白くしながら体を震えさせた。

あらあらやだやだ怖がっちゃってもう。

私の大事な大事な義弟を泣かせた罪は重いですからね?
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