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悪役令嬢?…いや、ご遠慮したいです。 作者:桜 さつき
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彼の温かさ。

ヴァン君を迎える準備は万端!と思っていた私だったが、これは大変かもしれない…と現在進行形で焦っていた。

目に包帯を巻いて、音だけを頼りに佇む彼を私はドレスの裾をギュッと握って見つめた。


「この子の名前はヴァン。母さんから聞いていたと思うが、今日からお前の義弟になる子だよ。
ヴァン、僕の娘のトワだ」
「…ヴァンです。よろしくお願い致します、トワ様」
「トワ・アトリエスですわ。よろしくね、ヴァン」
「………はい」


お父様の隣に下を向いて立つ彼の手を取って挨拶をすると、一瞬ビクリとヴァン君は体を震わせた。

ストレートの茶髪を後ろで軽く結び、儚げな印象がある男の子。
その印象を助長するのは細くなった手首や体。
今にも折れてしまいそうだった。

ヴァン君の目に巻かれている包帯は、彼の魔力が原因だ。
まだ自分で制御出来ない魔力。その魔力は時に自
らの体を傷付けてしまう。
この現象は「魔傷」と言われている。

彼の場合は目が一時的に見えなくなってしまうもので、今のヴァン君には真っ暗な景色しか見えていない。


(不覚だった…トワとヴァン君の出会いはこれが理由で最悪になっちゃったんだった…!)


彼の見た目を恐ろしいと感じてしまったトワとそれを感じ取り、余計に拒絶を示したヴァン君。

それが原因でヴァン君は余計にアトリエス家には自分の場所が無いと思い、部屋に閉じ籠り人を拒絶した。

そんなヴァン君を一人にする様なことは私が絶対に阻止してやる。
彼の手を握る力を強くする。


「ヴァン!貴方の為に庭園を造ったのだけれど、是非一緒に来て見て欲しいの!」
「あの…俺は……今、見えないですし…」
「私が貴方といたいの。今日から私達は姉弟なのよ?敬語も無し!遠慮も無し!
ヴァンも私のことはトワと呼んで欲しいわ」
「俺は…」
「待ったは無し!さぁ庭はこっちよ!」
「ちょ、」


少し強引だけれど、こうでもしないとヴァン君は来ないと思った。

現に、めっちゃ今も困惑されてるしね。


「では、お父様。これから、ヴァンと遊んで来ますわね」
「あぁ、行っておいで。だが、必ずヴァンの手を引いて安全に遊ぶんだぞ」
「勿論よ!行ってきますわお父様!」


手を繋いでヴァン君の足元に注意しながら、歩いて庭園に着くと彼をベンチに座らせた。
そして、彼の鼻に金木犀の花を近付ける。


「…これ…何の花、ですか?」
「敬語になってますわよ」
「、………これ何の花?」
「金木犀という花ですわ。とても良い香りでしょう?黄色くて小さい可愛い花なんですの」
「キンモクセイ…」


ヴァン君の手のひらに花を乗せると、恐る恐る花を触り出し、辺りを見回し始めた。

包帯によって見えない本来の彼の瞳の色を思い出す。
深緑色の瞳は、鮮やかな森林を思わせる色でとても綺麗だった。


「凄く甘い匂いがする…」
「ふふっ、当然よ。たくさんの種類の花がここには植えてあるの。
全部、貴方に見せたかったものなのよ?」
「…何で俺にそんな面倒で大変なことするんだよ。嫌だろ普通、身元も何も分からないやつが義弟なんて…」
「確かに最初は不安だったわ。けど、貴方が優しいってことが分かったから全然問題無いわよ」
「はぁ?」


言葉は荒いけれどヴァン君が持つ雰囲気はとても優しいのだ。
優しくて繊細だからこそ、誰よりも人の思いや言葉に敏感で傷付きやすい。

ゲームの中のヴァン君は小さい頃からずっと欲しかった温かさを求めていた影響でヤンデレになってしまった。
主人公がくれる初めて感じる温かさをどう受け止めて良いか分からないけれど、誰よりもその温かさを欲した。

でも、ここはゲームじゃない。
現実世界で今、私はここで生きている。

絶対にこの家をヴァン君が安心して暮らせる場所にしてみせるんだ。


「金木犀には「謙虚」と「気高い人」という意味の花言葉があるの。
貴方は謙虚で優しい人よ。そして、とても気高い。身元が何?無知が何?
これから、どんどん知っていけば良いことよ」
「あんた…令嬢っぽくないな」
「良く言われるわ。でも、これが私よ」
「しかも、かなり変わってるし」


自信満々に言いすぎだろ、なんて言って初めてヴァン君は笑った。
変人って言われてしまったけれど、何よりヴァン君が笑ってくれた事の方が大事だ。

多分、今の私は相当、締まりの無い顔をしているだろう。
こうやってヴァン君と話せることが凄く嬉しいんだ。


「たくさんお話して、たくさん遊びましょう!
私もヴァンのことが知りたいし、ヴァンにも私のことを知って欲しいわ!」
「…………………トワってやっぱり変わってる」
「まぁ!名前を読んで下さるなんて感激ですわヴァン!」
「うわっ、急に抱き付くなよ!びっくりするだろ?!」
「ふふっ!ヴァンとくっついたら凄く温かいですわ!」
「はぁ…ったく、仕方無ぇな…」


ポンポンッと優しく私の背中を叩いてくれるヴァンに笑顔が溢れる。
ほら、貴方はこんなにも優しくて温かい人。
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