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借金魔王と魔神導書  作者: 明石 遼太郎
4/22

第3話 学院に入学したけど……

 俺とヒオが王都に着いた次の日、俺は1人で部屋の整理をしていた。前に泊まったことがあるのとミツハがそのままの状態で置いておいてくれたおかげで、昼頃には片付きそうだ。


 明日から正式にハーバルヒト魔導学院に通い始めるのだが、今の俺は新生活に心躍らせることができなかった。何をしていても、昨日ミツハたちに言われたことを思い出してしまう。



 *************************



「3人目の魔王《偉大なる魔王(グレイト・サタン)》は死んだことになっているわ」


 俺はその言葉に息を飲んでいた。死んだことになってる?俺が死人扱い?頭に浮かんでくるのは訳がわからないの一言だ。どんなに思考を働かしても、結局行き着くのはその一言しかない。


「な、なんで俺、勝手に殺されてんの……?」


 俺の声は自分でもわかるぐらい震えていた。俺は無意識にそれを知ることを恐怖していたのだろうか?わからない。今の俺の思考じゃ、何もわからない。


「実は2年前、カイトちゃんが森深くに住み始めた頃に世界中の教会からハーバルヒト王国に要望が送られて来たの。それが『第3の魔王を殺せ』だったの」


「ーーーッ!!」


 俺は信じられなかった。2年前に自分の死が訪れようとしていたことを。そして何より、自分が何も知らなかったことに。


「教会は『奴は悪魔の手先だ!放っておけば、また争いが生まれ今度は世界を壊してしまう』と主張し、エンペラード陛下に判断を(あお)って来たのよ」


「それからすぐに大陸中の国が名乗りを上げて、カイトちゃんを殺すように要求してきたの。こっちは悪魔の手先とか関係なく、ただ強力過ぎる力が恐かっただけなんだけどね」


 2人の話を組み合わせると、2年前にこの国は大陸中から敵視されていたと言うことか。俺のせい、なんだよな……


「大陸中を敵に回したくなかったお父さんは《偉大なる魔王(グレイト・サタン)》を打ち首にすることを大々的に発表したの」


「もちろん、殺したのはカイトじゃないわ。当日、連続無差別殺人を働いて死刑が確定されていた罪人を代任にして、みんなの前で首を刎ねたわ」


「……そうか」


 俺はただそれしか言えなかった。今の俺の心はたくさんのものが絡み合っていて、言葉にするのは無理だ。俺はまだ抱きついて泣いているマリアちゃんを強引に解いて、立ち上がっていた。


「ごめん、1人にさせてくれ」


 一体誰に謝ったのかもわからない。結局俺はそれ以上の話を聞かず、仕事部屋を後にしたのだった。



 *************************



 あれからもう一晩が過ぎ、時間的にはもうすぐ昼食の時間だ。昨日の夕食は食欲がなくて部屋に籠ってしまったが、さすがに一晩経つと食欲が湧いてくる。だがそれでも、かつての仲間たちにどういう顔をすればいいかわからない俺は部屋を出すことを阻まれた。どうしたものかと困っていると、マリアちゃんが俺の部屋に朝食を持って来てくれた。やっぱり、優しい子だなぁ。


 どうやらマリアちゃんは俺が明日から通うハーバルヒト魔導学院の生徒らしい。昨日は気付かなかったが制服っぽいのを着ていたし、そのときも着ていた。今日も登校日のようである。俺が学院に通うことを知ったときのマリアちゃんは可愛い笑顔をしていたが、やはりというか完全に癒されない部分があった。


 こんな気持ちになっている原因は明白だ。2年前の教会、それから大陸中の国々のことだ。俺はそれが正義だと思ったから魔王たちと戦った。そうすることで俺はもっとこの世界を楽しめると思ったから。だが、結局魔王たちを倒しても何も変わらなかった。今度は俺を敵にして、また争いを起こそうとしていた。


「結局戦争が終われば、俺はただの脅威でしかなかったってことかよ……」


 このとき、俺の脳裏に過るのは2年前の1人目の魔王を倒した際、死に際に残した言葉だ。


『俺を殺したところで、何も変わらんぞ。俺という敵が居なくなれば、また人類は新たな敵を作って争い始めるだけだ。もしかしたら、今度の敵はお主やもしれん。はん、精々気をつけることだな』


 どんなに忘れようとしても、へばり付いたかのように消えない言葉。俺はあのときなんて答えたんだっけ。まぁ、忘れたってことは大したこと言ってないってことだろうな。


『1人で抱え込みすぎではありませんか、カイト』


 俺の頭の中にシェルの声が入ってくる。さすがに今の俺を見れば、声を掛けたくもなるだろうよ。それにしても、ヌーはどうした?こんな無様な俺を見れば、颯爽と笑い者にするのに。


『そうだよ、カイトちゃん。わたしたちはカイトちゃんの相棒で、お姉ちゃんなんだからっ』


 そう言われて、思い出すのはヒオの言葉だ。


『これからもお姉ちゃんをーーーうんん、お姉ちゃんたちを頼ってね』


 あのときは、きっとミツハのことを言ってるんだと思ったがそれだけじゃなかったのか。俺はポケットに入れてある8冊の《魔神導書(アルカナム)》を取り出した。こいつらは確かに物に過ぎないのかもしれない。だけど、俺にとっては大切な仲間のうちの8人なんだ。仲間をーーー姉を頼っちゃいけないなんてないよな。


「ふふ、あははは。いつもの毒はどこ行ったんだ、ユイ。まともなこと言い過ぎて、誰だかわかんなかったぞ」


『えぇ〜、今のお姉ちゃん的にポイント高くなかった〜?』


「高くねーよ。でも、ありがとう。すごく助かった」


 さっきとは比べものにならないくらい、心が軽くなった気がする。そうだよ。なに気にしてんだよ。所詮、過ぎた過去じゃないか。確かに俺という存在が大きな争いをもたらそうとしたのかもしれない。そのことに後悔はしている。でも、アニメの主人公は言っていた。人生に、後悔しない選択なんかないと。現に俺は3年前、魔王たちを倒す決意をしなかったら確実に後悔していただろう。だから、主人公は自分の心に従うのが1番だと言ったんだ。


 だから、俺は気にしない。つまずかず、背筋を張って前に向かって進みたい。それに決めたはずだ、2つ目の目標を。


「自分に嘘のない生き方をする。そのために、お前たちにも手伝ってもらうぞ。シェル、キル、ユイ、マナ、ヤチオ、ゼクト、ヌー、アーデ」


『はい』


『うむ、任された』


『ふふーん、これからもよろしくね〜』


『眠い』


『了解した』


『おう、任せておけよ!』


『ふん、仕方ないわね』


『……』


 2冊、マイペースなのがいるが俺はもう大丈夫だ。昨日から感じていた複雑な感情はもうない。たとえ、誰かに恨まれようと俺はそれを払って目標のために進む。せっかく文字通りの新しい人生が送れるんだから、俺はただ楽しむことにしよう。


 そう思うと、ミツハとヒオの顔が見られそうな気がしてきた。心なしか、部屋のドアが軽く感じる。今日から俺はカイト・キラサカ。ただのカイトとして生きる覚悟ができた気がする。



 *************************



 それからまた一晩が過ぎた次の日の朝。俺は鏡の前に立って自分の姿を確認する。今日から俺はハーバルヒト魔導学院に通う学生である。こっちの世界に来てから一度も着ていない制服。まさか、高校を異世界で過ごすことになるとは思わなかったなぁ。すると、部屋が静かにノックされた。


「はーい」


「私よ、入って大丈夫?」


「あぁ、いいよ」


 俺が許可を出すと、入って来たのはミツハだ。スーツみたいにピッシリとした服装をしているから、今日は学院に行くのだろう。それだけかと思ったが、それからさらに部屋着姿のヒオと制服姿のマリアちゃんも一緒に入って来た。でも、みんなに見せようと思っていたのでちょうどよかった。


「どう?変じゃないかな?」


「えぇ、変じゃないどころか随分と似合ってるわ」


「うん、カイトちゃんカッコいいよ!」


「よく似合ってるよ、カイトくん」


「あ、ありがとう」


 なんか家族に言われてるみたいで恥ずかしいな……


「さてと、カイト。準備はいいかしら?」


「あぁ、いつでもいいよ」


「それじゃ」


 俺はミツハの前に移動する。すると、ミツハは胸元に付いたバッジに触れる。そのバッジこそがミツハの契約している高位魔導書『ゾブラ断章』だ。拘束性の術式が綴られていて、物理的にはもちろん精神や魔力も拘束できる術式が込められている。そんな『ゾブラ断章』と回路(パス)繋げ、魔導書を解放するミツハ。バッジは姿を変え、紫に輝く宝石を宿した指輪となってミツハの左薬指に嵌っている。


「それじゃ、行くわよ」


 ミツハが最後の確認をすると、俺に細長い指を向けて動かし始める。ミツハの魔導書の発動条件は俺のヌーと同じで魔法陣を描くことで術式を発動させるのだ。


 今から行おうとしているのは、俺の魔力を抑える魔法《魔を縛る鎖(ソーサリー・バインド)》を発動しようとしているのである。昔の俺こと《偉大なる魔王(グレイト・サタン)》はすでに死んだことになっている。だから、俺が《偉大なる魔王(グレイト・サタン)》であることは絶対にバレてはならない秘密がある。そこで元々使える魔力を抑えることにしたのだ。そうすれば、高確率でバレることはない。


 あんまに使ったことがない魔法だと言っていたが、以外にもすぐに魔法陣が完成した。さすがはこの国で3本の指に入る実力者である。


 ミツハが魔法陣を完成させると、《魔を縛る鎖(ソーサリー・バインド)》が発動して魔法陣から数本の鎖が飛び出てきて俺の身体に絡み付く。物理的干渉がないのか、特に縛られているという感覚はない。すると、俺に絡み付いていた数本の鎖が俺に吸い込まれるように消えていった。


「終わったわよ」


「もう終わり?これでホントに魔力が抑えられたのか?」


「正確には一度に使える量を制限しただけよ。使える魔力量は変わらないけど、使える術式や複数の魔導書を同時に解放できる数が限られているわ」


「なるほどな。《異空間収納(ストレージ)》」


 試しに手近な魔法を発動させてみた。ちゃんと異空間は開いてるし、《異空間収納(ストレージ)》は使えるようだ。一度に使える量を制限しただけだからな。元々の魔力量から異空間分を引いていると考えれば、使えて当然か。


 ここで余談だが、魔導書の同時に解放することは極めて困難とされている。普通は交代で解放するのが主流らしい。8冊の魔導書を、しかも魔神導書(アルカナム)を同時解放した者は過去、そして童話でも俺1人らしい。もし8冊も同時解放してしまったら、一瞬で怪しまれてしまうから自重しなければならない。


 ま、結論は俺が気を付ければいいだけのことである。


「昨日も説明したけど、カイトが入るクラスは学年の中で最も優秀な生徒が集められたSクラスよ」


「私と同じクラスだね」


「昔からの決まりでSクラスは5人の生徒で編成されてきたけど、今回は特別にカイトが加わって6人にするつもりよ」


「ホントに職権乱用じゃん……わかった、ぼちぼち頑張らせてもらうよ」


「えぇ、頑張りなさい」


「うん、私は学院に行けないけど応援してるからね!」


 2人の仲間が俺にエールを送ってきてくれる。やっぱり、家族に言われてるみたいで恥ずかしい。ま、それがなんだか嬉しく感じている俺もいるけど。


「それじゃ行こうか、マリアちゃん」


「うん」


 準備ができた俺たちは家を出発した。律儀なことにミツハとヒオは玄関まで俺たちを見送ってくれた。この王都に来て数日しか経っていない俺は学院の場所なんてわからないので、隣に並んで歩いているマリアちゃんが頼りである。


「学院って歩いて何分くらいなの?」


「10分ぐらいかな。走れば5分も掛からないよ」


「へぇ、近いんだな。いいなぁ」


 最後の部分はマリアちゃんに聞こえないように呟いた。あっちの世界の小学校は遠くもなければ近くもなかったし、半年間だけ通っていた中学校は地域のギリギリのところにあったので20分は掛かっていたなぁ。


「おぉ、マリアちゃん!おはようさん、今日も可愛いねぇ!」


「あら、マリア。隣にいるのってもしかして、彼氏かしらぁ?きゃー!今日はお赤買って帰りなさいな!」


 商店街らしきところを歩いていると店を開く準備をしている人たちがマリアちゃんに声を掛けてきた。どうやらマリアちゃんはこの商店街で有名らしい。貴族の家の子なのにも関わらず、気軽に声を掛けてくる。


「マリアちゃん、人気なんだね」


「ははは……どうなんだろう。よく商店街に買い物に来るから憶えていてくれてるだけだと思うよ」


「それでも話し掛けてきてくれるっては人気の証だよ」


 俺がそう言うと恥ずかしそうに笑うマリアちゃん。まぁ、こんな身分の分け隔てもない笑顔を見せられたら、人気にもなるだろうな。ただ、1つ気になるのは所々で俺を異様な目で見ている者がちらほらと見られる。俺、なんかまずいことしたかな?


「やっぱり、カイトくんの黒髪は目立っちゃうね」


「黒髪……あぁ、そう言うことか」


 マリアちゃんに言われてようやく合点がいった。みんな俺の黒髪を見ていたのか。こっちの世界じゃ、日本人特有である黒髪はいない。だから、異様というか不思議そうな目をしていたわけだ。


 商店街を出るとすぐに学院に到着した。俺と同じ制服を着た生徒が何人も登校しているところを見るとなんだか懐かしい感覚に見舞われる。俺は中学に入って半年で、こっちの世界に来た。それから学校には一切行ってないから、これが3年ぶりの登校だな。


「カイトくんはこれから職員室だよね?」


「あぁ、担任の先生に挨拶しないといけないしな」


「職員室まで案内しようか?」


「いや、だいたいの場所なら目星は付いてるから大丈夫だよ」


 小中しか通っていないが、職員室という場所がどこら辺にあるかはどこの学校でも同じなのでだいたいわかるのだ。俺はマリアちゃんの誘いを断って、職員室へと向かった。出発してすぐに、ここが異世界なのを思い出して不安になったが俺の予想通り一階にあった。俺はあっちの世界でのことを思い出しながら、職員室のドアをノックした。


「失礼します。今日からこの学院に通うことになりました、カイト・キラサカです」


「おぉ、君がキラサカか」


 反応してくれた先生の方を向くと、20代後半ぐらいの若い先生がそこに居た。俺が見ていることに気づくと手招きで中に入って来るように言ってくる。俺はお辞儀をして職員室の中に入り、その先生の側まで移動した。


「やぁ、俺は1年のSクラスを担任しているネビルだ。よろしく頼むぞ、期待の新人」


「ははは、お手柔らかにお願いします……」


 学院長であるミツハに何を吹き込まれたかは知らんが、そんなキラキラした目で俺を見ないでくれ。その後、俺も軽く自己紹介をすると学院について説明があった。


 学院では特に禁止していることはないが、この国の法律に触れることをすれば即刻退学となるらしい。あとは無闇は争いをしないことぐらいだ。こっちの学校は緩いな。俺の世界の方なんて、おやつの持ち込み禁止だったし、携帯もダメだってのに。もっとこっちの世界を見習ってもらいたいものだ。まぁ、もう俺には関係ないが。


 ネビル先生が説明を終えるとちょうどよくチャイムが鳴った。どうやらこれは予鈴らしく、5分後に鳴るチャイムでホームルームが始まるそうだ。


 俺はネビル先生に連れられ、教室へと案内される。1年の教室は1階にあるらしく、豪華な塗装が施された廊下を歩き続ける。窓から見える庭には大きな木が立ってして、あそこの下で昼寝をすればさぞ気持ち良さそうだ。職員室とまったく正反対のところまで歩いて来ると、1つの教室を前にネビル先生が立ち止まった。どうやら着いたらしい。


「少し廊下で待っていてくれ」


「はい」


 ネビル先生は俺にそう言って1人で教室へと入っていった。教室から漏れ出てくる声から俺を呼ぶお膳立てをしているようだ。少しして、教室から俺を呼ぶネビル先生の声が聞こえたのでドアを開けて中に入った。


 俺が教室に入るとこのクラスの生徒であろう5人が俺に視線を向けてくる。その視線に込められている感情はそれぞれで、期待、不安、不満、不審、歓喜。俺はいろんな感情に射抜かれながら教卓の横まで歩いた。


「キラサカ、自己紹介を」


「はい。カイト・キラサカといいます。王都には来たばかりで、わからないことが多いかもしれませんがよろしくお願いします」


 短いかもしれないが、これくらいが無難だろう。一応、拍手ももらったし大丈夫だろ。改めて教室を見回すと、広さはあっちの世界の学校と同じぐらいだな。そんな中に5人って寂しいなぁ。俺は晴れてクラスメイトになった生徒たちを見る。


 席の配置は2列で1列に3席置かれている。その内の後ろの1番右の席が空いているから、多分あそこが俺の席なのだろう。今度は生徒たちの顔を見るとーーー俺は驚愕した。なぜならそこには女子しか居なかったからだ。


 ーーーワット?


 俺の頭は今まさにフル回転していた。魔力量は平均的に女性の方が多いと聞いたことがあるけど、ここまで形になって現れていたとは……


「それじゃ、今度は在校生の自己紹介をするか。タラタリスから出席番号順にやってくれ」


 ネビル先生の指示で金髪の少女が立ち上がった。


「わかりました。わたしはタラタリス家の次女、ナーデラル・タラタリス。風の魔法が得意よ。よろしく」


 金髪の少女ーーーナーデラルさんは紅い瞳をしていて艶のある金髪をなびかせている。背は平均的で残念そうな胸ではあるが、顔は整っていてすごく美人である。だが、そのときの俺は彼女のことを素直にそう思えなかった。なぜなら彼女はさっきからずっと俺のことを鋭く睨んできているのだ。おそらくだけど、俺が教室に入ってきたときに射抜いてきた不満の視線はナーデラルさんのものだろう。


 ナーデラルさんが座るとその隣に座っている茶髪の少女が立ち上がった。特徴的な茶髪を後頭部の部分で一括りにしていて、出るところは出て引っ込んでるところは引っ込んでいる健康的な体つきをした体育会系少女といった感じの少女だ。


「僕はサテラ。サテラ・ウルダントって言うんだ。サテラって呼んでね。得意な術式は双剣の魔剣技だよ。よろしくね」


「あぁ、俺のこともカイトって呼んでくれ」


「オッケー!」


 親しみやすいというか、これが元々のサテラの性格なんだろうな。サテラが座ると次に立ったのはマリアちゃんだ。


「マリア・ディルバール……って言っても知ってるよね。これからもよろしくね、カイトくん」


「ん?なんだお前ら、知り合いなのか?」


「はい。今カイトくんは私の屋敷に泊まっているので……」


「えっ、なにそれ‼︎その話すごく興味あるなぁ!」


 マリアちゃん、それは色々と問題があるんだから言っちゃダメだよ。サテラがめっちゃ食い付いてるじゃん。


「え、いや、そんな面白いことはないけど……」


「コホンッ。ウルダント、少し落ち着け。自己紹介が進まん」


「えぇー?もう、わかしましたよー」


 ネビル先生の注意でしぶしぶだけどようやく落ち着いたサテラ。それを見計らって座るマリアちゃん。そして入れ違いにマリアちゃんの後ろの子が立ち上がる。


「アリア・シュタインです……得意なのは弓の遠距離射撃と知覚魔法です……よ、よろしくお願いします……」


 ネイビーの髪が覆われていて目元がよく見えないが、どうも怯えていることはわかった。彼女は小柄で、多分このクラスの中で1番低いんじゃないか?ネイビーの髪が目元まであり、全体的に見てもなんの不釣合いのない体系をしている。俺と一瞬でも目が合うと、すぐに下を向いて晒されてしまった。


 アリアさんが俯いたまま座ると最後の1人が立ち上がった。眼鏡がシンポルのその少女はレンズ越しに俺を射抜いている。薔薇色の髪を左右で括っている彼女はいかにも真面目ちゃんといった感じで、常に俺のことを見つめている。


「メディナ・ランドロスといいます。ランドロス家の三女で、得意な術式は防御魔法です。よろしくお願いします。そして、質問よろしいでしょうか?」


「え?あ、あぁ、はい。どうぞ」


 急に質問が飛んできたから驚いたぁ……


「その黒髪からキラサカくんは移民人だと伺えますが、出身はどちらで?」


「えーと、生まれも育ちもこの国だ。この黒髪はおそらく両親からの物だけど、俺を産んですぐに2人とも亡くなったらしい」


「そうですか……申し訳ありません、辛いことを思い出させてしまって」


「いや、そんなこと気にしないでくれ」


 だから、こんな作り話にそんな申し訳ないような顔をしないでくれ。意外にも罪悪感が生まれちゃうから。これはあらかじめ俺とミツハが作った、黒髪を誤魔化すためにの話である。ちゃんと矛盾がないように作っているので、きっと大丈夫なはずだ……多分!


 こうして、クラスメイト全員の自己紹介が終わったーーーのはいいが‼︎やっぱり、どっからどう見ても全員女の子だよ‼︎‼︎全員っ異性だよ‼︎‼︎


 ーーー俺、Sクラス(ここ)でやっていけるのか?

アリアの得意分野の魔弾銃を弓に変更しました。

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