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深夜のテンションの遺物

スペし有無光線

電子の海に亡霊が落とした作品が一つあった。

名詞だけを同じくする全く違う妄想を、複数の知人に託した。

ネットでは少しは名の通る著作であったために、ファンの間ではそれらの真偽が問われた。

少し経った日、亡霊のアカウントから家族による告知があった。

出回ってるお話、全て亡霊が書いたものなんです。

しかしこの発言は既に信用するに値しない。

既にゴーストライターたちが我こそは真なりと自作をアップしすぎていたのだ。

家族は知らない。どれぐらいのデータを訪ねてきた知人に配ったのか。

その内どれぐらいがアップロードされたのか。

どれが配ったメモリーの中身なのか。

亡霊は笑っていた。

亡霊から世界観を奪い取りたい者、ただのファンメイダー、練習用二次創作。

全てが無名有実の文章となって、亡霊の名前の下に纏まってゆく。

肉体を捨てて、赤くもない他故人に迎合する生者がおかしくてたまらないのだ。

精々ボレに魂を奪われんなよとからかう姿がよく見える。

その後の展開も遍く亡霊の掌の上というわけではなかったが、概ね予想通りの結果だった。

敬意を払い、商魂たくましくシリーズものの原作者を書きとめる界隈とは違う。

作者が、スタッフが、本当に分からないのだ。

偉大なる原作者とその世界観に生まれた新たな人格と価値観が存在することで、そのコンテンツが生き永らえる。

その世界はしっかりと、命の星の核の上に、命が連続しているのだ。

ところがどうだ、岩ばかりの衛星に立ってしまって、ゴーストライターは死ぬ羽目になった。

今頃自分の名前が恋しくなっても遅い。

その名はとうに命と熱に脅かされた電子によって隠された。

影に佇む幽鬼そのものだ。

生きながら死を得ている。

日の目を浴びたいならば、命も熱もない静かの海に、忘れ去られた名前を忘れ去られたまま書くしかない。

そうすることで、未来、歴史を辿る人間の中に、生霊だった死人がようやく復活する。

センスある昔の絵描きに比べて、相変わらず評価されることもないまま。

人が溺死する海も面白かったが、この生死の入れ替わりも面白かった。

この亡霊がこう考えて、こんなあほなことをやらかしたのだと、俺はその心を持ってはじめて、理解した。

見返さずとも恥ずかしい所業

よみきったひとはありがとう

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