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異世界召喚のタイムラグ  作者: 珍人類
2/4

2話 異世界と加護

気が付くと一面が真っ白の空間に横たわっていた。

天井はどこまでも続いていそうで、横の奥行きも永遠に続いていそうだ。

しかし、ここはどこだ?


「ここは私が住んでいる場所よ。魁人さん。ふふふ」


声のする方を見てみるとそこには金髪で、絹の光沢を纏っているような白いワンピースを

着た女性?が立っていた。

なぜ女性?と疑問に思ったのかと言うと、声は澄み渡りそれその物が音色のように

落ち着く女性の声なのだが・・・

顔がのっぺらぼうなのだ・・・


「あらあら驚いている顔してるわね?」


「のっぺらぼう・・・」


「あなたには私の顔がまだ見れないのね。そうね多分力が足りないからだと思うわ。

そう言えば自己紹介がまだだったわね。私はこちらの世界「ユースガルド」の神よ。

名前はフィーロア・ロムリヌスよ。よろしくね。ちなみに女性よ。ふふふ」


「はぁ。神様か。初めて見たよ。俺の名前は岸和田魁人ただの大学生だ。

それでここはどこなんだ?こちらの世界とかよく分からないんだけど」


「以外と冷静なのね。もっと混乱すると思ったわ。ふふ。

あなたは、いいえあなた達はユースガルド、つまり異世界の人に

召喚されたの。召喚陣を見たでしょ?大きい光る円のことよ。

ここはもう地球ではないの」


確かになぜか俺は冷静でいられている。

身体はなんだかふわふわしているけどこの空間がなんだか

心を落ち着かせてくれるし。それになんだかこの人が嘘ついてるとは思えない。

って、ちょっと待てよ?

あなた達?

ということは愛美もこちらの世界に来てしまったのか?


「ここには俺しかいないが妹はどうした!?

愛美もここにいないとおかしくないか!?」


「そう、おかしいのよ。何がおかしいかと言うと

そもそもあなたがここにいることが本来おかしいのよ。

あり得ないとも言うわね。あなた召喚陣を跨いでいたわよね?

普通ならその時点で身体と魂が引き剥がされて、

あなたの存在自体が消滅していたはずなのよ。

良くて時空の狭間に放り出されるわね。

でもあなたは身体と魂を保ちながら私の元まで来てしまったの。

原因は不完全な召喚とあなたの強靭な魂と身体との結びつきの強さ、

そして運かしらね?詳しくは私にも分からないの」


つまり普通なら俺は死んでいたということか・・・

異世界人マジ何してくれてんだよ!

勝手に召喚されて人知れず死ぬところだったんじゃねーか!


「なぜ俺がここにいるのかは分かった。ところで俺は帰ることができるのか?

妹にも会いたいんだけど」


「帰ることは・・・無理ね・・・ここにあなたが留まっていられるのは

あたしの力のせいなのよね。ここは只の人にとっては大変不安定な場所なの、

それをこの白い空間を作ってあなたの魂と身体を保たせているの。

時間切れになったらそのままユースガルドに送られてしまうわね。

あと妹さんだけどね、しばらく会えないと思うわ。

不完全な召喚のせいであなたの召喚される場所と他の人達の場所が違うのよ。

それと時間も変わってしまっているわ。他の人達が召喚される時よりも

あなたはいくらか過去に飛ばされてしまうわ」


「あんた神様なんだろ?なんとかならないのか?

せめて妹だけでも、まだ高校生なんだ。

いきなり異世界なんて・・・

そもそも俺たちはなんの為に呼ばれたんだ!?」


「できないわ。神は人の世界に直接干渉することができないの。

ごめんなさいね。目的は戦争の戦力にする為よ」


「んなっ!?」


戦争だって!ふざけてんのか!?

愛美がそんなことできる訳ないだろ。

俺は小説で勇者が召喚されて魔王を倒すとか

そういう類の物を読んだことはある。

恐らくそれが実際に起こってしまったのだろう。

だが、愛美には無理だ。

人を殺すなんてできないだろ!


「あなたは最低でも2年は過去に飛ばされると思うわ。

詳しくは私にも分からないのごめんなさいね。

自由に生きるのもいい。何かを守るために力をつけるのもいいわ。

あなたがここに来たのも何かの導きかもしれないわね。

だからあなたの大切な人を守るだけの力を授けてあげる。

ステータス・オープンと念じると確認できるわ」


ステータス・オープン?

それで何か分かるのか?

えっと、頭の中で何か確認できるように

意識して。


ステータス・オープン


種族 人族

名前 岸和田 魁人

Lv 1

HP 110/110

MP 180/180

ATK 90

DEF 80

SPE 95

MATK 100

MDEF 80


固有スキル: 透視 変装 アイテムボックス



称号: 神の加護 奇跡の男 家族愛 ※※の可能性

    

うわっ。なんかたくさん出てきたぞ。

これが強いかどうかは分からないがHPとかMPとか

ゲームみたいだな。

でもどのくらいで死んでしまうかの目安になるから

便利ではあるが。

分からないところだらけだけど最後の※※?

なんだこれ。


「私が与えた力はその名の通り、神の加護と変装、隠蔽よ。

あなたの固有スキル透視はこちらに来てから発現したみたいね。

それは鑑定スキルの最上位互換ってところかしら。

ステータスを見ながらそれを使うと詳しい説明が見られると思うわ。ふふ。

便利なものを持っているわね。」


「ちょっと待ってくれ固有スキルはあるのにスキルというものがないんだが?」


「それはあなただけではなくて全員に共通しているわ。

例えば剣術というものをスキルやレベルというもので縛ってしまうと

1人1人の可能性を潰してしまうことになるの。

だから工夫や発想次第で能力を伸ばせる可能性は無限大に広がるのよ」


なるほどそういうことか。

それなら異世界ということで定番のあれは使えるのだろうか。


「スキルについては納得したよ。魔法についてはどうなんだ?

俺のステータスにないんだけど」


「もちろんあなたは魔法を使えるわよ。

ただし練習しないと無理ね。

魔法を修得するとステータスに表示されるから確認して頂戴。

魔法に関しては私が最低限定義しているわ。

けどレベルはないからこれもあなた次第ね」


ふむふむ、とりあえずこちらの世界は努力すればなんとかなると。



「それと変装だけど、きっとあなたはこれから目立つことがあると思うから

その為のものよ。外見を自分の思うがままに変えることができるわ。

もちろん自由に元の外見にも戻せる。

ただし一度決めた外見や体格は変更できないから気を付けてね。

※※の可能性は、私も分からないわ。初めて見るわね。

でもその時がくればきっと分かるはずよ」


神様でも分からないって何なんだ?

※※とかなんかのバグっぽいしな。

その時って、曖昧だなぁ。



「そろそろ時間が無くなってきたから急ぐわね。

アイテムボックスと念じるとその中に入っているものが

頭の中にリストアップされるわ。

ユースガルドには空間魔法でアイテムボックスのように

物を収納する空間を作ったり、マジックバッグはあるけど

アイテムボックスを使えるのはあなただけよ。

変な事に巻き込まれたくなかったら

そのことは秘密にした方がいいわね。ふふ。

もう1つこの指輪を差し上げるわね。

私からのプレゼントね。ふふ。

あなたは召喚先で最初からきっと苦労すると思うわ。

なんとか乗り越えられるように頑張ってね。

あなたならきっと大丈夫」


「何かしてくれるのはありがたいが、なぜここまでしてくれるんだ?

会ったのだってさっきが初めてだし」


「そうねぇ、人の身でここに来られたあなたに興味があるからかしら。

でもまぁ、神様の気まぐれとでも思っておいてちょうだい。ふふ」


「なんじゃそりゃ。気まぐれねぇ。

とりあえず、2年は時間があるんだろ?

それなら愛美は苦労しないようにすることたくさんあるな、

色々助かったよありがとう。もう変えられないものは

仕方がないから頑張っていくよ」


そう言うと、足元に直径2mくらいの召喚陣が現れた。

そろそろ時間切れと言うことか。


「ええ、応援してるわ。

これ以上持ちそうにないわね。

私に会えるのはきっとこれが最初で最後よ。

あなたに会えて良かったわ。

それでは行ってらっしゃい!」


「それじゃあ!」


『あなたに幸あらんことを・・・』


その瞬間眩い光に包まれ俺はユースガルドへ飛ばされた。

どこかで温かい声が聞こえた気がした。



行ってしまったわね。

これも何かの運命かもしれない。

今のユースガルドはどこか不穏な空気が漂っている。

でもあなたなら・・・



~~~~~~~



今度は意識を失うことはなかったようだ。

ぐにゃぐにゃとした感覚を覚え、頭が引っ張られるように

飛ばされたようだ。

まだ車酔いでもしたように気持ちが悪いが

当たりを見回してみる。

ん?部屋か?

いや、牢屋?

正面の入り口らしきとこは鉄の棒で檻になっている。

左右と後ろは石作りの壁で薄暗いし湿っぽい空気だ。


どうなってる!?


フィーロアが苦労するって言ってたのはこのことか?

にしても湿気でじめじめしてて気持ちが悪いし臭いし。

部屋の中には薄い麻のようなものでできた布一枚と木でできたバケツの様になものが1つだけある。

心を落ち着かせて周囲に気を張ってみると他の人も

この周りにいるらしい。

うーうーとか死にたくないとか

めーしーとか色々聞こえるし・・・

お化け屋敷かよ。

この部屋の正面は檻があるがまだ人がいないようだ。

しかしどうやら他にも牢がたくさんあるようだ。

うわーまじかここどこだよ・・・


考えていても仕方がないな荷物でも確認してみよう。

アイテムボックスと念じればいいかな?


アイテム


魔法大全

調合大全

一般常識集

鉄の剣

皮の盾

ポーション×5

マジックポーション×5


えっと、こんだけ!?

いや、まだ指輪があったな。

確か透視で確認できたはずだ。


とそこで足音が聞こえてきた。

カツッカツッカツッカツッ

どうやらこちらに向かってきているらしい。

どうしようか。

フィローアが言っていたことを思い出した。

変装!

すぐに変装を念じる。

初めて使うがすんなりと使い方が頭に流れ込んでくる。

ステータスに載っていたスキルはこうやって

あたかも前から使えていたみたいになるようだ。

どうやら変装できる外見は本当に1つだけらしい。

推測でしかないが、恐らくこういうファンタジーの世界の人の顔は西洋風だ。

なりたい外見を明確にイメージしてから変装と念じる。

できた!

イメージしたのは身長180cmで金髪、碧眼の好青年。

顔はまぁまぁって具合にしとこう。

程よく筋肉質で余分な脂肪を取り除いた所謂細マッチョって奴だ。

誰が来るか分からないが間もなく通りかかるはずだ。


3歩、2歩、1歩・・・


自分から話しかけるべきだろうか?

今は反対を見て立っている。

ぶつぶつ何やら言っているようだ。

ここに入る者はまだ当分先だとかなんとか。

そしてゆっくりとこちらを向くと。


「なっ何者だ!?」


強面の西洋風の鎧を身に纏った男が叫ぶ。

話掛ける必要なかった・・・

めちゃくちゃ吃驚してるようだし。

俺も少し驚いたよ。

そりゃそうか、召喚の不具合で飛ばされたんだし。


「あっあの・・・ここは?」


「貴様、どうやってこの房に入り込んだ?

ここは空きの房で収監者はいないはずだぞ?」


先ほどの吃驚したときの声とは打って変わり、

ドスの利いた声を発し、凄みながら腰の剣を抜く。

おいおいおいおい!


「いや、待ってください!!

本当に何も知らないんだ!!」


やばいだろ、いきなり剣を向けてくるとか

無抵抗のまま殺されるぞ!?



「おやおや、リットンどうしたのかな?

そんなに大声を上げて」


今度は恰幅の良い男が護衛を3人連れてやって来た。


「はっ、カイゼル様、先行して異常がないか確認していたところ

このような不審な者がおりまして。

本来この房には収監者はいないはずです」


カイゼルという男はすごく高級そうな服を身に纏っている。

そして目を見張るのはそのお腹だ。

何を食べたらあんなに太くなるんだ。

それに顔は油まみれだな。

50歳くらいの男に見えるけど。

偉い人なのだろうか?


「ふむぅ、不思議なこともあったものですねぇ。

どうしたものでしょう」


「カイゼル様の監査の折のこのような失態、

まずはここの責任者の首を刎ねましょう。

そしてこの不届き物はこの私が今ここで

殺します」


おい、なに物騒なこと言ってんだよ!

やばいやばいって!


「ちょっと待ってください!

本当になにも知らなくて!

おねっお願いします!

本当にどうしてここにいるのかも分からないです!!

解放してください!」


「貴様のような分際が軽々しく口を挟むな!」


そう言うと檻のそばまで近寄った俺の顔を

リットンが殴りやがった。

くっそう、痛っ!


「おい!いきなり何しやがる!

痛ぇーだろバカ野郎!」


「ほうほう、この男活きがいいですねぇ。

いい商品になりそうです。ぐふふ。

そう思いませんか?

このフロアの監房長はそうですねぇ。

鞭打ち10回にしときますか。

リットン、術士を手配してください」


「その、よろしいので?」


「2度も言いませんよ?」


「はっ!直ちに!」


商品?

術士?

どういうことだ!?


「おい、お前ら俺をどうするつもりだ?」


「ふむぅ、どうするもなにも奴隷にするんですよ。

あなたがここにどうやって来たのかは知りませんが。

ここは私の敷地内なのですよぉ。

勝手に入ったとなるとそれはもう何をされても

文句は言えないでしょう?

そしてあなたにはここバトルコロシアムで

死ぬまで戦ってもらいます。ぐふふっ

私はこのコロシアムを運営している

ブタック・カイゼルと言います。

あなたの主人ですよ。ぐふふふふ」


ぐふふとか下卑た笑い方しやがってくそっ!

名前からして豚じゃねーかこの野郎。

奴隷ってなんだよ。

確かに敷地内に勝手に入ったのは俺だ。

しかし、どうすればいい?

何もできない。

睨みつけて、高圧的な態度で屈しない姿勢を見せるしか。

なんとか譲歩させるしか。


「おい、豚ぶっ殺すぞ?」


「ほっほっほ、できるもんならやって下さい。ぐふっふ」


確かにこの中じゃ絶対できない。

そう言えば透視で護衛のステータスを見られるな。


ステータス・オープン


種族 人族 (奴隷)

名前 ライザック

Lv 34

HP 867/867

MP 123/123

ATK 356

DEF 283

SPE 244

MATK 56

MDEF 60



だめだ・・・

他の2人も似たり寄ったりだが

俺のステータスと圧倒的な差がある。

どうやらMDEF以下は見ることができないらしい。

唯一魔法の素養では勝っているようだ。

どうする?

どうすればこの状況を覆せる?


「なにか企んでいるようですか

悪あがきはよした方がいいですよ。

そろそろリットンも、おっ来ましたね。ぐふふ

それでは後は頼みますよ」


リットンが連れてきた術士と

護衛が入り口から入ってくる。

護衛が俺を抑える。

抵抗しようにも力の差がありすぎてできない。

すると術士が手に持っている首輪に向かって

何かぶつぶつと言っている。


「やっやめ、ろぅ!」





そうして俺は召喚された1日目にして奴隷となった。









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