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暖かな恋  作者: 佑紀
5/20

Episode5:春斗&タイムサービス

「なんだこの込み様は・・・」


瑞穂と買出しのためにスーパーにやってくると、そこは多くの人で溢れていた。


「なんだろうね。今日、タイムサービスでもやるのかな?」


調子を狂わせるようなゆったりとスピードで瑞穂がそう言った。今の瑞穂にタイムセールに参加させたら入り口で脱落だなと考えてしまうほどだ。


「この店ってタイムサービスやってんのか?初めて聞いたけど」


「私も聞いたことないけど」


「あっそ・・・・」


じゃあ何でそんな事を言ったんだろうか。


「でも、本当に何があるんだろうね?」


「さぁな。とりあえず入ってみないか?」


「うん」


瑞穂の返事を合図に俺たちはスーパーの入り口に向かい歩き出した。が、行けたのは入り口までだった。あまりに凄い人込みで入り口に全然近づけない。


「どうしよっか?」


困ったような顔をしながら瑞穂がそう尋ねてきた。


「本当にタイムサービスでもありそうだな。とりあえず聞いてみるか」


俺はそう言ってから周りを見渡し優しそうなおばさんを見つけた。


「すいません、今日って何か特別な日なんですか?」


「えぇ、そうよ。このお店がねタイムサービスを始める事になったの。今日はその初日でね、とっても安く売るんだって。だからこうなってるのよ」


「そうなんですか。タイムサービスはいつから始まるんですか?」


「あと10分後ぐらいには始まるわよ。店が開くのが合図よ」


「そうなんですか。ありがとうございます」


俺は笑顔でそう言ってから瑞穂のいる場所へと戻ってくる。


「お前の言ってたタイムサービスで正解らしいよ」


「へぇ、何時からなの?」


「10分後だけど。お前、まさか参加する気じゃないよな?」


「するに決まってるじゃない」


まじかよ。今日のタイムサービスに参加したらおばさん達の勢いに絶対やられると思うんだけどな。一歩間違ったらトラウマかかえてしまいそうなぐらい。


「へぇ、頑張れよ。応援してる」


「どうして私だけ参加するのよ。春斗も参加するんだからね」


「えぇ。しないと駄目か?」


「うん」


諦めるしかない。瑞穂は妙に頑固な所があるからねばっても結局参加するはめになるだろう。


「何もとれなくても怒んなよ」


「うん」


今、気付いたのだけど瑞穂はどことなく楽しそうな雰囲気である。もしかしてタイムサービスに参加できるのが嬉しいのだろうか。





「只今よりタイムサービス開始です」


その合図を皮切りに並んでいた客(俺と瑞穂も含む)が一斉に店内へと流れていく。この中にいれば歩かなくとも店内に入れそうな勢いである。


「瑞穂、大丈夫か?」


俺は苦しそうにしながら進んでいる瑞穂にそう尋ねた。


「うん、なんとか」


瑞穂は本当に苦しそうにそう言った。


外にいた客がほとんど中に入った頃、店内にアナウンスが流れた。おそらくこれでタイムサービスの商品を放送していくのだろう。


「今日のタイムサービスは店内にある商品全部です。全て9割引で販売します。9割引で全商品を販売します」


このアナウンスに客がざわめく。そして周りにある商品を確認もせず取っていく。おばさん達のほとんどは必死になっていて凄い形相である。


「瑞穂、とりあえず俺たちも適当に食材をとってこよう」


俺はそう言って籠を持っている逆の手で瑞穂の手を掴み食材コーナーへと走っていく。人が邪魔になってなかなか進めないがなんとか食材コーナーの前まで辿り着いた。


「よし、瑞穂。手当たり次第にカゴにいれよう」


俺はそう言ってから食材を掴もうと手を伸ばす。しかし、1つもなかった。


「はや・・・。おばさんパワー恐るべしだな」


そう呟いてから瑞穂の方をむくと少しだけ頬を赤く染めながらボーっとしている。


「おい、瑞穂。どうしたんだ?」


そう言っても瑞穂は聞こえていないのかまだボーっとしている。


「おい、瑞穂」


さっきより声を大きくしてみる。すると、


「あ、ごめん。ボーっとしてた」


「どうかしたのか?顔赤いけど」


「ううん、なんでもない。ちょっと熱気が凄くて」


「あぁ、確かに凄いな。それより食材もうないんだけど」


「あれ、本当だ。他のところで買うしかないね」


「あぁ、そうだな」


もうちょっと悔しがるかと思ったけど以外に普通の反応をしめした瑞穂に俺は少し拍子抜けだった。





俺達はあの後、結局少し離れたデパートの食品館で買い物をすませた。


その時も瑞穂はずっとボーっとしていたけど本当にどうしたのだろうか。



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