Episode16:瑞穂&決心
今日はなんとなく春斗の様子がおかしい気がする。ボーっとしていてなんか元気がない。一体どうしたのだろう。考えてみても何も思い当たることがない。こんなに時間を共有しているのに私は全然、春斗の事を分かっていないんだなと思う。それと同時に少し悲しくなる。
「瑞穂、どうしたの?」
私が考え事をしていると風歌が私のところへやってきていたようだった。
「ううん、何でもない」
「何でもないはずがないでしょ。今、旦那様の方に視線が向いてたよ」
風歌はそう言って悪戯っぽい笑みを作る。
「別にそんなんじゃないよ。ただ春斗、元気ないなと思って」
「ふ〜ん。確かに元気なさそうね。喧嘩でもしちゃった」
「してないよ」
「じゃあどうしたんだろうね?」
私にそんな事を言われても分かんない。私はそう思いながら俯いた。
「聞いてみたら?」
突然、風歌がそんな事を提案した。
「え?」
「気になるんでしょ?だったら聞いてみなよ」
「でも・・・。何て聞いたらいいのか分かんないから」
「今日、元気ないけどどうしたのって言うだけでしょ」
「そうだけど」
「気になるのならしといた方がいいよ。いつか後悔しちゃうよ。それに壬柳君って女子に結構人気あるんだから取られちゃうわよ」
風歌は私が春斗の事を好きだと思っているらしい。私は自分の気持ちは正直にいうと良くわかっていない。でも、藤堂君も昨日、春斗の事をどう思っているのか聞いてきた。もしかしたら私は春斗が好きなのかもしれない。ただ近くにいすぎて気付けなかっただけ。だから皆には気付かれていたのかもしれない。
「うん。聞いてみる」
「それがいいよ。大丈夫だから、きっと上手くいく」
「ありがとう風歌」
「いいよ。私たち友達でしょ」
少し照れた顔をしながら風歌はそう言った。私も笑顔で頷いた。
結局、放課後になっても春斗の調子は変わらなかった。ボーっとしたり考え事をしていたり。そして私も春斗につられるように今日はそうやって過ごした。
「春斗、帰ろう」
私はいつもより早く帰りの準備をし、まだ準備をしている春斗に声をかけた。
「あぁ、もう少し待って」
春斗は少し驚きをこめた声でそう言った。私が早く準備終わってるのが不思議なのかなと思ってしまう。
「よし終わった。悪かったな待たせて」
「いいよ。いつもは私が待たせちゃってるし」
「それもそうだな」
そう言って春斗は少し笑った。それはいつもの彼の笑い方じゃなかった。