Episode15:春斗&悩み
俺は今、瑞穂の家のトイレに篭っている。理由を述べるならばお腹を壊しているからだ。勿論、瑞穂の料理でだ。
それにしても、どうあったらあんな物を作れるのだろうか。思い出すのも嫌になるぐらい大変な料理だった。ジャム入りカレーなんて可愛いものに感じてしまう。勿論、瑞穂はそれを美味しそうに食べていたのだけど。
トイレから出るとリビングで瑞穂がテレビを見ていた。企画物の内容らしく瑞穂を見ていると結構面白そうに見ている。
「瑞穂、俺もう帰るから」
瑞穂の背中に向かってそう言い、俺は玄関の方へと向かう。玄関まで辿り着いた時、瑞穂がすごいスピードでこっちへ走ってきた。
「どうしたんだよ?そんなに全力で走って」
「今日も誰もいないんだけど」
俺は一瞬何の事だか分からなかった。でも、すぐに瑞穂の言ってることを理解した。
「まさか今日も泊まれとか言うんじゃないよな」
「言う」
馬路かよ・・・。
「お前、いくらなんでもそれはないだろ・・・」
「怖いものはしょうがないでしょ」
「はぁ・・・」
俺は溜息をつく。今日も結局泊まることになってしまったからだ。
「自分のベッドが一番眠りやすいのに」
「お母さんが帰ってきたらまた眠れるよ」
「そうだね」
俺はもう1度溜息をついて瑞乃さん早く帰ってきてくださいと心の中で願った。
時間は12時。隣のベッドの上では瑞穂が静かな寝息をたてながら眠っている。俺は何故か寝付けないでいた。真奈美先輩の言ったことを考えていたのだ。
「瑞穂が藤堂君にとられてもいいの?」
真奈美先輩がそう言った時、何を考えていいのか分からなかった。多分、それは俺が瑞穂が側からいなくなることを考えたことがなかったからだと思う。だから、とられてもいいのっていう言葉を理解できなかったのだと思う。
「俺は・・・どう思ってるんだろう」
大切な幼馴染。それは分かりきっている。でも、それ以上なのか、それだけなのかと聞かれると全然分からない。でも、これだけは言える。瑞穂をとられるのは嫌だ。好きだとかそんなんじゃなくて、日常が壊れて俺が俺でなくなってしまう気がするから。
「これって依存なのかな?」
俺はそう呟いた。勿論、誰も聞いている人はいない。だから答えてくれる人もいない。まぁ答えてくれる人を望んでいるわけではないからいいんだけど。だって自分でこの答えは出さないといけないのだろうから。
俺はそこまで考えて思考をストップした。もう寝ようと思った。今はこのままでいいと呟いてから俺は眠りについた。
次の朝、学校に瑞穂と向かっていると藤堂先輩と遭遇した。正確に言うならば俺たちを見つけた藤堂先輩がこっちに向かってきたと言うべきだろう。
「おはよう、朝日。秋月君」
「おはよう藤堂君」
「おはようございます藤堂先輩」
それぞれ挨拶を交わすと俺達は3人で歩き出した。学校までの道のりまで俺は口を開かなかった。というよりは、藤堂先輩が瑞穂に話し続け瑞穂はそれの相手をして2人そろって俺を忘れているようだった。何故だか分からないけど少しイライラした。
教室につくと竜馬がこっちへ寄ってきた。
「どうしたんだ、お前機嫌悪そうだぞ?」
以外に鋭いなと思いながら俺はなんでもないよと言った。
「まぁ、お前の事だから寝不足かなんかだろ。それとも夫婦喧嘩か?」
また始まったよと思いながらも、俺はいつもの様に相手をしてあげる気がしなかった。
「別に・・・」
「やっぱり、なんかお前おかしいぞ。熱でもあるんじゃないか」
竜馬は本当に心配しているような声になってそう言った。
「いや大丈夫だよ。ちょっとだけ気分が悪いだけ」
「そうか。なら今日はからかうのは止めとく。お前の突っ込みがないとやる意味ないし」
「あぁ」
「まぁ元気出せよな」
俺はお礼を言って瑞穂の方を見た。普段と変わらない瑞穂がそこにはいた。ただ、俺はいつもより瑞穂との距離を感じていた。