Episode14:春斗&喫茶店
家についてもおかしくない時間帯に俺はなぜか喫茶店にいる。勿論、1人ではない。なぜか真奈美先輩と一緒だった。
少しだけ時間を遡ってみると・・・
瑞穂と藤堂先輩が行ってから少し待ってから俺は帰ることにしていた。ある程度時間が経ってから俺が帰ろうとすると教室に真奈美先輩が現れた。
「あれ、真奈美先輩どうしたんですか?瑞穂なら帰りましたけど」
真奈美先輩がここに来る理由はそれぐらいしかないと思い、俺はそう言った。
「今回は瑞穂に用があるんじゃないんだ」
真奈美先輩はそう言った。じゃあ一体どんな用があるのだろう。
「今回はね春斗君に用事があるのよ」
「俺に?」
俺は素直に驚きながらそう言った。まさか自分に用があるとは思ってもみなかった。
「えっと、何ですか?」
「ここで話すのもなんだしさ。喫茶店行かない?」
「はぁ。構いませんけど」
こうやって俺と真奈美先輩は喫茶店へ行くことになった。
それで、俺は今喫茶店にいるわけだけど・・・。
「あの、真奈美先輩」
真奈美先輩はストローを咥えたままこっちを向いた。
「用事って何ですか?」
「あぁ、聞きたい?」
聞かせたいから誘ったんじゃないの。
「ここまで来たんだし聞きたいです」
「それもそうだよね」
そう言って真奈美先輩は顔に笑みを浮かべた。掴み所のない先輩だなと思ってしまう。
「話はね瑞穂のことなんだけどね」
「瑞穂のことですか?」
「うん。単刀直入に聞くけど春斗君は瑞穂の事をどう思ってるの?」
「瑞穂の事ですか?別に幼馴染だと思ってますけど」
「はぁ。瑞穂も可哀想に・・・」
一体何が言いたいのだろう。どうして瑞穂が可哀想なのだろう。
「春斗君も気付いてると思うけどさ、藤堂君って瑞穂のこと好きなんだよ」
いきなり話が変わったなと思いながら頷く。それはさっきなんとなく感じたことだった。
「それは何となくさっき感じました」
「いいの?」
「え?何がですか?」
「だから・・・。瑞穂が藤堂君にとられてもいいの?」
「とられてもって。俺は別に瑞穂の事を好きという訳では」
「そう・・・。なら、しょうがないか」
それから真奈美先輩は1度もその話題には触れなかった。何気ない事を俺に聞く先輩はいつも通りの彼女だった気がする。
真奈美先輩と喫茶店を出たときには既に日が暮れていた。
「話しすぎちゃったわね」
「そうですね」
「じゃあ私はこっちだから行くね」
そう言って真奈美先輩は俺が帰る方向と逆に歩いていった。
「さようなら」
俺がそう言うと、笑顔で挨拶を返してくれた。
俺は真奈美先輩が見えなくなってから歩き出した。歩き出してすぐにポケットから携帯を取り出す。画面を見ると瑞穂からのメールが1件届いていた。俺がそれを開くとそこには
「今日は私が1人で料理を準備するからお家で休んでからきてもいいよ」
とあった。俺は一瞬にして青ざめた。メールが届いた時間を確認すると40分前になっていた。俺はさらに青ざめる。
「やばい・・・。またあれを食わされるのか・・・」
俺はそう呟いてから家までの道のりを全力疾走で駆け抜けた。
「ピンポーン」
瑞穂の家のインターホンを押す。既に体には限界がきている。こんなんなら運動部に入っておくべきだったなと思ってしまう。
「は〜い」
瑞穂の高く綺麗な声が聞こえてからドアが開いた。瑞穂を見るとエプロンをつけている。
「遅くなって悪かったな。友達に捕まっちゃってさ」
「家に帰ってからでいいってメールしたけど」
「そうだけど、1人で準備させるのは悪いと思って急いで帰って来たんだ」
「そうなの?でも、もうできたよ」
「・・・・・・・」
「どうかしたの春斗?」
「いや・・・なんでもないよ・・・」
今日は一体何を入れたのだろう。そんな不安が俺の胸を支配した。