Episode13:瑞穂&春斗への
留学から帰ってきて、春斗以外の人と初めて一緒に帰ることになった。隣にはいつも春斗がいるものだからついつい藤堂君の事を春斗と呼んでしまいそうになる。
「こうやって朝日と一緒に帰るのって久しぶりだなぁ」
「うん、そうだね。1年生の時は真奈美と一緒に帰ったりしたのにねぇ」
「そうだよなぁ」
藤堂君が遠くを見つめて何かを考えているような顔になる。少しだけ見とれていた自分に気付いた。
「なぁ秋月」
考え事をしていたと思ったら突然、藤堂君はこっちを見ながらそう言った。
「何?」
「どうして、留年を選んだんだ?」
「え、どうしてって?」
「そのままだよ。俺にはお前が留年を選んだ事が全然理解できない」
「そう?」
「だって朝日は頭だっていいんだから。それに進級を選んだ方が友達も多いだろ」
「それはそうだけどね。自分でも分からないんだ」
「え?」
「自分でも分からないの。どうして留年を選んだのか」
「後悔はしてないのか?」
「うん、それは自信を持って言えるよ」
「そう・・・か」
藤堂君はまた考えるような顔になった。
「もう1つ聞いていいか?」
藤堂君の顔はさっきより真剣になっていた。
「何?」
「幼馴染の秋月君だっけ?」
「あぁ、春斗の事」
「うん。どう思ってるんだ?」
「え・・・」
春斗の事をどう思ってる。そんな事考えたこともなかった。隣にいて当たり前だと思ってた。私が春斗の隣にいて春斗が私の隣にいる事。それがずっと当たり前だと思っていた。
「良く分かんない。考えた事ないから」
「そう・・・。変な事聞いてごめん」
「別にいいよ」
私達は無言で歩いた。必死に話題を探そうとしたけど違う考えがそれを邪魔した。私は春斗の事をどう思ってるのだろう。大切な幼馴染。それは分かってる。それよりももっと大切なものなのだろうか。
「じゃあ、俺はここだから」
私が考え事をしていると藤堂君がそう言った。
「うん。また明日ね」
私はそういいながら手を振った。
「あぁ。またな」
彼も手を振りながらそう言った。
家についてから春斗にメールを送ることにした。
「今日は私が1人で料理を準備するからお家で休んでからきてもいいよ」
私はメールにそう打ち込んで送信ボタンを押した。そして、晩御飯を作り始めることにした。