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暖かな恋  作者: 佑紀
12/20

Episode12:春斗&痛み

俺が弁当を食べていると瑞穂が真奈美先輩と知らない男子生徒を連れてきた。制服から判断して1つ上の3年生のようだ。


「春斗、友達も一緒に食べるけどいいよね?」


瑞穂が俺にそんな事を聞いてきた。


「勿論、いいけど。それより俺がいない方がいいんじゃない?邪魔だろうし」


俺がそんな事を言うと突然、瑞穂の横から真奈美先輩が顔を出し口を開いた。


「春斗君もいなよ。いろいろと話してみたいし」


「はぁ、じゃあそうします」


春斗君なんて初めて呼ばれたけど。


「うんうん」


真奈美先輩はそう言いながら近くの開いてる席に座った。その隣の席に名前の分からない先輩が腰を下ろした。


「あ、春斗。こちらは藤堂 信幸君。私の友達なんだ」


突然、瑞穂がそう言った。へぇ藤堂先輩って言うんだ。


「えっと俺は秋月 春斗です。よろしくお願いします」


俺はたった今名前を覚えた人に挨拶をする。


「こちらこそよろしくね。秋月君」


藤堂先輩は笑顔でそう言ってくれた。なんか優しそうな人だと思う。


「真奈美の事は分かるよね、春斗?」


俺と藤堂さんの挨拶が終わってから瑞穂がそう言った。


「うん、何度か顔は合わせてるから。よろしくお願いしますね。真奈美先輩」


「こちらこそよろしくねぇ」


真奈美先輩は笑顔でそう言った。





やっぱり俺いなくてもよかったんじゃ・・・。今、俺を除く3人はとっても盛り上がっている。どうして俺がそうでないかというと話についていけないからだ。3人が話しているのは主に高校1年の頃の話。俺はまだ中学生だったのだから仕方ない。


「あの時は楽しかったなぁ」


「うんうん。特に瑞穂が面白かったよねぇ」


「もう思い出させないでよ」


そういった会話を3人は繰り広げている。箸を持った手は全員止まっている。俺は動いているのだけど。


「それより、春斗君。君は知ってるの?」


真奈美先輩が突然、俺に話を振ってきた。


「え、何をですか?」


あまりにも突然のことなので何の事か俺には全く分からない。


「瑞穂がどうして留年を選んだかって事についてに決まってるでしょ」


へぇ。それって決まってるんだ。良く分かんないけど。


「いいえ、知りませんけど・・・」


「本当に?」


「えぇ、瑞穂から聞いたこともないですし」


「ふ〜ん。じゃあ心当たりとかは?」


「ないですけど」


「そう」


真奈美先輩はどうやら納得してくれたようだ、一体何を聞きたかったのだろう。


「真奈美、そろそろ戻らないと」


瑞穂が真奈美先輩に向かってそう言った。時計を見るとそろそろ予鈴がなる頃だ。


「あ、本当だ。じゃあ行こうか、藤堂君」


「あぁ、じゃあな朝日」


「うん、またね」


瑞穂の返事を聞き2人は教室から出て行った。明日も来るのだろうか。もし、そうなら俺は違う所で食べようと思った。





午後の授業も全て終わり、今はHRの時間で担任の杉浦 美里先生が連絡事項を皆に告げている。多くの男子生徒がまだかよという顔をしている。そんなに焦らなくてもいいのに。


「じゃあ連絡はこれで終わります。では帰りの挨拶お願いします」


先生がそう言ってから、週番の人に従って挨拶をすます。これで俺達は晴れて自由の身となった。


「瑞穂、準備できた?」


俺は予め準備していておいた鞄を持ち上げ瑞穂の席へと近づいてそう言った。


「ごめん、もう少し待って」


真面目な瑞穂は俺と同じように鞄を空にして帰るのが出来ないらしくいつもなんらかの教材を持ち帰る。偉い幼馴染だなと感心してしまう。


「別にゆっくりでいいよ。どうせ急いでないし」


「うん、ありがとう」


瑞穂はそう言った途端、動きがスローになった。時々、思うけど瑞穂って単純すぎ。


「終わったし帰ろうか」


スローになり始めて約5分後に瑞穂はそう言った。さすがに時間かかりすぎ。全然構わないのだけど。


「あぁ、行こうぜ」


俺がそう言ってから俺達は歩き出した。そしてそのまま入り口のドアを出ようとした時、思いがけない自分がそこに現れた。


「あれって藤堂先輩じゃない」


前から歩いてくる人を少しだけ指差して俺は瑞穂にそう言った。瑞穂はその方向を見て、


「あ、本当だ」


と、言った。どうやら当たっているようだ。


「あ、朝日」


藤堂先輩も俺達に気付いたらしく小走りに変えてから近付いてきた。どうやら瑞穂に用事があるらしい。


「どうかしたの藤堂君?」


瑞穂が藤堂先輩がすぐそこまでやってきてからそう尋ねた。


「うん、ちょっと朝日に用があってさ」


「何?」


「えっと、今って暇?良かったら一緒に帰らない?」


「え・・・」


藤堂先輩の突然の誘いに瑞穂は少し困惑しているようだ。


「いや、その嫌ならいいんだ」


瑞穂の顔を見て少し寂しげな顔になった藤堂先輩がそう言った。


「嫌じゃないよ。ただ突然でびっくりしただけ。でも、どうしよう?」


そう言ってから瑞穂は俺のほうを見た。俺を1人で帰すのを気にしているのだろうか。


「俺の事は気にしないでいいよ。1人で帰るからさ」


「そう?じゃあ藤堂君、別に大丈夫だよ」


「本当?ありがとう」


藤堂先輩は本当に嬉しそうな笑顔でそう言った。さっきから薄々感じてたけどこの人は瑞穂の事が好きに違いない。そう考えると俺の心は少しだけ痛くなった気がした。


「うん。じゃあ行こうか」


瑞穂がそう言ってから2人は歩き出した。俺は10分ほど教室で待ってから帰ることにした。


なんだか心の奥が痛むけどどうしてだろう・・・

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