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暖かな恋  作者: 佑紀
11/20

Episode11:瑞穂&藤堂 信幸

今日の朝、久しぶりに真奈美に会った。同い年で一緒に1年間の留学をした。そんな私達2人が滅多に会えなくなったのは私が留年の方を選んだから。逆に真奈美は進級を選び元々の学年で生活を送っている。自分の選択に間違いはないと思っているけど時々こっちを選んだことに後悔する時がある。それでも完全に後悔していないのだから私はこっちでも満足しているのだと思う。その理由がどうしてなのかはよく分からないのだけど。





今は0時間目の英語の時間だ。やけに男子達の声が明るいのが気になってしまう。やっぱり先生が美人だからなのだろうか。そんな中、春斗はいつも通りなのに少しだけ嬉しくなってしまった。でも、何故だろう。


今やってるのは仮定法という範囲だ。1年間の留学を経験してる私はさすがに英語は得意だ。やっぱり理解できる授業は楽しく私は英語の時間が一番好きだ。それに比べて春斗は辛そうな顔をしている。


「ここは時制が過去になってるから・・・」


そういった説明が綺麗な声でされている。男子のほとんどは黒板を熱心に見つめている。正確に言えば先生を。





授業の終了を告げる鐘が鳴り響く。やっぱり英語の時間は早いなと改めて感じる。春斗の方を見るとやっと終わったよみたいな顔をしている。少しだけ笑ってしまう。


私が春斗を見て笑っているとたまに見る女子生徒が春斗の方へと近づいていくのが見えた。確か名前は東 琴奈さん。春斗に聞いたときそう言っていたのを思い出す。


春斗と東さんは楽しそうに話しているように見える。内容は分からないけどなんとなく嫌な気分になった。心の中が少しもやもやしている


私がそんな事を思っていると突然、春斗は立ち上がり自分のロッカーへと向かい生物の教科書を取り出し東さんへと渡していた。東さんをそれを受け取るとお礼を言って教室を出て行った。それを見届けてから春斗は自分の席へと戻っていった。


「瑞穂」


突然、後ろから私の名前を呼ぶ声が聞こえた。声の聞こえた方を振り向くとそこには風歌が立っていた。


「風歌、どうかしたの?」


「別になにもないよ。ただ瑞穂が旦那様の事ばかり見てるからさ」


「べ、別に私は春斗の事ばかり見てないわよ。それに春斗はそんなんじゃないから」


少しだけ焦って噛んでしまう。これじゃ怪しすぎる。


「どうかしらね。旦那様が他の女子と話しているのが気になるんでしょ?」


「別にそんなんじゃないわよ」


「本当に?瑞穂の視線はずっと旦那様の方を向いてたわよ」


「違うわよ。私はすこしボーっとしてただけ」


「ふ〜ん。ボーっとする時でも愛しい旦那様の方を向くんだね」


「それはたまたま。もう、風歌いい加減にしてよ」


「ふふふ、分かったわよ。ちょっといじめ過ぎちゃったかな」


意味ありげな笑いを浮かべながら風歌はそう言った。





「キーンコーンカーンコーン」


午前中最後の授業の終わりを告げる鐘が鳴り響いている。これから弁当だという事もあってクラスはざわついている。


「瑞穂、弁当食べようぜ」


春斗がそう言いながら私の席へと近付いてくる。その手には2つの弁当箱がある。勿論、私と春斗の分だ。


「はい、瑞穂の弁当」


春斗はそう言いながら私に弁当を渡してくれた。私はお礼を言いながらそれを受け取る。


「今日はちゃんとした物を食えるぞ」


突然、春斗がそんな事を言った。どういう意味だろう?


「ちゃんとした物って?」


私はそう聞いてみる。


「あ、いや。何でもないよ」


「そう?」


「うん」


これ以上、聞いても無駄だろうし私は簡単に引き下がる。長い間、一緒にいるとこういう事が分かってしまう。


「いただきます」


私が春斗は二人揃ってそう言った。弁当箱を開けるといつもより質素だけど美味しそうなおかずが入っている。そういえば春斗と一緒に作ったんだと思い出す。


「なぁ瑞穂」


私が弁当を食べようとすると春斗が私の事を呼んだ。食べるのをストップし春斗の方を見る。


「真奈美先輩がいるよ」


そう言いながら教室の入り口の方を指差した。私がその方向を振り向くと確かに真奈美が立っていた。


「真奈美、どうしたの?」


私は立ち上がり真奈美の元へ駆け寄りそう言った。


「久しぶりに瑞穂と弁当食べようと思ってね」


そう言いながら手に持っている弁当箱をひょいと持ち上げる。


「いいね。春斗も一緒だけど大丈夫?」


「全然大丈夫。一度話してみたかったし。それに私も1人じゃないんだよね」


そう言って真奈美は顔を右の方に向ける。私もその方向へと顔を向ける。そこには1人の男子生徒が立っていた。


「藤堂君?」


私はその男子生徒にそう尋ねた。


「あぁ、朝日久しぶりだな」


藤堂君はそう言いながら手を上げた。


藤堂 信幸君は私と同い年の生徒だ。中学から学校が一緒で男子の中では仲が良いほうだった。私が留学に行ってからはこれが初めてだった。


「本当に久しぶりだね」


「あぁ、朝日が留学に行ってから会ってないからな。1年と2ヶ月ぐらいか。まぁ本当は校門の方とかで見かけたりしたんだけどなかなか声かけづらくてな」


「私も何度か見かけたことあるよ。藤堂君と同じで声をかけられなかったんだよね」


「へぇ。俺はもしかしたら忘れられてるんじゃないかと思ってたけど少し安心した」


「簡単に忘れたりなんかしないよ」


「そうだよな」


藤堂君はそう言うと小さく笑った。私もそれを見て笑った。


「感動の再開は終わった?それより弁当食べましょう。時間もないからさ」


私と藤堂君の間に割り込んで真奈美がそう言った。


「そうだな。それにお腹もすいた」


「じゃあ食べよっか」


私のその言葉を合図に私達は教室に中に入った。



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