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アルバイトが決まる
小さな事務所のドアを開けると、痩せ型の顔色が青白い感じの主任がこちらを見た。
「面接に来ました」とタカシが言うと、
「履歴書は?」と主任は聞く。
学生証を見せると、裏表をひつくり返して調べた後、仕事の内容を語り始めた。
アルバイトの場合は履歴書を出さなくても学生証を見せるだけでほとんどOKである。これが東京のカッコ良さである。田舎ではこうはいかない。田舎ではたとえアルバイトでもいろいろ書類を出させる。
住民票とか保証人とか誓約書とか。履歴書の他に3つも4つも書類を提出してやっと合格である。
田舎ではアルバイトも甘く見ない。正社員と同じである。
アルバイトが見つかったのでタカシは安心した。大都会で生活するためにはぼんやりしていては駄目で、迅速に動かなければならない。ぼんやりしていると命取りになる。浪人時代はこんなに性急な気持になっことはなかったが、東京は人も車も電車も情報も早く動いている。この流れに遅れると致命的である。