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第壱章「破れた世界の隅で」ー第参話ー

今回は少し短いですが宜しくお願いします。

活動報告にも記載していますが、設定の一部変更と追加があります

そちらも参照ください

「くそっ! こんなはずじゃ……」


 専用のパイロットスーツのバイザー越しに、ナオはジーオンのコックピット内で呻いていた。

 それも当然である。

 270度マルチスクリーンに映し出されたのは、オプファーにセプス、それにゼルトナーを含む8機のアーマード・ロイドがジーオンに攻撃をしかけてきていたのだ。

 最も、ナオが手を焼いているのは数の問題ではない。

 オプファーにセプスの連携は勿論の事、ゼルトナーの波状攻撃に成すすべもなかった。

 ナオはフットペダルを踏み込み、バーニアスラルターと4次元テールノズルを展開させ、事態を打開させるべくジーオンを急上昇させた。

 しかし、それすらもゼルトナーの攻撃の的であった。

 120mmケースレスマシンガンの集中砲火を浴びて始末。

 更にはそこに320mmバズーカの砲弾を打ち込まれたが、ジーオンの装甲を破壊するには至らなかった。


「相手はフライトシステムに乗っているのに!」


 そう、『ペガズ」に『ドラーゴ』においてもそれぞれの特性があるが、旋回性能においては動きが遅くなるのだが、連携する事でそれをカバーしている。

 そして常に一撃離脱を行う事で的を絞らせない。

 その証拠にマルチスクリーンに映し出されている照準マーカーが常に忙しなく動き回っている。


「来た!」


 モニターにオプファイー接近の警告表示がされた。


「早い!」


 急降下しつつ120mmケースレスマシンガンを連射しながらの高速接近、そしてすれ違い様の放たれたダマスカス鋼の剣での一撃がジーオンを大きく揺さぶった。

 通常のアーマード・ロイドであればこの一撃で破壊されていたであろうよ。

 それでも操縦桿を動かし、ナオは空中で直ぐに機体の立て直しを図ろうとした。

 しかし、そうはさせないとばかりにセプスの攻撃がジーオンを襲う。

 これはゼルトナーの連携精度を上回る攻撃であった。

 バスーカによる被弾で動いた方向に次の砲弾が来るのだ。

 それはまるで予定調和のように、まるで踊らされているかの如くであった。


「この前と全然違う!」


 ナオが叫ぶ理由は最もである。

 いずれにしても前回はあくまでもジーオンの捕獲がメインであり、出来れば損壊を少なくする為に「手加減」をせざるを得なかったのだ。

 しかし今回はそういった制約は一切無く、ただ純粋に破壊を行うのみであればある意味、手加減する必要性など何処にも存在しない。


「ジーオンの特性を活かせば……」


 一撃離脱戦法こそジーオンの攻撃スタイルの真骨頂である。

 どのような攻撃も受け付けない堅牢な装甲と、高速移動を可能とする大型バーニアスラスターに四肢に配置された出力のバーニアに何者もを切り裂く「アンサラー」。

 超近接戦闘を主眼に開発されたと思われる機体、それがジーオン。

 モニターには依然として無傷のアーマード・ロイドが映し出され、照準センサーがそれを常に追っていた。


「遊んでいるつもりか? なら1機1機、確実に行動不能にする!」


 それ以外、活路は見いだせない状況なの確かである。

 ナオは操縦桿を押して、ゼルトナー目掛けてジーオンを高速移動させた。  

 120mmケースレスマシンガンの弾丸が装甲を幾度も当たるが、意に介さずに突き進む。

 背部のバーニアスラスターの出力も最大限となり、まるで狼の咆哮のような音が鳴り響く。

 何と、100mの距離を僅か3秒で詰めた。

 それは相手の動きを封じるには十分であった。


「今度は迷わない!」


 極低周波振動クロー「アンサラー」がゼルトナーの上半身と下半身を完全に分断した。

 直ぐに機体を反転させ、次の機体へと向かってバーニアスラスターが轟音と共に火を噴いた。

 しかし、次の攻撃はゼルトナーには躱されてしまったが、機体の向きを変えて追従する。

 ゼルトナーが『ドラーゴ』に搭乗しているとはいえ、出力と推力ではジーオンが圧倒的に上回る。

 それこそまさに亀と兎。

 否、極端なまでの性能の違いを見せつけた証左であろうよ。


「320mm砲弾が何だ!」


 ゼルトナーは構えたバズーカもろとも両腕を切断されてしまった。

 その衝撃で、空中でバランスを崩した処を、ナオは見逃さなかった。

 しかし、それを同じく他のゼルトナーも見逃しては居なかった。

 相手が攻撃に移るのであれば当然、そこには隙が、そこには予測された動作が必ずある。

 発射された砲弾がジーオンの胸部に直撃した。

 衝撃をバーニアスラスターで相殺するが、その反動でコックピットが少し揺れた。

 間髪入れずに警告アラームが鳴り響いた。

 モニターには60機にも及ぶ熱追尾型マイクロミサイルがジーオンに向かって高速で飛来してきていた。


「こんなに! ちょこまかと!」


 追尾ミサイルを躱す為に機体を上昇させつつ回避運動に入る。

 ジーオンのスラスター出力ならば余裕で振り切れるはずであった。


「くそっ! こんな時にも!!」


 その行動を理解して、というよりも当然のように把握していたセプスが砲弾を打ち込んできたのだ。


「しまった!」


 ジーオンの左脚に直撃。

 破損はなかったが、行動を一時的に止めるには十分であり、次の瞬間にマイクロミサイルが全弾直撃した。

 それは通常のアーマード・ロイドであれば6機は完全に爆破出来る熱量の爆発。

 しかし、それをもろともせずにジーオンは爆発の中から飛び出してきた。

 その性能にパイロット達はコックピットで絶句したであろうよ。


「こいつも行動不能にする!」


 ジーオンのアンサラーがゼルトナーを完全に捉えていた。


「何ぃ?!」


 ナオは何が起きたか理解出来なかったのも無理はない。

 アンサラーはこれまで通り、ゼルトナーの上半身と下半身を完全に分断するはずであった。

 しかし、バーニアスラスターを要する背部に砲弾の直撃を受けたので、その軌道がズレたのだ。

 そして、それは最悪な事態を引き起こした。


「う、嘘だ……」


 アンサラーはゼルトナーの胸部コックピットに深々と突き刺さり、そして上半身を完全なまでに破壊したのだった。


「何だってこんな事に?! うわっ!!」


 ナオの感傷を粉砕するかの如く砲撃は止む事は無く、むしろ激しさを増していった。

 空中で、半ば棒立ちの状態のジーオンは砲弾に揺られて右に左に、まるで滅多打ちのようになっていた。


「……これ以上、いい様にもてあそばれて」


 ナオは操縦桿を持ち直した。

 相手が弱っている時にトドメを刺す。

 これは定石であり、セプスもオプファーもそれを見逃す事はなかった。


「三機同時なのか?!」


 セプス3機は一斉に『ペガズ』から離脱するとジーオンに向かって、それぞれがまるで8の時を描く軌道で砲撃をしながら突進してきたのだ。


「的を絞らせないつもりか?! 一直線になった。何?」


 次の瞬間、再び散開したと同時にオプファーが正面からランサーを向けてきたのだ。


「しまった!」


 しかし、もう遅い。

 ランサーはジーオンのマルチセンサーに押し当てられていただけではなく、そのままオプファーの全スラスター出力で地上へと急降下させられていた。

 回転するランサーがジーオンの装甲に穴を開けようと激しい火花を散らす。


「くそっ! 出力を上げているのに」


 バーニアスラスターや脛部のスラスターが、オプファーの出力と重力に抗おうと火を吹くが地面に叩きつけられてしまったのだ。

 流石の衝撃吸収シートでも、この衝撃までは完全には吸収出来ず、ナオはシートで大きく背中を打ち付けてしまった。

 そのような事など勿論、知らずにオプファーは320mmバズーカの銃口をジーオンに向けた。

 0距離で、連続で発射される砲弾がジーオンの機体を更に揺らした。


「畜生。こんな処で……」


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