親父は神様なのか~銭湯編~
ちょっと思いつきで書いてみました。
誤字脱字あるかと思いますが、よかったら読んでみてくださいませ。
ごく普通な高校三年生の神原透(17)は非常に深刻な悩みを抱えていた。
それは進路の事ではなく恋愛の事でもなかった。
勿論、友達の事でもなければ金銭関係でもない。
では家族の悩みなのか?――それが正解である。
正確にいえば父親の「神原一輝」のことである。
神原家の家族構成は父、一輝。母、ナターシャ。妹、愛莉。そして長男、透の4人家族である。
透の母親は透を産んだ際に亡くなったらしい。
現在の母親は再婚したロシア人の女性である。
したがって妹の愛莉はハーフの中学二年生。
母のナターシャはバレエ教室の先生。
そして神原家の主である一輝は自称「神様」の無職である。
一輝は透が幼い頃から、
「透。父ちゃんは神様なんだぞ。すごいだろ。」と、愚痴のように言っていた。
透も小さい頃は、「うん、すごい!」と、喜んでいたものだった。
今では、自分の父親が変だということに苦悩しているのである。
「ただいま。」
「おう透、おかえり。どこ行ってたんだ。」
「どこって学校に決まってんだろ。ったく少しは仕事くらい探せよな。ナターシャさん出ていっちまうぞ。」
一輝は呑気にお菓子を頬張りながらテレビを見ながら言った。
「ハハハ、大丈夫大丈夫。母さんは神である俺のことを愛してるからな。それより透、うちの風呂が壊れちまってんだ、久しぶりに銭湯に行こう。」
「嫌だよ。ってか何でうちの風呂が壊れてんだよ?」
「さあ、何でだろうな?お湯が出ないんだよ。」
透はピンときた。
「さてはガス代払ってないんだろ。」
「おう、そうか。じゃあ明日払うから今日は銭湯で決まりだな。そうと決まれば早速行くぞ、透。」
半ば強引に銭湯へ、親子二人でいくはめになった透は、仕方なく諦めた。
その道中、
「だいたい神様なら、お湯くらい出せよ」
「馬鹿野郎!神が私利私欲に力を使うわけにはいかんだろ」
「だったら働けよ」と、言う透の言葉は前方を鼻歌を歌いながらスキップする父には届かなかった。
銭湯に着くと一輝のテンションは一段と上がった。
「ほら透、早く脱げ。」
「やめろって、自分で脱ぐから!」
「そんなに怒るな。じゃあ父さんは先に行く。」
一輝は、そう言って敬礼して突撃していった。
「はぁー」
透は父の全裸の後ろ姿を見て、ため息が出た。
透が銭湯に入ると、
「おーい透、こっちこっち。」と、風呂に浸かっている一輝が手招きしている。
透は何度も大声で名前を呼ばれては、たまらないと思い、身体をザーッと流すと一輝の元へ急いだ。
「おう来た来た。透、お前に紹介しとくな。」
一輝の両隣には、右側に禿げたおっさん。左側にメタボなおっさんが、にこやかに待ち受けていた。
「こっちが山の神の山田さん。」と、右側のおっさんを指差す。
「こっちが川の神の川上さん。」と、左側のおっさんを指差す。
透は慣れたもので、「どうも」とだけ挨拶した。
「ほう。こちらが神の王のご子息ですか」
「さすが王のご子息。凛々しいお姿ですな」
山田さんと川上さんが、すかさずよいしょする。
「そうだろう。まあ全知全能の神の息子だからな、ハハハ」
「いやー、やはり神原さんは、神の中の神ですなあ」
「本当本当。いよっ!この神の王様。」
「やめてくださいよ、照れるでしょ。」
三人は風呂に浸かりながら楽しそうに笑いあっている。
そんな中、一人だけ、この状況に笑えない男がいる――透である。
「おい、おっさん達!いい加減にしろよ。なにが神だ、いい年して馬鹿な事ばっかり言ってんじゃねえよ。あんたら三人共、普通のおっさんだ。いいや普通のおっさん以下の恥ずかしいオヤジだ。」
透の怒りは全裸で爆発した。
「神原さん、いくらあなたの、ご子息とはいえ許しがたし。少しお灸を据えてやらねば」
「川上さん。親の私がしっかりしていないばかりにご足労をおかけします、少々社会の厳しさを、このばか息子に叩きこんでやってください。」
「さあ、きなさい。」
川上さんは透を風呂の中に引きずりこむと、
「ふん!」と、力を入れた。
すると風呂の中のお湯が、すごい勢いで渦を巻き始めた。
その渦は、どんどん勢いを増し、透を飲み込んでいく。
「おお!さすがは川上さん。」
「なかなか、やりますな。まあ俺ほどでは、ないがね」
一輝と山田さんは、いち早く風呂から脱出して様子を見ている。
「うわぁぁ!やめろ」
「ハハハ。どうですか、ご子息。この川の神、川上の力は」
「やめろって言ってんだろ!」
次の瞬間、透は両手を広げ、お湯の渦を吹き飛ばした。
「な、なんと!」川上さんは、ただただ呆然とした。
「さすがは神の王のご子息。なんというパワー!」
山田さんは、ただただ呆然とした。
「息子よ。よくやった!ブラボー!」
一輝は精一杯の拍手をおくった。
透は「二度と親父と銭湯には行かない」と、心に誓った。
銭湯の湯気が天井から水滴になって一滴、山田さんの頭に落ちた。
「ピチョン!」
一同は、それを静かに見届けた。
(完)
稚拙な文章ですいませんm(__)m
最後まで読んで頂きありがとうございました。