俺は『じい』じゃないのに……
「じい……良く豪邸とかにいるお手伝いさんみたいな人かなぁ……」
俺は数学の授業中、今日授業でやっている計算問題は得意なので近井さんが話していたじいについて想像している。
「近井さんは豪邸にいるお嬢さんで、ある日じいと呼んでいたお手伝いさんが逃げちゃったとか?」
じい(イメージだけど)が金目のものを持って逃げる様子を俺は深く想像していた。
「しかしなんでまた間違えるんだか~。そんな似てんのかな~、その前に年齢が合わなさそうな~」
想像した人物像と俺は似ていると思えないというだけでなく、他の可能性とか考えているうちに俺は悩みの坩堝に入る。
『私のそばでコキ使われ倒しなさい』
「こ……ここは早めにじいじゃないことをわかってもらわねば!」
彼女の有無を言わせない雰囲気、逆らえなさそうな目つきを思い出して俺の身体に何やら寒気のようなものが走った。
俺はコキ使われるとか嫌だったので近井さんに説明する。
「ねえ近井さん、俺はじいじゃないんだ。ほら制服。じいみたいに紳士じゃないだろ? ヒゲだってないだろ? メロンに生ハムを巻いたりしないし」
一部俺の妄想が入っているがそれだけ伝えれば諦めてくれると思ったのである。だが、近井さんが黙ってポケットから写真を取り出す。
「?」
近井さんが見せてくれた写真を俺は黙って見ることにした。 俺が見た写真には何でか涙を流してお手上げポーズの外人さんと近井さんが写っている。
「強いて変わったといえば……顔?」
誰でもよさそうに近井さんが応える。
『つまり誰でもいいんだな? おじいちゃんですらねえ!!』
(まあ……コキ使うだの言うから警戒していたけどこんなんなら大歓迎だ)
俺は笑顔で腕に捕まってくっついてくる近井さんに、彼女に感じた怖い印象よりも照れの方が勝っていく。
「あっ、忘れるところだった」
「ん?」
満面の笑みで何かを思い出した近井さんに俺はどうしたのかと思った。
「…………な……なんか犬みたいだね……ファッションかな?」
俺は人間の首の太さに合った犬の首輪らしきものをつけられたのでポカーンとするしかない。
「これでもう逃げられない」
「!?」
近井さんに何かを企んでいるような含み笑いをされて、俺は遅まきながら自体の深刻さに気づいた。
近井さんがカバンの中から笛のようなものを取り出した。俺には何が何だか訳がわからない。
「うっ!?」
近井さんが吹いた笛の音に、俺は首輪が反応した気がした。
「Ф∈※〒∞□♂」
首輪がジワジワと小さくなっていき、俺の首が絞まって苦しくなっていく。
最遊記の悟空の頭のワッカ(名前は何だったか?)と似たようなものだと考えてくれればわかりやすい。首輪を取るのを考えはしたが、苦しさで手が動かなかったのである。
「私に逆らうとこうなるから覚えといてねっっ」
近井さんは人を従わせることにゾクゾクとした快感を覚えているようだ(軽く俺、死にますよお嬢様)俺はそんな考えを頭に残したまま失神した。もしかしたら仮死状態になったかもしれない。




