3、不吉
国王が崩御し、新王の即位にあたって巫女の選定が十日後と聞いたその日から、めまぐるしく時は過ぎていった。今までのようにただ惰性的に修行を続けていた日々の中で感じる十日とは、まるで違う。選定の儀式の練習や、後宮を引き払うための準備、そしていつもよりも増強された巫力の修行が一日の中に詰め込まれて、あっという間に十日が過ぎた。住み慣れたこの後宮に別れを惜しむ間もない。己が巫女になるのかそれともただ人になってしまうのか、その二択の突きつけられるあまりにも重大な儀式は、あっというまに目前へと控えていた。
——そして、その日はすぐにやってきた。
ついに儀式当日とあって、後宮の中は前例を見ぬ騒がしさである。朝から禊のために叩き起こされ、冷水を浴びた後に儀式の衣装を着せられて、聖女たちは一カ所へと集められ、選定の儀式に関する詳細を聞かされた。それはとても不思議な空間で、後宮の中に住んで長い聖女たちの誰もが訪れたことのない、円形の間である。詳細を聞かされたと言っても、その詳細を語る相手の姿は見えず、頭の中へと直接語りかけてくる「感応の技」を利用してのものだった。ゆえに聖女たちには、誰がこの儀式を取り仕切っているのかわからない。が、総入れ替えの制度により現在この後宮の中にいるほとんどの者たちは儀式を経験すること自体が初めてなのだから、後宮内の人物ではないのだろうとカグワは予想した。
「一刻の後に、儀式が始まる」と締めくくられて、長い説教じみた儀式の説明はようやく終わった。円形の間から外に出ると、そこは見慣れた後宮の内殿の脇、渡り廊へと続いていた。嗚呼、ここに出るのか、と声に出さずに思う。この渡り廊は後宮の庭と繋がっており、カグワは何度もここを歩いたことがあるのだが、一体この廊下の先がどこへ続いているのかは、知らなかった。後宮を出なくてはならないというその日に、ようやく知った。これはあの不思議な円形の間へと続く道なのだ。
「あとたった一刻で運命を定められるなんて……心の準備が間に合わないわ」
ぽつりと呟いたのは、五の君、ダイアンだ。カグワの後ろを歩いて渡り廊を進んでいる。そしてその隣に並んでいるのが、六の君、アネットである。
「そうね……。むしろ、一刻なんて間に時間を置くくらいなら、あの場でそのまま儀式をしてくださったら良かったのに。この一刻の間に緊張してしまうわ」
アネットが言った。円形の間にて聞かされた感応による説明によれば、「一刻の後、再びこの円形の間に集うように。儀式はここにて行う」という。その一刻の間に儀式の準備を行うためなのかどうか、聖女たちにはそれすら聞かされていないが、一刻という長くも短くもある時間を、外で悶々と過ごさなくてはならないのは確かに精神を削る作業であった。
「だってもし、これで、巫女に選ばれなかったら、選ばれた巫女の世話役として一生仕えなくてはならないのよ」
ダイアンが嘆くように言う。これも先ほど円形の間で聞かされたことだ。聖女たちの最も気になっていた、「巫女に選ばれなかった聖女はどうなるのか」という問いに対して、感応の声は淡々と告げた。「選ばれなかった他の聖女は、選ばれし巫女に一生を捧ぐ。この国を神の使いとして守る巫女を、一生支えていくことが役目となる」と。
「いやだわ、世話役なんて……! どうして今更誰かに仕えなくてはならないの」
「本当に……。これでもし巫女がアネット以外だったらどうしましょう。アネット、貴女になら仕えてもいいけれど、他にはとてもとても」
「まあ、私もよ、ダイアン。もしも互いが巫女になったその時は、お互いを優遇しましょう」
どこまで本気かわからない、拙い約束を交わす二人の声が聞こえる。またいつものことか、とカグワは息を吐いた。アネットとダイアンはいつでもそうだ。本当は心の中では自分が一番でないと気が済まないくせに、言葉の上では互いを配慮して、そして裏では互いのことを貶めたりもする。互いが巫女になった場合は、相手を優遇しましょうなどという口約束も、果たして守られるのどうか。——いや、無理だろう。
カグワはふと足を止めて、後ろを振り返った。後ろを歩いていたアネットとダイアンが、突然歩みを止めたカグワにぶつかりそうになり、迷惑そうに顔をしかめる。「きちんと歩いて下さらない?」と厭味を飛ばす彼女たちに「ごめんなさい」と愛想笑いで答えてから、カグワは己の歩いて来た道を見つめた。
長い渡り廊である。その先は、やはり、見えなかった。
不思議なもので、確かにあの円形の間から退場してこの廊下に出て来たはずなのに、この道の先には円形の間が見えない。天上は高く、吹き抜けの窓のある巨大な建物だったのに、何故外から見ることはできないのだろうか。何かしら不思議な力が働いているのだろうとカグワはその方角を眺めて首を傾げた。
「——カグワの君、貴女も何か、感じるの?」
突然背後から声をかけられて、カグワは後ろを振り返った。そこに立っていたのは、浅黒い肌をした長い黒髪の美女である。いつもの見慣れた黒髪を下ろした姿ではなく、儀式のためにと高く結わえられたその姿がまたとても印象的だ。
「……ネイディーン」
ネイディーン——彼女は、一の君と呼ばれる。すなわち、ここにいる聖女たちの中では彼女の巫力が最も高い。もしも巫力のみにて巫女を選定するのであれば、間違いなく彼女が次期巫女だ。いや、もしそれだけが基準ではないとしても、恐らく巫女になるのはネイディーンであろう。ネイディーンは美しくとも飾らず、聡明で柔和な人物だ。彼女をおいて他に国の頂点に立つ器の聖女はいないだろう、と、カグワは思っていた。
「あそこに控える円形の間……なんとも、不穏な空気を覚えるわ」
ネイディーンが小さく呟いた。カグワは目を見開く。
「……え?」
カグワは何も見えない、おそらく円形の間のあるであろう方向を見つめた。ぽっかりと空いた何もない空間の向こうに、雲一つない青空が広がっている。清々しいその蒼穹は確かに逆に不穏であると言われればそう感じ得ぬこともないが、カグワには気付けない。
「……さすがね、ネイディーン。私は、何も気付かなかった」
カグワが感心半分、己の力不足への嘆き半分に呟くと、今度はネイディーンが目を見開く。
「あら、なら、どうしてあちらを振り返ったの? 何かを感じたのではなくて?」
「いいえ、なにも。ただ、この渡り廊からあの円形の間を眺めたいと思っただけよ。——何も見えなかったけど」
「……カグワの君、貴女はとても勘に優れているわ。それはそれで、間違いなく貴女の能力よ」
ネイディーンは、黒真珠のような瞳を細めて微笑んだ。何故だかその顔に影が生じる。カグワは自分より少し背の高い一の君を見上げ、小首を傾げた。上品な化粧で覆い隠してはいるが、疲弊しているようだ。
「……ネイディーン、貴女も選定の儀式を前にして、とても緊張しているのかしら?」
「え?」
「なんだかとても……疲れているみたい」
思った通りを告げると、ネイディーンは黒真珠を大きく開いて何度も瞬き、それから目を伏せるとふっと笑った。言い当てられた、と言わんばかりである。
「……貴女は、とても勘がいいわ」
ネイディーンはさっきと同じ言葉を紡ぐが、今回のこれは勘というわけではない。カグワには、彼女の顔色があからさまに悪く見えた。
「珍しいわね……。何事にも動じない、ネイディーンが緊張だなんて。……まあ、巫女選定の一大事だから、仕方ないかしら」
言って、彼女の気を和らげようと笑うと、ネイディーンは困ったように微笑んで、首を横に傾げた。
「いいえ、そういうわけじゃないの……。私のこれは、緊張ではないわ……自分への戒め、とでも言おうかしら」
「戒め?」
「ええ……。己の失態に、疲れてしまったの……戒めなくてはならない、失態よ……あら?」
途中まで言いかけて、ネイディーンの声色が変わった。カグワの方を見ていた彼女の視線が、渡り廊の外、後宮の庭先の方へと移る。遠くを眺めるその眼差しに、カグワもつられるように後ろを振り返った。
「あそこにいるのは、……カグワの君の仗身ではなくて?」
「え?」
ネイディーンに言われ、彼女の示す先を眺めて、カグワは瞠目した。確かに、その庭の茂みには、よく見慣れた装衣姿の男が、隠れていたのである。
「……ゆたや!」
ネイディーンの話を遮ってしまったことも忘れ、カグワは己の仗身の名を呼んだ。がさがさと茂みが揺れる。その気配をカグワが見紛うことはない。なにしろ十年も付き添った、仗身だ。
見つかってしまって隠れているわけにもいかず、ひょっこり茂みから姿を現したその背の高い男は、それはもう気まずそうな顔をしていた。確かに、本来巫女選定の儀式を間近に控えた主の元へ、仗身の身分で現れる者などいないだろうから、並大抵ではない引け目を感じているのだろう。が、そんなことを気にするカグワではないわけで。
「どうしたの? こっちへいらっしゃいよ」
周囲の目も気にせずに彼のことを手招きすると、カグワを抜かして前を歩いていたダイアンとアネットがこそこそと互いに何かを耳打ちした。その内容までは聞こえないが、おそらくカグワに対する悪口雑言を吐き合っているに違いない。また東の君が、とか、仗身をこんな時にまで連れて、とか、まあ、予想はつく。
「このような時に、このような場所まで来てしまい……申し訳ございません」
渡り廊の下までやってきたユタヤは、廊下に上ることはせずに、地面の上に膝を付いて深々と頭を下げた。
「一の君とご歓談のところを、お邪魔してしまったのではないでしょうか」
ユタヤはカグワの隣にいるネイディーンの方を伺う。そこでようやく、ネイディーンの話を遮ってしまったことを思い出し、「あ」とカグワは口を押さえた。一方のネイディーンは「いいのよ」と柔らかく微笑んでいる。
「儀式まではあと一刻……何をしていろともどこにいろとも指示されていないわ。もちろん、仗身と会うなとも言われていないわけだから、私のことは気にせず」
「ごめんねネイディーン」
今更の謝罪をしてから、カグワは渡り廊の石畳の上に屈み込んだ。石畳はそこそこの高さがあり、地面に直接膝をついているユタヤよりも、若干カグワの目線の方が高い。
「ゆたや、なにかあった?」
それでもなんとか頭を垂れている彼の顔を覗き込もうと首を傾げると、ユタヤはようやく顔をあげた。
「いえ……何があったというわけでもなくて……本当に恐縮なのですが……」
ユタヤは一度顔をあげてまっすぐカグワのことを見つめて、それから迷ったように目線を泳がせる。
「なんとも……不吉な予感に駆られまして……いてもたってもいられず、つい……」
「不吉な予感……?」
カグワは思わず、隣に立っているネイディーンの方を見上げた。先刻、彼女からも「不穏な空気を感じる」と聞いたばかりである。それに何か関係があるのだろうかと目線で問いかけると、ネイディーンは首を竦めた。
「主が主なら、仗身も仗身で勘が良いのね。——不吉な予感とは、具体的に?」
まさか一の君に問われるとは思っていなかったのだろうユタヤはすっかり恐縮しきったように身を縮こませる。
「いえ、聖女の君がお感じになるような、高尚なものではございません……私はただ、三の君に何かあってはと、思っただけのことで」
ユタヤは他の聖女の前では体裁を気にしてカグワのことを名前では呼ばない。三の君、と呼ばれたカグワがきょとんとすると、代わりにネイディーンがくすと笑った。
「本当に、最後の最後まで献身的な仗身ね」
「最後……?」
「あら、そうよ、カグワの君。この後私たちは選定の儀式に入るのだから、これで仗身とは一生の別れとなるかもしれないのよ。巫女に選ばれれば引き続き仗身は仗身のまま付いてくるでしょうけれど……そうでなければ、巫女の世話役になる者の仗身がどうなるのかの説明はなかったわ」
「……そういえば」
カグワは息を呑む。全く、気付いていなかった。まさか四六時中一緒にいた仗身と別れるかもしれないだなんて、頭の片隅にもない考えだったのである。
「貴女の仗身も、別れを惜しみにきたのではなくて?」
からかうようにネイディーンが言う。「滅相もない」と慌てて首を横に振ったユタヤにはしかし、少しはそういう気があったのだろうと、付き合いの長いカグワには読み取れた。かぐわは、そうか、もし自分が巫女になれなければ、この仗身とも別れなくてはならないのかもしれないのだと、初めて気が付いた。
「私は、結果がどうなろうとも、私の役目を果たすまでですが……」
そうはっきりと言ってのけたユタヤの顔に、思わずカグワは手を伸ばす。少しだけ自分より低い位置にいる彼の頬を撫でて、頭を撫でて、されるがままになっているそれはもう献身的な自分の仗身に、どう言葉をかけていいのかわからない。それはそうだ。突然別離の道かもしれないと言われたところで、今までずっと傍にいたのだ。どうしてそんな未来を予想することができよう。
「……ネイディーン」
口をついて出て来た言葉は、
「もしも貴女が巫女になったら……私は貴女に世話役として一生尽くすし、なんでもするから……ゆたやのことも護衛として雇ってあげられないかしら」
先ほどダイアンとアネットが散々繰り返していた馬鹿馬鹿しい「もしも貴女が巫女だったら」の話よりも、遥かに上を行く虚言だ。何を言っているのだ、と己を諌める冷静な自分もどこかにいて、それが絵空事であることはわかっているのに、止められない。
「ほら、だって……やっぱり普通の人間よりは力もあるし、ネイディーンの仗身一人よりも二人いた方が……なにかと役に立つかもしれないし」
「そうねぇ……でも、もしも私が巫女だったとしても、そういう役職のことは古くからのしきたりに従って決めなくてはならないだろうから、どうなることか」
ネイディーンの答えはとても落ち着いて沈着なものだ。カグワの絵空事を馬鹿にして笑うのでなく、現実的に答えてくれる。
「それに、もしも護衛にできたとして……彼は貴女以外の人間を、命を張ってまで守れるかしら?」
そう微笑するネイディーンの視線の先には、カグワの前に膝を付くユタヤの姿があった。姿勢一つ崩さずまっすぐカグワを見上げるそれは、絶対的な忠誠の証である。
「……そもそも、私が巫女になると決まったわけでもなし」
言っておどけてみせるネイディーンの優しさに心底感謝しながら、カグワは俯いた。
「ええ……そうね。おかしなこと言ってごめんなさい」
こちらを見上げるユタヤが、悲しげな目でこちらを見上げてくるのは、きっとカグワがそんな表情をしているためであろう。彼は時折カグワの感情に同調する。特に、悲哀の情には敏感だ。
そんな主従の目線のみでのやり取りを見て、感心したように呟いたのは、ネイディーンである。
「カグワの君……貴女は本当に、変わった人ね……。己の仗身にも、他の聖女にも同じように接する。同じように、一人の人間として接する」
「……それでよく、怒られるわ」
「そうかもしれないわね。だけど、私は……今だから言うわ。私は、とても嬉しかったわよ、カグワ」
私はとても嬉しかった、と再度繰り返したネイディーンのことを、カグワは見上げた。渡り廊の向こう側、きらきら差し込む日差しを背負い、彼女の長い髪を結わえた金色の簪が七色の光を帯びている。聖女一の巫力を持つ、一の君の顔は美しくとも、儚い。
「誰も彼もが私のことを一の君と呼んで、妬み、羨望、畏怖、尊信の眼差しを向ける。一の君としての私を見ても、誰もネイディーンという一人の女としては、見てくれなかったわ。その中で、貴女だけが、私と同等に接してくれた」
「……ネイディーン?」
「私は、とても嬉しかったわ」
さらに繰り返したネイディーンのどこか悟ったような顔に引かれて、カグワは立ち上がる。先刻はユタヤが現れたことにより彼女の言葉を遮ってしまったけれども、彼女は何やらとても思い詰めているようだった。彼女は「これは自分への戒めだ」と語った。だが、なにゆえ己を戒める必要があるのか、まだカグワはその理由を聞いていない。
「ネイディーン……なにか、あったの?」
彼女の顔を下から覗き込むようにして問いかけると、ネイディーンはゆるやかに首を横に振った。
「私は、……誘惑に勝てなかった。それだけのこと」
「……どういうこと?」
全く意味がわからない。首を傾げたカグワに、ネイディーンは淡々と無表情で説明する。
「聖女には、決して覗いてはいけないという禁忌があるわ。それはカグワの君も知っているでしょう?」
「禁忌……?」
「外界に出てはいけない、決して覗いてはいけない、決して見てはいけない」
それは、聖女に定められた禁忌の三大原則である。
確かに、聖女には覗いてはいけないと言われた間があり、見てはいけないと言われた書物がある、という話はカグワも聖女である以上は知っていた。しかしながら、その覗いてはいけない間がどこにあるのか、見ていけない書物がどこに置いてあるのか、カグワは知らない。ゆえに、その禁忌を犯す危険になど全く遭遇せずにここまでやってきた。
「私は、その禁忌を破ってしまった……」
「一体それは……何? どこにあるの?」
「言えないわ。禁忌だから」
ネイディーンはにこりと笑った。そして、渡り廊の続く道の向こう、円形の間の方を眺める。
「その所為かしら……とても不穏な空気を感じる」
「不穏な……空気?」
カグワも円形の間の方を見やったが、やはり何も感じられなかった。これが彼女と自分との巫力の差なのだろうか。
「私は自分を戒めなくてはならないわ。カグワの君……貴女は、自分の信じる道を行けばいい」
「……え?」
カグワは目をぱちくりさせた。不穏な空気の気配すら感じられないような自分に、ネイディーンは何故か助言を寄越す。それが一層不可思議だ。
「巫女に選ばれようとも、選ばれなかろうとも……貴女がこの世界を左右するのかもしれない。そんな気がするわ」
含蓄のありそうな言葉を残して、ネイディーンは踵を返した。彼女の纏う、清々しい青い装束が宙を舞う。きらきらと太陽の光を反射させながら、ネイディーンは渡り廊を歩いて去って行った。まだ、選定の儀式まではしばしの時間がある。
取り残されたカグワは、依然として地面の上に膝をついている己の仗身を見下ろして、ぽつりと問うた。
「……ゆたやも、不吉な予感がしたと言ったわよね?」
「……私にとっての不吉は、かぐわの君の御身に何事かが生じることのみです」
「……そう」
ネイディーンの示す不穏な空気と、己の感じた不吉とでは種類が違うとユタヤは言うのだろう。しかし、カグワに至っては何も感じない。
とは言え、当然のように忠義を尽くしてくれるユタヤと離れなくてはならないのだと思えば、それこそが不吉の示すものなのかもしれないなとカグワは思った。選定の儀式まであと少し、今更ながら惜別の時を過ごそうか。
そんなことを考えているカグワは、まだ未来を知らない。時は刻々と迫っていた。




