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22、正義

 ——西国の巫女を殺し、その首を持って西への出陣祝いとする。


 軍がそう決定を下したのは、丁度オレークがシルディアの部屋に新しい家具を運び込んでいる頃、今朝方のことであった。同時に、「カグワはいつ殺されるの?」と問うてきたシルディアはそのことを実は知っていたのではないかというほどに勘がよく、あるいはこれが『力』の成せる技なのかもしれない。シルディアには、皇太子として王宮の上から処刑を見守るという役割が課され、彼はそのために正装にと着替えさせられていた。


 主である皇太子にその旨を伝え、ひとまず役目の終わったオレークは、なんとなく王宮の石階段を下る。上意のみに従う自分を客観的に見て、不意に、虚しくなった。


 世の中の全ての事象には必ず動機があり、世の中は動機の連鎖で出来ている。これはオレークの持論であり、また、これこそ真実だと彼が信じて疑わないものだ。


 オレークは、西国の巫女を捕えるために、彼女のいる部屋へと向かった。その途中で暴れている獣人ユタヤを見つけ、彼を麻酔で静めた。それは何故か。——軍の下した上意だからである。


 では何故、オレークは上意に従うのか。それが国の意思だからだ。王宮に生まれ小間使いとして育てられたオレークは、幼き頃からこの国のために尽くすという忠義を植え付けられた。故に、この国のためになら、なんでも出来る。それが上意であれば、何にでも従う。


 だが、果たして、この上意は——国のためになっているのか?


 それは、決して自問してはならない問いかけだった。だって、もしも軍から下される上意が国のためにならないだとしたら、今までのオレークの人生は全て無駄であったということになる。ずっとずっと、上意に従って生きて来たのだ。何故なら、それがこの国を発展させると信じて疑わなかったからだ。



 気付けば、オレークは宮殿の外、王宮の敷地内に作られた囚牢の前に立っていた。普段、此処には主に国賊が閉じ込められている。国家の意思、すなわち軍の意思に従わない者を閉じ込め、罪の軽い者は更正させられ、罪の重い者は処刑を待つ。しかし今は、先日の一斉処刑により囚牢の中はほぼ空にされていた。代わりに今投獄されているのは、西国の要人と、西国の要人を庇った可哀想なオレークの弟分である。

 オレークは別段、この囚牢を目指して歩いて来たわけではなかった。ただ、己の主である皇太子を唯一救える存在である巫女を捕えてまで、己がずっと可愛がってきた弟分が捕われるのを黙認してまで、従う動機は何なのだろうかと考えて、気付けば此処に到着していた。まるで、引き寄せられたみたいだ。巫女の処刑は午後になることだろう。今頃処刑台の周囲に軍人たちが呼び集められ、その準備を整えている頃だ。——つまり、今ならまだ、彼女に会うこともできる。


 会って何を言うのだ。敵国の人間でありながら。彼女の仗身を捕えた身でありながら。無言で彼女が連れて行かれるのを見送った、そんな身分でありながら。


 頭の中には様々な御託が並ぶが、オレークはそれらを一掃して、足を前に踏み出した。綺麗ごとを並べても仕方がない。今まで己は上意に従ってきただけの人間だ。綺麗ごとで飾れるような身でもない。

 囚牢の入り口には、見張りが一人眠たそうに立っていた。本当なら彼も、今頃盛り上がっているであろう処刑台の広場に行きたかったはずだ。なのにこのつまらない見張りという役割を与えられたのは、彼が信頼されているからなのか、あるいはその逆か。——今にも居眠りしそうなその状態から答えは一目瞭然だ。

「……ご苦労。少し入るぞ」

 オレークが声をかけると、見張りははっと目を覚まして、慌てて「了解!」と声をあげた。皇宮務めのオレークは、王宮の敷地内のことなら何でも知っている。そして王宮の敷地内に務める者ならそれが小間使いであれ軍人であれ誰にでも顔が知れている。皇太子の世話役を三年も務めた小間使いとして、オレークは有名だった。たった一言断るだけで、入れない場所はほとんどない。

 しかし、そんな彼でも、囚牢の中に入ったのは初めての経験であった。普段、此処に監禁されているのは軍人ばかりだ。監禁された軍人に興味はない。そもそも、軍人にはそれほど興味はない。

 囚牢の中には入り口から薄暗い湿った廊下がまっすぐ続いていて、その両側に、狭い牢屋が何部屋も置かれていた。此処はさほど位の高くない罪人を置く場所だ。その廊下の手前に小さな階段があり、位の高い者はこの上に監禁されていた。オレークは迷わずその階段を上った。

 上階に置かれた牢は、ただ格子を張られただけの狭い空間でしかなかった下階のそれとは異なり、扉や窓のある頑丈な作りをした部屋であった。広さも下の牢の十倍程度あり、その中には居住空間が構築されていた。

 だが、やはりそれでも囚牢であることに違いはないので、大した暖房器具もなく、廊下は寒い。石造りの冷たい廊下を歩くと、かつーんかつーんと冷たい足音が響き渡った。

「……誰かいるの?」

 その足音に反応して、一つの牢屋から声がする。若い女の声だ。姿は見えないが、今此処に監禁されている若い女は彼女しかいないので、確信する。オレークはまっすぐその声のした方を目指した。

「……オレーク・ナイザーです。巫女君」

 そしてその部屋の前で姿勢を正して起礼する。この部屋の形をした牢の前には扉と窓しかその中と繋がる場所がないため、膝を付いても相手にはそれが見えないためだ。

 顔をあげて広い窓から牢の中を覗くと、薄暗い部屋の真ん中、小さなベッドの上に小さな少女がちんまり腰掛けていた。こう見ると、この少女が隣国の巫女だなんてことも忘れてしまう。こんなにちっぽけな少女を一人殺すことに果たして何の意味があるのか。オレークの中で上意に従う意思が揺らいだ。

「オレーク……ゆたやは?」

 ちっぽけな少女が、窓の外の男を見上げてまず最初に問いかけたのは、己の仗身のことであった。自分がこれからどうなるのか、何が起こっているのか、何も問わない。それどころか、これまで散々厚くもてなしておきながら、突如態度を変えて自分たちを捕えたオレークに、恨み言の一つも零さなかった。

「麻酔がよく効いて……今頃下の階で眠っているでしょう」

 オレークはその仗身の姿はまだ見ていないため確かなことはわからなかったが、恐らく自分が眠らせたからにはわざわざ殺すようなことはまだしていないだろうと予測し、告げた。少女は「そう」と少しだけ安心したように呟く。だが、それも時間の問題であった。少女が弑されるのだから、その仗身とて、命の保証はない。

「シルディアは?」

 少女が次に問いかけたのは、やはり自分のことではない。あろうことか、敵国の皇太子のことだ。よもや、「貴女を処刑する準備を整えています」とは言えず、オレークは「今日は具合も良いようです」と適当にはぐらかした。カグワはそれ以上詮索はせずに「よかった」と微笑んだ。オレークの胸の内に、初めて強い罪悪感というものが浮かんだ。

「巫女君は……何故私をお責めにならないのか」

 オレークは彼女の顔を真正面から見ることができずに、床を睨みつけて、思わず問う。そんな問いかけがどれほど無意味であるかもわかっているのに、問わずにはおれなかった。責められるのには慣れたものだ。今までにも上意だと言って、大勢の人間を葬って来た。そんな過去がある。そのたびに「呪ってやる」と何度暴言を吐き捨てられたことか。だが、死を間際にして、これほどまでに慈愛に満ちた人物とは出会った事がなかった。

「責める……? どうして?」

 それでも少しの憎悪も見せない少女は、その顔に怯えさえ浮かべない。彼女の『力』は確かに今、皇太子によって封印されているはずなのに、その毅然とした振る舞いに、オレークは『力』のような、強い威圧感さえ覚えた。

「きっと西の国は返事を寄越したのでしょう? だから、北国はそれに応えるんだわ。——そして、戦が始まるのね」

 その通りである。オレークは黙って俯いた。

 西国は、北国ラウグリアの寄越した文書を焼き捨て、その文書を運んで来た軍をまるまる一軍皆殺しにしたという。それが西国の答えだ。北軍が、東国をも己の領土としてその領土を拡大していくことに危機を覚え、真っ向から対立してきた。北軍としては、西に攻め込む理由を欲しがっていたところである。これを好機として、西へ進軍する所存だ。そしてその餞として選ばれたのが、西国の巫女の命であった。

 オレークはその全てを知っていた。ずっと前から知っていた。知りながら、彼女が殺されることを知りながら、「巫女君」と呼んで丁重に接して来たのである。それでも罪悪感など抱かなかった。何故ならそれが上意だったから。

「私は巫女なのね。初めて実感したわ。聖女だ巫女だと今まで散々持ち上げられて来たけれど、今までは「だからなんなの」って、「私はただの女よ」って、そんなことばっかり思ってた。でもそれでもやっぱり私は、巫女なのね。巫女らしいことなんて何一つしなかったけど、私の存在にはそれだけの意味と価値があるんだわ」

 少女の言葉は、全てを言い得ている。このような少女を弑すことに何の意味があるのかと、オレークも彼女を見ている限りでは思わざるを得ない。だが、そういうことではないのだ。北軍は、この少女を殺そうとしているのではない。西の「巫女」を弑すことに意味がある。少女は「巫女殺し」のついでに殺されるだけのことだ。

 ふと、オレークの脳裏に、金髪の少年の顔が浮かんだ。彼の部屋にいて眠っている時、笑っている時、拗ねている時、その様々な瞬間をオレークは知っているが、あの少年もまた、ただの少年でしかなかった。だが、彼は「皇太子」だ。故に彼はその存在に異常なほどの価値を持ってしまう。——彼の恐ろしいほどの『力』は、その価値から逃れんとするための、彼の悲痛な叫びだったのかもしれない。


「私の選択は……果たして、正しかったのでしょうか」


 つい、口を付いて言葉に、自分でも驚いた。何を言っているのだ、とどこか冷静に思う自分もいるが、止めようとは思わない。敵国の巫女を前に、高貴な虜囚を前に、彼は何故だかどうしても、懺悔したくなったのだ。

「私は皇家に仕える小間使いとして生まれ、育ちました。皇家に仕えるからにはこの国を護ることこそが私の使命だと、思っていました。この国では軍が絶対で、軍の意思こそが上意であると。それに従うことがこの国を護ることなのだと」

 一度口にしたら、止まらない。例え思ったとしても、絶対に口には上らせないことばかりであった。他の小間使いの前では決して口にできない。自分は皇太子付きの小間使いであり、彼らの頂に立つ存在なのだから。軍の前でも、皇室の前でも絶対に口が裂けても言えない。オレークにとっては彼らが絶対だ。

「そんな中で、殿下に仕えることとなり、私は殿下に絶対の忠誠を誓いました。それが上意であったからです。殿下の『力』がこの国を守る。その殿下に仕えることは、国を守ることでもありました。ですが……それは正しい見解だったのでしょうか」

 疑問を呈さずにおれないのは、それによって国を守っているという実感が全く湧かないためだ。皇太子を追いつめ、国を戦火の渦に巻き込み、こんなことがしたかったわけではないのにと我に返って思う。そんなことのために、皇家に尽くしてきたわけではなかった。

「正しいかどうかは、貴方が決めることよ……その人が何を信じるかによって、正義はかわってしまうから」

 冷たい牢の中、佇む少女は嫌な顔一つせずに、真剣に答えてくれる。少女は立ち上がると、オレークの立つ窓の傍までやってきた。長い黒髪をなびかせ、まっすぐとこちらを見上げてくる。

「オレークにとっては……何が正義だったの?」

「私は……」

 この国を守ること、と答えようとして、オレークは口を噤んだ。もちろん、それも正義だ。だが、それだけか?

 脳裏に浮かぶのは、たった三年しか仕えなかった主の顔である。初めて世話役として彼に出会った時のことを、オレークは鮮明に覚えている。彼の発する圧倒的な覇気に気圧されて、危うく身震いしそうになった。これからこの人が己の主になるのだと、何度も自分に言い聞かせた。言い聞かせなくては恐ろしくて信じられなかったような真実が、いつのまにか日常になって、もう幾日過ぎたことだろう。今となれば、オレークの主は、彼一人のみだ。

「……私にとっての正義は、あるいは……殿下に仕えることであったのかもしれません」

 オレークはぽつりと呟いた。

 それが上意だから、それが己の役目だからと割り切って仕えているつもりであった。だが、実際のところはどうだろう。何をするにしても、オレークの思考の中心には必ず彼の存在があった。

「私の前に、殿下に仕えた世話役たちは、皆全て殿下の『力』の強さに圧倒され、辞めていきました。しかし私は、それが役目であるからには辞めるわけにはいかないと……殿下の『力』から一定の距離を保った。だから、忘れていたのかもしれません。私にとっての正義は、殿下への忠誠だ」

 それなのに、とオレークは顔を覆う。自分は、彼のために何をしてあげられただろう。


 彼が本当はとても弱い人間であることを、オレークは知っている。皇太子という立場も、『力』の強さも、それらがあまりにも重すぎて、背負えずもがき苦しみ続けていることも知っている。なのにオレークは、『力』に食われそうになっている彼を助けることもできなければ、それを唯一助けてあげられるであろう少女すら、彼から奪ってしまうのだ。何のために? 国のために? まさか、そんなわけがない。これが、国のためになるわけがない。


「私は殿下への忠誠を正義としながら……一度だって殿下のために何かをしてさしあげられなかった。彼に近付くこともなく、彼の心を慮ることもなく、ただ軍の言いなりになっていただけだ……」

「……そうかしら?」

 俯いたオレークに、少女の柔らかい声がかけられる。顔をあげると少女は窓から外、どこか遠い所を見て、ぽつりと呟いた。

「私とシルディアとでは、あまりにも持つ『力』の大きさが違うかもしれないけれど……それでも、私も『力』を持つ者。西国にいた頃、私の周りに仕えていた人達も皆、『力』を持っていなかったわ。でも、私の持つ『力』に対して、それに負けないくらいの愛情で応戦してくれた。だから私は自分の『力』を持て余すこともなく、ここまで育ってこれたの」

「愛情……?」

「シルディアがおそらく最も欲しているものよ」

 言って、少女はその声と同じくらいに柔らかく微笑んだ。冷たい牢獄の中に、一筋の光の差すようだ。これから冬の来ようとしている北国ラウグリアに、春をもたらすような、そんな笑みである。

「貴方は例え一定の距離を保っても、軍の言うことに従ったとしても、確かにシルディアを愛していたのでしょう?」

「私は……」

「愛情は、彼のために何かをしてあげることではないわ。近付きすぎて結局辞めてしまうのであれば、それも違う。一定の距離を保ちながらも必ず彼の傍に寄り添って、彼の辛いことも悲しいことも全て見守ってあげてきたのだから……やっぱりそれは貴方の愛情なのよ」

 オレークは言葉を失った。そんな風に考えたことは、なかった。

 どうしていいかわからず、縋るように少女の顔を見つめると、にこりと少女は笑う。彼女は「大丈夫」と言い切った。

「大丈夫。貴方は何も間違ったことなんてしていないわ。貴方にとっての正義がシルディアへの忠誠ならば……これからも、彼に愛を注げばいい」

「……はい」

 オレークは、目を伏せた。こんな牢の中にいても尚神々しい彼女は、神の使わしめ、正真正銘の「巫女」なのだ。牢の中にいるのは彼女の方で、自分は牢の外にいるのに、だんだんと自分こそが咎人であるような気がしてきた。巫女の前にて懺悔する、咎人だ。

「ついでに……私からも一つだけ、いいかしら?」

 巫女が言った。はい、とオレークは頷く。巫女の言葉を無碍にはできない。

「ゆたやのことなんだけど……きっと全てが終わったら、彼も殺されてしまうのよね」

 全てが終わったら、というのは、巫女の処刑がすんだらという意味であろう。自分が殺された後、一緒に仗身であった彼も殺されるのだろうと、少女は言う。確かに、そうだろう。オレークもそう思っていた。だがまさか、それを巫女自らの口から聞くことになるとは。

「今更、私には何の権限もないのかもしれないけれど……もし、できたら。もしできたら、でいいわ。もしできたら……彼をシルディアの護衛にしてあげて」

 オレークは大きく目を見開く。予想だにしていない願いであった。

「今、彼の獣の性を封印しているのはシルディアよ。彼の主はシルディアも同然。彼は獣人だから、他の人間よりも圧倒的に戦闘力も高いし……いい護衛になると思うの。だから、ね?」

 己の死を知りながら、自分は命乞いすらしない。まるで天女のような笑みを讃えて、己の仗身の命乞いをする。嗚呼、だから、巫女なのか、と思った。紛いなき巫女だ。

「……わかりました。尽力致します」

 絶対にそうするという約束はできず、そう告げて頭を下げることしかできなかった。それでも巫女は満足したように、「ありがとう」と微笑むと、ふと、思い出したように言う。

「それから……ユーリにも、伝えて。ありがとう、と」

 彼女は涙一つ浮かべないのに、何故かこちらが泣きたくなった。

 北国には西国のような宗教観念はない。故に神に縋る気持ちもわからないし、西国にとっての巫女の存在意義とて感覚として理解することはできない。だが——。

 オレークは唇を噛み締めた。人が、彼女に縋るわけだ。人が、巫女に縋るわけだ。



 それからややあって、残酷な足音とともに迎えがやってきた。それはカンカンカン、とオレークがたてたもの以上に冷たい音をたてて、近付いてくる。

 その足音を聞いて、巫女は少しも動揺した素振りをみせずに、「それじゃ」と短く言った。とてもではないが、オレークには答えられなかった。

 現れたのは、数人の軍人であった。そこにオレークの姿を見つけると、驚いたような顔をして、「何をしておられる?」と当然の疑問を投げつけてくる。オレークが言葉に窮していると、巫女が澄ました顔で「私の遺言を聞いてもらっていたのよ」と言った。軍人たちは怪訝そうな顔をしながらも、「そうか」と頷いて、彼女を縄できつく縛って牢屋の外へと連れ出した。

 冷たい足音とともに、寒い冬の空気の中へと少女は連れ去られて行った。向かう先は、冬の空気よりも冷たい、死の扉の先である。

 オレークはその後ろ姿を見送って、頭を押さえた。


 何が忠誠だ。何が愛情だ。と、思う。こんな行いが、正しいわけがない。


 もっと広い世界を知りたいなぁと、漠然と願った。こんな狭苦しい王宮の中だけでなく、軍人に支配された冬の国ラウグリアだけでなく、もっと、広い世界を。


 胸を張って正義を貫けるような人間になりたい。


 オレークは、あまりの自分の視野の狭さを、呪った。

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