12 そういえば、ファンタジーだっけ?的な回想
「アリス、魔素というものを知っているかな?」
「うん、知ってる!えーっと、どこにでもあるもので、なくなると皆死んじゃうもの?」
ハイハーイと手をあげて答えるアリス(推定6才)
「あー、うん、そうなんじゃが・・・。わしの聞き方がまずかったかの?」
「ししょーがこの前そういってたよ?」
「いつじゃ?」
「この前のお月見の時?」
「ゴホン。酒の席でも間違ったことをいうとらんワシはすごいということかの。いや、まぁ、おいといてじゃな。ウォホン。魔素というのはな、全てのものに宿っておる純粋な力そのものじゃ。」
「力そのもの?」
「そう、力そのものじゃ。それが少なければ何も形作られず、多過ぎても崩れてしまう。」
「多過ぎても少な過ぎてもだめってこと?」
「そのものがそのもの足りえるためにはな。大気には大気たりえる魔素が、石には石たりえる魔素が、木には木の、人には人のという風にな。」
「うぅ、難しい・・・。壊れたり、崩れたり、死んだりしてないものには魔素がやどってるの?」
「そうじゃ。逆に、壊れたり、崩れたり、死んだりしたものからは魔素が大気へと流れて、また別のものに宿る。いや、魔素が創るといえるかの。」
「つくる?」
「いや、気にするでない。人には過ぎた領域じゃ。」
「?」
「そう、普通、人は魔素と直接関わるものではないからのぅ。」
「ししょーは?」
「ワシはまぁ、偶々関わる機会ができてしもうたから、人よりちょこ~っとよく知っとるだけに過ぎんよ。」
「でも、みんなししょーの事を仙人っていってるよ~。」
「ふぉっふぉっふぉ。仙人か。おもしろいのぉ~。しかしのぉ、人に扱えるのは魔力のみじゃよ。」
「魔力?魔素とどう違うの?」
「簡単にいうと魔力は魔素から作り出した力じゃ。魔素に比べると非常にちっさな力じゃがな。」
「しょぼいの?」
「しょ、しょぼい?そうきたか・・・。そ、そうじゃ、お前も魔術師くらい見たことがあるじゃろ?」
「うん、ある~!すごかった~。火とか出してたよ!」
こんなふうに、と身振り手振りで説明する。
「そうじゃな、魔術師は魔力を使ってああいった事ができる人間の事じゃ。魔力自体は誰でも自然に作っとるしな。」
「わたしにもあんなことできるの!すげぇ!」
身を乗り出してくるアリスを抑える師匠。
「待て待て。最後まで話を聞きなさい。」
早く早く!と訴えるアリスに微笑しながら、
「さっき、魔素から魔力を作ると話じゃろ?人間は、その体を形作る魔素とは別に、さらに取り込んだ魔素を魔力に変換して蓄える事ができるのじゃよ。」
「それで、それで!」
「じゃが、溜め込める量は人それぞれでな。魔術師というのは術が使える魔力量を蓄えられる人間の事をいう。つまり」
「つまり?」
「お前には無理ってことじゃな。」
「えぇ~~~!!なんで?どうして?けちー!!」
「お前はなぁ、ちょっと珍しい体質でな。どういうたらええかのぉ。」
白いひげをなでなで、上を見上げる師匠。
「のぅ、アリスや。人が作った魔力はどうなると思う?」
「へ?魔力がどうなるか?」
「そう、人は魔力として蓄えて、それを使うことができる。じゃが、使われた魔力はどうなると思う?魔力は魔素から作られたが似て非なるものじゃ。」
「魔素にはならないの?」
「魔素になるにはとてもとても長い時間がかかるのじゃよ。」