10 振り返ればやつがいた!?
あれ?そういえば・・・。
「ねぇねぇ、エリー。」
「はい、何でしょう?お茶のお代わりですか?」」
「うん、今日の紅茶もおいしいから、お願いします。って、それも、なんだけど。」
素早くカップを差し出しといてなんだけどね。
「他に何か?」
紅茶を注ぐ姿も優雅だよねぇ~。
「あの、家庭教師の件なんだけど、うちの担当どうなったのかなぁ~と・・・。」
ピクッ。
眉が跳ね上がる、エリー。
「!?」
「聞いてやがりませんでしたね。」
「え、えーっと・・・。」
「やけにあっさり流されたと思いきや。そうですか。聞いてらっしゃらなかったんですね。」
「すみませんでしたっ!!」
「まぁ、自業自得ですからね。」
「へ?そ、それはどういう・・・。」
「世界史のみですよ、うちが推薦できるって。お忘れですか?」
「じゃあ、師匠でもくんの?」
首をかしげるアリスに、額を指で押さえるエリー。
「あの方は、そりゃあそこらの学者が束になっても敵わない頭脳をお持ちですが、さすがに無理でしょう。」
「そうだよね。引き篭もりだもんね。こんな人間のたくさんいる場所なんて絶対こないわ。」
「なら、なぜ思い浮かばないのです。」
「も、もしかして、あいつが!?」
「他に候補はいませんからね。」
「確かに、うちのつてで呼べる教師となるとそうなるけど!!いーーーやーーーー!!!」
「随分なご挨拶だな。えぇ?アリス。」
「ひぃっ!!」
思わず、立ち上がったのはいいけれど、声のした方を見ようとしない、アリス。
「悲鳴まであげるか?オレ様がせっかくきてやったというのに。」
近づいてきた気配に慌てて、エリーの後ろに駆け込んだ。
「寄るな!こっち見んな!」
フシャーーッ。
威嚇するも、目線は斜め下45度をキープ。。
「お久しぶりです。相変わらずお元気そうですね、ハルトムート様。」
「あぁ、何とかな。君こそ更に美しさに磨きがかかっているようだ。」
「私などには、もったいないお言葉ですわ。アリシア様、いい加減になさってはいかがですか?」
ビクッ。
「うぅ~、だって、この万年フェロモン撒き散らし男のせいでどれだけひどい目にあってきたか!!」
ビシッと指差す先には、長身痩躯、巻き毛のプラチナブロンドを後ろに流した美青年、ハルトムート。
「指をさすな、指を。全く、伯爵令嬢が聞いて呆れる。客人に席も茶もすすめられないのか?」
そういいながら、ソファに腰かける。
「う、うるさい!はっ!もしかして、アレも一緒とかいわないわよね!?」
「あぁ、ありがとう、エリー。アレ?もしかして、弟のことをいっているのか?本当に失礼なやつだな。」
「しょうがないでしょ!だって、アレのせいで散々な目にあったのよ!あんただけじゃなくて、アレもセットだなんて、終わった。もう、色んな意味で終わった。」
「アリシア様、諦めが肝心でございます。」
「エリー・・・。人事だと思って。いつの間にか、お茶まで出して歓待してるし・・・。」
「お前ら、オレはこれでも客人のはずなんだが・・・。」