9 あるぇ~、思ったより早くない?
はい、突撃レポーターきちゃいました。
主要令嬢のご訪問ってわけですよ。
私、馬鹿なんです、やらかしてすみません、下心なんてないんです!ってのが本音なんで!
というのが伝わったのかどうか。
伝わってたらいいなぁ。
遠回しに、かつ、鋭い攻防戦、とかはなかったけど、結構視線が厳しかったしさ・・・。
「あそこまで高貴な方はシャルル様以外にありえませんのに・・・。思い至らなかった私の浅はかさが露呈してしまいましたわ。本当に情けなくって・・・。ただの言い訳になるかもしれませんし、素人が申し上げるのも失礼かと存じますが。」
「遠慮なさらずにおっしゃって。気になってしまいますわ。」
「で、では。あの肖像画のシャルル様は何と申しますか、高級なネコという印象しか受けなかったんですわ。姿形は似ているかもしれませんが、オーラがないと申しますか・・・。」
「ほほほほっ、あの画家が聞いたらさぞや悔しがることでしょうね。」
「まぁ、お知り合いでしたの!重ね重ね、何てことなのでしょう。もう、お見せする顔がありませんわ・・・。」
「あら? お気に病まないで、アリシア様。批評は画家の肥やしになるんですのよ。独善的な絵に固執しては、あまりにも世界が狭まりますもの。芸術家も広い視野を持たなければ。ねぇ、セリーヌ様?」
「私もあまり芸術に詳しい訳ではありませんが、狭すぎる視野はあまりにも惜しい結果を生んでしまうのが世の常ですわ。」
「さすがセリーヌ様、言葉に重みがございますわ。」
「ほんとですわね。それに、アリシア様の意見もあながちはずれてらっしゃらないのよ。あの画家はネコ嫌いですの。それが原因ではないかしら?」
「まぁ!?本当ですの!?何て勿体のない人生を過ごしてらっしゃるのでしょう!あんなに美しい生き物がお嫌いだなんて!もしかして、動物全般がお嫌いだとか?」
「イヌは好きだったと思いますわ。」
「確かにイヌもすばらしい生き物ですが・・・。ネコの魅力をご存じないなんて!?御可愛そうでなりませんわ・・・。」
「うふふっ、アリシア様は本当にネコがお好きなんですのね。」
「もちろんですわ!あの美しいフォルムに、きらめく宝石のように光る瞳はその時々で愛らしくも野性的な印象にもなりますし、優雅でいて俊敏に動く驚異的な身体能力には憧れを抱きますわ!それに、あの温かで極上のさわり心地の柔らかい毛皮に、感情を表す耳や尻尾、あぁ、肉球ははずせませんわ!それと、かわらしい声としぐさも心を鷲掴みに!まさに、神の作りたもうた奇跡ですわ!」
はっ、やってしまった!
え、ナンデスカ、その微笑ましいモノ見た的なまなざしは・・・。
驚かれて、退かれるよりはマシだけど、どーよそれ・・・。
「あの画家に会わせてみたくなってまいりますわ。こんなに楽しい方だとは思っていませんでしたもの。ねぇ、セリーヌ様?」
「えぇ、本当に。こんなに明るくてかわいらしい方だとは思いもよりませんでしたわ。」
か、かわいらしいって、ソレは小動物的な方ですか?
「そ、そのような・・・。お二人とも、私をからかいになって。」
「あらあら、からかうだなんて!素直にお褒めしているだけですのに。」
「違いますわよ。照れてらっしゃるのですわ。おかわいらしいこと。今度是非お買い物にお付き合いただきたいわ~。」
ドキドキしそうな艶のあるまなざしと、怪しげな微笑みでおっしゃらないで~。
どこに何を買いに行かせるおつもりなんですか!
「では、私は部屋へお招きしようかしら?」
えぇ!
何?何がツボにはまったの!
え、やっぱり、小動物扱い?
玩具扱いはやめて~~~!!