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短編集

処刑台

作者: 毛賀深輪

少々長めですのでごゆっくり読んで下さい・・・

俺達は処刑されている。



 正直言って、ここで生きていくぶんにこれ以上の情報はいらないだろう。


 周囲には、俺と同じように『処刑されている』仲間が何人も立たされているのは分かっている。しかし、手足を拘束され、おまけに目隠しまでさせられている以上、俺達にできることなど鷹が知れている。それは、『おとなしく処刑を待つ事』である。運がよければ生き残れるのだから。


 退屈に押しつぶされそうになって、誰かに話しかけようと思ったことだってある。いや、実際俺も初めはそんなことをしていた。しかし、そんなことは全くの無駄なことだとすぐに気づくのだ。第一、視界のない中で、自分が誰と喋っているのかすら分からない。それに、相手だって処刑されている身だ。会話が弾むようなことは到底ありえない。万一会話が弾み、お互いの間に信頼が産まれたとしても、次の瞬間、そのいずれかが生き残っている保障はない。


 そう。この地獄では『情』などなんの意味ももたない。情を持って生きるだけ、自分に重みがのしかかるだけだ。



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


 遥か遠くから地を揺らすような音が聞こえる。どうやら、そうこうしている間に、処刑が始まったようだ。

 

四方から、新入りと思われる仲間がどよめきだすのが分かる。ふふ、初めてのヤツには無理もない。

 やがてその音は大きくなっていき、その音はいつしか、文字通り『地を揺らしていた』。



 その、直後だ。



 きゃあああああああああああああ



 何かの弾けるような音に混じって、瞬く間に大気に悲鳴が充満した。


 まっ暗闇のはずの視界に閃光が走り、目の前で何が起こっているのか理解することができなくなる。


 何度となく行われてきたこの処刑。決して慣れること無い感覚・・・薄れいく意識の中で、唯一気づいたのは俺が見えない何かに恐怖し、気絶しようとしているのだということだけだった・・・。






「・・・うっ・・・」

 

 意識がゆっくりと戻っていく。縛られている感覚はそのままのようだ。ああ、どうやらまた生き残ってしまったらしい。

 

 さきほどの悲鳴を思い出した。どうやら、今回はかなり多めの仲間が『飛ばされていった』ようだ。


「・・・・・・」


 同時に、新しい処刑囚が『補充』されたことに気配で気づいた。かわいそうな奴等だ。きっと奴等も身に覚えがないのに処刑されているのだろう。


「・・・なあ」


「・・・・・・」


「アンタだよ。なあ、呼んでるだろ?」


「俺のことか・・・?」


新入りだろうか、どうやら俺に声を掛けているようだ。


「アンタやけに落ち着いてるじゃないか。私の周りじゃみんなこの状況に動揺してるみたいだけど?」


「お前・・・女か?」


「こんなところで性別なんて関係あるのか?」


「はは、違いない」


 無闇に会話するのは避ける俺だが、相手から話を振られたなら話は別である。新入りは心に不安を感じている。だから、意味のないことなのに、人と話をせずにはいられないのだ。


 それを『愚かしい』と言えばそれまでだが・・・かつての自分がそうだったのを思い出すと、放ってはおけなくなるのだ・・・。


「ここはどこだ?なんで私は連れてこられたんだ」


「ここは処刑台だ。お前は、俺と同じだ」


「二つ目の質問だけしっかり伝わってなかったようだな」


「いいや。間違ったことは言っていない。俺もお前も同じ。身に覚えもないのに、気づいたらここにいるんだ」


「何を言っている・・・?そんな馬鹿な話が・・・」


「そう思うのも無理はないがな・・・なあお前、ここに来る前は何をしていた。今までどう過ごしてきた?」


「何をって・・・私は・・・・・・え?わ、私は・・・?」


 哀れな姿。つい溜息を漏らしてしまう。そうなのだ。俺達には記憶が存在しない。まるで、ここで処刑されるために産まれてきたとでも言うかのように・・・。



「そう動揺すんなって。いいか。処刑はいつされるか分からないがな、限られた時間で俺の知ってることは全部話してやる。お前なんぞに教えてやる義理はないが、俺も暇なんでね」


 彼女の動揺が収まりそうもなかったので、やむなく俺は語り始めた。しかし・・・つくづく思う。どうして俺はこんなに甘ちゃんなのかってな・・・。






 ここは処刑台。俺達は崖の上に立たされている。逃げることは不可能。というか、誰もそんなことはしない。無闇に動いて、崖に落ちたりしたら一番恥ずかしいからな。


 ここでは、定期的に『処刑』が発生する。発生するというのは、俺達にはこの処刑が、処刑というより災害に近い感覚を持っているからだ。


 その処刑というのは・・・ここは俺にはよく分からないが『衝撃波』のようなものらしい。よく分からないと言ったのは、俺がその衝撃波を喰らったことがないからである。しかし、周囲の様子を見る限り、そう形容する他はなかった。


 まず、何の前触れもなしに空気が振動し、巨大な地響きが鳴り響く。そして、次の瞬間には何かの弾けるような音とともに、仲間が宙を舞っているようなのだ。


 つまり、何者かの超エネルギーによって、崖へ突き落とされるのだ。理不尽な虐殺である。


 しかし生き残ることも可能だ。運よくその衝撃波が回避できれば、崖から突き落とされたりはしないのだ。しかし、それも寿命を食いつないだに過ぎない。第二ゲームはすぐに始まるのだ。周囲には新しい処刑仲間が補充され、ゲームはリセットされる。それが延々と続いてくのだ・・・。

 



 限りなく、際限なく・・・永遠に・・・。



「な、なんでそんなことを・・・?」


「さあな。ただ俺は、この処刑を実行している奴等の『娯楽』なんじゃないかって考えている」


「娯楽・・・?」


「ああ。あの衝撃波はいつ発生するかはわからない。本当に定期的に起こる災害なのかもしれないし、誰かが人為的に行っているのかもしれない。いずれにしてもだ、その周期は全く分からないんだ。今起こるかもしれないし、もしかしたら明日まで起こらないかもしれない。俺達はいつ下されるか分からない処刑に怯え、生き残れなかったらどうしようという、重圧のような不安に押しつぶされそうになる。恐らく奴等は、その様子を見て楽しんでいるんだろう」


「い、生き残るには・・・?」


「神に祈る。運がよけりゃ衝撃波に巻き込まれない」


「逃げようとしないのか!?」


「だから無駄だと言っているだろう・・・ここで生きていくにはな、情を殺さなくちゃいけないんだよ。心を無にして、人とも関わらない。そうしなきゃ、余計に死に怯えることになる。無駄に足掻いたりするほうがそれこそ奴等の思う壺だ・・・」


「ふざけんな!!」


 唐突な怒声に鼓膜がびりびりと痺れた。


「あのな、こっちは耳が塞げないんだぞ・・・」


「死んだように生きて!!死なないために自分を殺して!!それで生きてるって言えるのかアンタ達はっ!!」


「新入りがそう思うのは無理はない。でも、これから先はそんな雑念もすぐ・・・」


「悪いがね、私にはアンタらの言うような『これから先』なんてないんだ」


 呻き声とともに、もぞもぞと何か擦れるような音がした。


「おい新入り。何してる・・・」


「くっ・・・うっ!・・・」


「おい!逃げるつもりか!?無駄だ!やめろ!!崖に落ちるぞ!!」


「アンタらと心中するくらいなら自分で死んだほうがマシっ!!でも!死ぬ瞬間までは私は諦めない!!」


 やめろ!そう叫ぼうとした・・・その時だ。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


「!?」


「来たっ!!衝撃波だ!!おい、もう余計なことはするな!!無駄な動きをしてると巻き込まれるぞ!!その場でしっかり気張れ!!」


「うるせぇっ!!!私はここから逃げるんだぁっ!!!!」


 地鳴りがすぐそこまで迫っている。


「・・・・・・」






 死んだように生きる・・・。生き残るために自分を殺す・・・ね。



 ・・・・・・馬鹿じゃねえの・・・?


 


「右だ・・・」


「え?」


「お前から見て右へ跳べ。いいか。右だぞ?」


「な、なんで・・・」


「正面からは衝撃波。後ろは崖だ・・・。俺とお前はどうやら隊列の右端に立たされているようだからな・・・右に跳べばあるいは・・・」


「でも、よけられたとしても一時しのぎなんだろ・・・?」


「いや、可能性はある・・・。以前処刑を受けていたとき、右の方から人の声が聞こえた・・・」


「!?」


「そして、俺が以前この右端の位置に配列されたとき、微かだが足がなにかの窪みに触れたことがあった・・・。さりげなく足でなぞってみると・・・その窪みは線のように続いていたんだ・・・境界線みたいにな」


「そ、それって!」


「ああ。なんの根拠もないが・・・もしかしたらそこが『安全地帯』なのかもしれない・・・賭けてみる価値はある・・・」


「な、ならアンタも!!」


「無駄だ・・・気配がすぐそこまで迫っている。それに、俺はお前をサポートするので精一杯だ」


「な、なにを!?」


 気配が掴める・・・何度も処刑されてきた俺の勘は間違いなく正しい・・・・・・左だ!!




 ばっ、と俺は衝撃波へ飛び込んだ!!




「ひっ・・・う、うわぁああああああああああああ!!!」


 周囲の悲鳴に混じって、俺の身体が、俺の悲鳴が・・・強い力に弾き飛ばされる。そ・・・そう、それでいい。それでいいんだ・・・。


「歯ぁ食いしばれぇ!!!!」


「なっ!?・・・きゃぁっっ!!!」


 ジェットのような勢いで彼女に体当たりをぶちかます。彼女の身体は俺の突っ込んでいった方向、遥か右へと、舞っていった。


 そして俺は・・・・・・






 奈落の底へと吹き飛ばされていった。


「な!!!な、なにカッコつけてんだよ!!!なんで死ぬんだよ!!!」


 強風に声が運ばれてくる。馬鹿みたいにでけえ声だ。


「へへ・・・最後に女らしい声をあげたじゃないか・・・なかなか色っぽかったぜ・・・」


「ばか・・・ばかやろ・・・・・・!馬鹿野郎!!!」


 身体がもろに宙へ投げ出されていくのが分かった。ああ、みんなもこうやって死んでいったのか。・・・・・・ああ、分かっている。すぐに行くよ・・・。


 最後に、こんな糞みてぇな世界で・・・・・・誇り高い精神に出会えて・・・本当によかった・・・。



 なーんてな。へへ・・・。 



 最後くらい、こんな柄にもないつまらねえこと、言ったっていいだろ・・・?





                      ◆






カーーーーーーーン!!



『STRIKE!!STRIKE!!』


「やった!!ストライクでたぁ!!」


「ええー!今のずるいだろ!!だってピンが勝手に吹っ飛んだじゃんか!!普通はあの位置じゃストライク取れないもん!」


「うるさいなあボーリングオタクは・・・あ、あの端のピン、隣りのレーンにとんでっちゃった」


「どんだけ怪力なんだお前!!?あ、しかも隣りの人のピンごと倒しちゃったし!!」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・あー、ストライクになっちゃったね」


「どんだけ怪力なんだお前」


「ちょっと謝ってくるから店員さん呼んどいて」


「そだな。ちゃんとこっちのレーンに戻してもらわないとな」

やっぱり長めですね


説明調も気になると思います


オチも読めちゃうかな・・・・・・


でも、感想は欲しいなあ・・・

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― 新着の感想 ―
[良い点] いや、オチは読めなかったよ。 話も普通に処刑系なのかと思ってました。 [気になる点] 伏線の部分が興味持てなかったです。 処刑だったとしても期待感とか感じなかったです。 むしろボーリングに…
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